香川オンラインゲーム規制:問題のある条文の削除が必要

2020年01月26日 06:00

弁護士の猪野亨氏が、今般の香川県におけるいわゆる「オンラインゲーム利用制限条例」に賛成の立場で論考を発表されました。

みっく―/写真AC

猪野氏は「私は、いずれ幼児や児童にはゲームは禁止すべきなんだろと考えています。(原文ママ)」と釣り記事のような意見を表明しています。釣られブロガーとみられるのは癪ですが、氏が弁護士という社会的責任のある立場であり、かつ影響力のある言論人でもあるため、我が国における「規制容認」の流れを堰き止める必要があると考えました。

また、現在香川県が本条例案についてパブリックコメントを実施しています。本条例には、香川県庁職員による優れた論考もあるので、私としては別の角度から、以前私が書いた文章を補足する形で改めて意見表明します。

なお、パブコメ提出される際、私の原稿で気に入った内容や文章があれば、じゃんじゃんコピペしてご利用ください。

素案中、子どもの「コンピュータゲームの利用制限」を定めた「第18条2」は、全文削除が必要と考えます。特に問題のある個所は以下のとおり。

  • 子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)の時間を上限とすること
  • スマートフォン等の使用に当たっては、義務教育修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめることを基準とするとともに、前項のルールを遵守させるよう努めなければならない

また、この条文との関係において、ゲーム開発業者の協力義務を定めた「第11条」を見直し、プロバイダのフィルタリング対策を義務付けた「第11条3」の全文削除をする必要があると考えます。

事例による問題点の抽出

文科省発表の昨年度の統計結果によると、日本の中高生の人数は、約660万人。日経新聞によると、ネット依存の疑いがある中高生が93万人とあるので、中高生のうち約14%が「ネット依存の疑いがある」状態にあることになります。

この調査結果、そもそも「ネット依存の疑いがある」割合がちょっと多すぎやしないか?と疑いはありますが、先に進めます。

仮に、上記調査をもとに100人のうち14人が、生活に支障をきたすレベルの「ネット依存」という中高生集団のサンプルを想定します。また、当然の前提として、いったん条例として制定されたら県民、および事業者には「遵守義務」が生じる、という点を提示しておきます。

このサンプルにおいて、「ネット依存」ではない86人のうち、相当数の子どもが、内発的な自主規制により「ネット依存」になっていないと考えられます。そういった子どもたちにも、一律上限1時間の条例の網がかかる。まさに「余計なお世話」です。

また、これも少なくない数の子どもたちが「親子間の話し合い」により、家族としては最適と考える取り決めの中で問題なく生活しているはずです。そんな中、「条例」により時間制限が課せられた場合、それを逸脱する親子間の取り決めはすべて「条例違反」です。

このケースで、仮に親が「親子の取り決めが優先だ!」として取り決めを変えなかった場合、子どもは「親子の取り決め」が「法令」を優越する、という間違った学習をすることになります。敷衍すれば、親が万引きを指示したら、子はそれに従いますか?という話です。

また、この中に例えばオンラインで将棋を指す高校生棋士がいるとします。その彼(女)が1日60分以上オンラインで将棋を指したら、「条例違反」です。先のとおり、本案の11条3には、プロバイダによるフィルタリング義務がありますから、彼(女)が香川県にいる限り、平日1時間オンラインで将棋を打つとシステムにより強制終了になります。なお、フィルタリングについては、ここにあげるすべての事例に当てはまります。

ゲーム感覚で学べるオンライン英語教材で、楽しく英語に取り組んでいる中学生がいるとします。現在そういった「ゲーム学習ソフト」がネットにあふれかえっていますが、どの教材が「勉強」で、どの教材が「コンピュータゲーム」か判然としないため、この場合極めて「条例違反」となる可能性が高いでしょう。「学校に聞けばよい」というかもしれませんが、先生の対応は一律ではありません。「黙っていれば問題ない」と考えたとき、これもまた子どもの法令遵守の精神をゆがめることになります。

また、昨今ではマインクラフト等をベースとしたソフトウェア開発ゲームに夢中で取り組み、生きたソフトウェア開発の技術を獲得する子どもたちが多数いますが、それも1日60分を超えたら、確実に「条例違反」になります。学校では教えてくれない「プログラミングの技能」を自力で獲得しようとしている子どもの努力を踏みにじる悪法と言えます。

上記に挙げた事例について、1日60分以上、いわゆる「オンラインゲーム」をした子どもが「依存症」になる可能性が高いといえるでしょうか?もちろん、皆無とはいいませんが、それを防ぐのは依存症に対する危険性等の「啓発」であって、子どもの自主性や時代背景を度外視した「規制」であってはならないと考えます。

次に、ネット依存の14人についてみていきましょう。

まず確認すべきは、「14人がなぜネット依存になったのか?」という原因です。「そこに、オンラインゲームがあったから」は、「包丁があったから殺人がおきた」とか、「車があったから交通事故がおきた」と同義の、短絡的で雑な議論です。

その原因は、例えば親子間のコミュニケーション不足、ネグレクト、元々依存症になりやすい資質、依存症に関する認識不足、ネットに終始つながっていないと仲間外れになるという切迫感、などが考えられます。それらが複層的に相まって、ネット依存になったと考えるのが妥当でしょう。

それら原因に対する対策や対応はそれぞれに違います。もちろん、「一律に時間制限をかければ問題解消できる」のはそのとおりですが、その場合は先の事例のような自発性の収奪や制度が抱える看過できない矛盾やゆがみの数々を「問題なし」と考える必要があります。

以上から、素案の「第18条2」の全文削除、及び「第11条」の見直し、「第11条3」の全文削除が妥当と考えます。

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