渡米視察:災いを避けてシアトルへ、そして、サンフランシスコへ

21日に成田を発ち、シアトルに向かった。ホテルに着いた直後に見たニュースで、その日にシアトルで新型肺炎が見つかったという。同じ飛行機ではないようだが、気持ちが悪い。そして、シアトルでは、21日の午後と22日の朝にマイクロソフト社を訪問した。ここには東京ドーム43個分の敷地に125のビルディングがあるという。さすがに世界のマイクロソフトだ。

といっても、ただの見学ではない。内閣府の「AIホスピタル」プロジェクト21名による最新のAI、IoT技術の情報を得るための視察だ。ここで触れるまでのないが、日本の人工知能技術は遅れている。だからと言って、黙って傍観しているわけにはいかないのだ。

人工知能は間違いなく医療に革命的な変化を起こす。命・健康にかかわる分野を、完全に他国に支配されるわけにはいかない。ごく一部の領域を除き、競争が厳しい現状を受け止め、協調に持ち込み、標準化の際に日本の意見が反映される形に持っていくのが現実的だ。日本の医療の質の高さが品質の高い人工知能の開発につながるはずだ。

かつて国際的な遺伝子多型プロジェクトでは、データベースの標準化に十分に日本の考えが反映された。そして、昨夜はシアトルからサンフランシスコに移動した。細かい報告はまとめて後日報告するが、昨日は、午前中はカリフォルニア大学バークレー校で開発した、診療記録をテキスト化しサマリーを作る会社と会議をし、午後にはサーモフィシャー社を訪問する。明日はグーグルとIBMだ。

…と考えながらニュースを観ていたら、昨夜シアトルで拳銃による乱射があったと報道されていた。その前日に宿泊し、レストランから歩いて帰った道に近いところだ。新型肺炎や銃の乱射とニアミスだ。注意しないと。

そして、昨日のマイクロソフトとの会議で最も残った言葉は、人工知能はわれわれに時間の贈り物をくれるはずだということだ。最新技術はわれわれの敵ではない。われわれの補助者であり、われわれに時間という贈り物をくれるはずだ。私もそれを信じている。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。