米国の25%関税でオリーブオイルなどスペインの農産品に大打撃

2020年01月29日 06:00

ヨーロッパの航空機エアバスへの不当な補助金支援で、米国ボーイング社の販売に悪影響を及ぼした、として米国が世界貿易機構(WTO)に訴えていたことに対し、WTOは米国の言い分を認めるという出来事が昨年あった。その結果、WTOは米国がEUからの輸入品に対して75億ドル(8100億円)相当の報復関税を課すことができることを認めた。

そこで米国は補助金を提供していたフランス、ドイツ、英国、スペインからの輸入品に対し民間航空機に10%、その他の農産品や工業製品に25%の関税を課すことを決めた。その適用が昨年10月18日から施行されている。

Steve Buissinne/Pixabay

この影響で、スペインが世界に輸出しているオリーブオイルの今年の輸出量の米国向けの15%の減少が予測されている。ワインに関しては米国市場向けで既に25%の減少が観察されている。オレンジとミカンについては輸出はほぼ全滅という状態にあるという。

オリーブオイル輸出協会(Asoliva)のラファエル・ピコー会長は「これはもう悲劇だ。スペインのオリーブ業界の損失は多大だ。この業界では最も被害を受けている国だ」と述べ、「ボトル詰めオリーブオイルへの25%の輸入関税で米国市場から完全に追い出されてしまった」「これまでの投資はすべて失った。最近6年間は米国において一番の輸出国であった位置もなくしてしまった」と付言して失望感をあらわにした。ウォールマートやコスコとの取引は90%失ったそうだ。

例えば、2018年には12万トンのオリーブオイルを米国市場の輸出した。ボトル詰めとバルクが50:50であった。

更に、問題はバルクでの輸出にも同様に高関税が適用される可能性があるということ。その上、スペインからイタリアやポルトガルにバルクで輸出して、イタリア製でボトル詰めして輸出する場合も原産地がスペインということで米国の門戸は閉ざされているということ。

オリーブを集めるセビリアの生産者(EL PAÍSより引用)

以上から対米輸出において実に厳しい状態にスペインのオリーブオイル業界は追い込まれているのである。この憤慨をピコー会長は「エアーバスへ不法に支援したことに対して、どうして我々オリーブ業界がその償いをせねばならないのか?」と述べて強い憤りを表明している。(参照:vozpopuli.com

また、同会長はイタリア、ギリシャ、ポルトガルがスペインが無くした米国での市場を占有していることにも悔しさを表明している。この3か国にはエアーバスの関連工場がないということから米国はこの3か国への高関税の適用を除外した。(参照:vozpopuli.com

オレンジとミカンについては悲惨である。昨年まで米国に17000トンを輸出していたが、25%の高関税の適用後は輸出は一切途絶えた。その内訳では9000トンのクレメンタインオレンジ、9000トンのミカン、6000トンのレモン、2000トンが他の品種のオレンジであった。クレメンタインオレンジは非常に甘味が豊富でオレンジとミカンをミックスしたようなオレンジで現在も需要が高く価格もある程度高く維持できる。ミカンは日本から持ってきた品種でサツマとオキツの2種類だ。といことで、僅かにレモンが460トンほど米国に輸出できた程度である。

しかし、対岸のモロッコ辺りからのスペインへのオレンジの輸入でスペインでの栽培は割高になって需要が大きく後退している。手入れして管理するだけの費用も十分には賄えなくなっている。唯一、採算が取れているのは広大な農園を持っている業者で、クレメンタインといった品種を栽培している農家だけに限定されている。一般の数ヘクタールで栽培している農家では維持管理費用を考慮すると収穫しない方がましだという農家も結構ある。そして今、米国への輸出で売上を築いていた業者もこの高関税の適用で全滅している。

オレンジの米国向けへの輸出の激減で、バレンシア州のカステリョン港から米国向けに柑橘類を多く輸出していたが、現在雇用の削減の必要が迫られており港湾業者の間で雇用の喪失ということで雇用主との間で紛争も起きている。

トランプ大統領政権はスペインのワインにも25%の高関税の適用ということで米国市場でのスペインワインは25%の減少を余儀なくさせられている。スペインの多くのワイン生産業者の方でマージンを削って価格を従来よりも低くしてオファーするようにしているが、その許容範囲には限度がある。一方の米国のスペインワインの輸入業者の方で自社のマージンを削る意志のある輸入業者は殆どいない。一時的には双方で協力することも可能であるが、それも長期の協力は期待できない。

スペインのワインにとって、米国市場はEU以外では一番重要な市場だ。しかも、米国に輸出しているというのは箔が付く。米国で失う分を中国や他の市場で穴埋めしようというのは本質的に無理がある。米国市場の重要性と同等の市場は他に存在しないからである。スペインワイン連盟の代表ホセ・ルイス・ベニテスは「この市場を失うことは、死ぬことだ」と断定した。(参照:vozpopuli.com

スペイン政府は報復手段として米国からの輸入品に同様の関税率を設けることも検討しているようであるが、これまでのスペイン政府はEUの代表にそれを委ねていた面もある。今ではスペインは単独で米国と交渉して行く必要性を感じるようになっている。

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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