議員の損得しか頭にない野党統一論議のお粗末内情

2020年01月25日 11:30

『夕刊フジ』に昨日、立憲民主党と国民民主党の合流協議が決裂したことについて論評した。それに、それをもとに加筆して私の考え方を披露しておく。

合流を協議する立民、国民両党首、幹事長(1月10日、立民サイトより編集部引用)

「政権を担い得る強力な態勢を築く」という狙いが頓挫した原因について、「枝野氏らが上から目線だった」「玉木氏が決断できなかった」などというが、私の見方は違う。

そもそも、民主党政権崩壊後、野党議員は政権に復帰したくないのである。

それには理由がある。野党の国会議員は気楽でいい商売なのだ。そういう道をめざすのもおすすめできる楽しい人生かもしれない。

なにしろ、与党議員は忙しく家族も大変だと思う。しかし、野党議員は呼んでくれる人や組織も少ないから、ワーク・ライフ・バランスは完璧だ。陳情もあまり来ないから扱いが難しい秘書も少なくていい。

「桜を見る会」の問題ではシュレッダーを視察し、「関西電力」の問題では休日にアポなしで会社訪問して警備員と押し問答した。お暇としか言い様がない。

自分たちが与党時代にやったのと同じことを与党がすると、極悪非道のように追及する。逆襲されてブーメランになっても、問題が別なのに「与党は卑怯だ」と言えばすむと思っているらしい。

それでは、与党議員より再選確率が低いのかといえば、そんなことはないのである。小選挙区で負けても比例復活があるから、そこそこのベテラン議員なら簡単には落選しない。余り議席が減るのは困るが、横ばいならいいのである。

本気で政権を狙うより、「憲法改正反対」を掲げて3分の1狙いに割り切ったほうが、楽しいというのが立憲民主党路線といえる。柄にもあわない与党になって己の身の程知らずを痛感したし、元大臣の肩書きもあるし、楽しい人生だ。

一方、政権交代を狙う政党を目指しているのが国民民主党だが、「希望の党失敗のトラウマ」から抜けられず支持率が上がらない。希望の党の路線が基本的に間違っていたとは思わない。

民主党が下野したあと、政権復帰のために、非現実的な左派的主張は清算して、現実路線で立て直したら、自民党政権が失敗したらまたチャンスがあった。ところが、安保法制での安倍内閣のある種の甘さをついて一太刀浴びせられると思って、思いっきり左翼バネを働かしたものだから、現実路線に戻れなくなった。

そこで人気のある小池百合子を使って民主党政権失政の戦犯をきるというのは賢明な選択だった。しかし、あまりにもやり方が幼稚というか、ずる賢く不満分子を分断するのに失敗して立憲民主党の誕生を許してしまった。そして、それに野党第一党を取られたのだから、これをひっくり返すには、かなり複雑な知恵が必要だ。

立憲・国民の所属議員の利害

次期総選挙のためには候補者一本化した方がよさそうに思うが、実は立憲民主党の現職議員にはメリットは少ない。一本化すると、比例復活できるのは小選挙区でそこそこ取れる国民民主党のベテラン議員で、彼らが大量当選し、立憲民主党の若手は枕を並べて討ち死にだろう。だから、国民民主党がのめないような条件を出して合流のハードルを上げたのではないか。

一方、国民民主党には、政策や党名、人事などは二の次で合流して、時間をかけて主導権を奪えばいいという意見もあった。たしかに、ここは韓信のまたくぐりしてでも枝野立憲民主党に入って、次の総選挙が終わったあとに、さっき書いたような理由で国民民主党系議員の割合が増えるだろうから、路線修正を図っても遅くないともいえる。しかし、それは、余り爽やかなやり方ではないので、表では言えない。

与党と野党の政権交代をどちらも望んでない不思議の国

日本がなぜ、「健全な二大政党制」にならないかといえば、議員の多くが「永久与党でなくては嫌な人」と「万年野党でいいと思っている人」がほとんどだからだ。与野党を交互に経験して、野党時代は来たるべき政権復帰に備えて切磋琢磨すればいいという政治家が、この国にはほとんどいない。これでは民主主義の意味がない。

自民党に願いたいのは、野党のまっとうな人材を自民党に入れることを止めることだ。そういうことをするから、政権交代可能な建設的野党が生まれない。それを与党は批判するが、建設的与党を阻んでいるのはまともな人材を引き抜く与党にも責任がある。

一方、野党は、農協とか、医師会とか、建設業界とか、自民党的政治の屋台骨を支えてきた勢力を取り込むべきではない。小沢一郎が民主党の代表になったとき、めざしたのは、こうした圧力団体の存在のために歪められた政策を政権をとって是正することでなく、彼らのご機嫌を取って自民党政権の復活を阻止することだった。

しかし、それでは、政権交代による政策のイノベーションは図れず、単なる権力闘争にすぎなくなる。これが小沢一郎氏がいるがゆえに、1993年から制度としては小選挙区制を採用しても二大政党が健全に機能しない最大の原因だと思う。

二大政党はあまり違っても困るが、ほどほどに違う方向をめざしてこそ、政策のイノベーションを実現する優れた制度なのだと思うのだ。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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