メンバーシップ型雇用社会で沈む日本

2020年01月25日 06:00

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用という表現は、企業で働く人の間では、人口に膾炙していると思います。それは、欧米型の仕事に人をつけるジョブ型雇用に対して、日本の人に仕事をつけるという終身雇用年功序列的なメンバーシップ型雇用の対比です。後者を無限定正社員と言ったりもします。

メンバーシップ型というと、なんだかはっきりとした制度のようですが、中根千枝氏のいう「タテ社会」なのでしょう。「タテ社会の人間関係」は50年も前に出された著作ですが、「タテ社会」の小集団とその閉鎖性でいまだに日本型雇用の説明がついてしまうところが恐ろしいところです。

要は、場のルールを最優先し、その上位の法律などは無視してしまうというのは「近代化の失敗」といえるでしょう。

日本のメンバーシップ型無限定正社員は、終身雇用・年功序列にみられるように、企業への長期的な忠誠心を醸成し、日本経済の成長を支えてきたと長らく考えられてきました。けれども、日本企業は低成長の経済や定年延長で社員の雇用を維持できず、終身雇用は捨て去ろうとしています。また、年功序列も「3割しか課長になれない」という表現があるように、崩れつつあります。また、終身雇用という建前の前に、おおっぴらに年齢差別も許されてきたので、ほんらいはベビーブームをもたらす世代が氷河期世代になるという副産物も生まれました。

日本企業は機動的に配置転換ができるといった理由で、無限定正社員を重用してきました。それは終身雇用といった制度と引き換えでした。終身雇用が維持できないから、解雇規制を緩和しないと企業が持たないということはよくわかります。

けれども、メンバーシップ型雇用を維持したまま解雇規制だけいじっても、派遣労働者を生んだ過ちを繰り返すことでしょう。メンバーシップ型雇用の無限定性ゆえに、非正規社員に正社員と同じ仕事をやらせれば、コストカットになるじゃないかというイノベーションが起きてしまいました。こうして賃金は上がらなくなりました。

中長期的にはジョブ型に移っていくでしょう。けれども、その過渡期で、メンバーシップ型で守られる人、過労死する人、ジョブ型だけど職務があいまいで何をやっているかわからない人、派遣で絶望する人が入り混じった悲惨なマーブル模様が出現することでしょう。

働き方改革が遅々として進んでいない企業も多いのではないでしょうか。だって、やる仕事の範囲が決まってなくて、時間だけで測ろうとしたら、そりゃオフィスのパソコンが8時に落ちて、持ち帰り仕事になるだけでしょう。仕事の範囲を決めなくては、いくらでも仕事は降ってきます。

企業のほうも、ありものの人材で戦わなければならず、だからといって高度専門的な人材も社内では育成できないので、人材面で日本企業の競争力にも暗い影を落としました。ほんらいは能力や資格に応じた契約を結ぶという「近代的」な習慣を確立しなくてはならなかったのが、「タテ社会」の閉鎖性からそれが叶わず、結局衰退というか本来の姿にもどっているのがオリンピックを前にした日本ではないでしょうか。

オリンピック後に、どこかの独裁国家の植民地にならないことを願っています。

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中沢 良平
元教員、ギジュツ系個人事業主

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