日本のODA政策 〜 中国の一帯一路にどう対抗するか?

2020年01月31日 14:00

通常国会開会に先駆け、1月中旬の10日間、宇都隆史先生と鈴木宗男先生(日本維新の会)とご一緒に、ODA(政府開発援助)事業の視察で、タンザニア、ウガンダ、エチオピアの東アフリカ3か国を訪れました(地図も貼っておきますね)。私にとっても人生初のアフリカ、「百聞は一見に如かず」を実感した視察でもありました。

Google マップを事務所加工

インフラから米作りまで

まずは、3か国で視察した主な内容を駆け足で振り返りましょう。

タンザニア

最初に入ったタンザニアでは、空港からホテルへの途上、日本のODAで造られた立体交差の道路を通りました。大渋滞が解消されて、現地の方々に大変喜ばれているそうです。

翌日は、日本のODA支援により運営されている産院を視察。

日本から指導医師や看護士も派遣され、安全な分娩や乳児死亡率を下げる実績の中で、日本発の管理システムである『KAIZEN』が活用されていました。

ハードのみならずソフトでの支援は「本当に役立つ支援を!」という日本の姿勢の表れといえます。

また、いくつかの学校も視察。

NGOが行う草の根の協力として、『タンザニア甲子園』と名付けられたグランドの整備が、大阪北ロータリークラブの支援で行われています。

女子寮を作ったさくら女子中学校では、女子生徒達が母国の国歌と「君が代」を歌って感謝の意を表してくださり、思わず胸が熱くなりました(動画もぜひ)。

タンザニアでは、通学中に女子学生が性犯罪に遭うケースも頻発しており、女子教育には寮が不可欠なのです。

ウガンダ

ウガンダでは、首都カンパラ市内に建設されたクィーンズウェイ変電所改修現場を視察。電力需要急増で停電も頻発しており、無償資金協力の形で首都圏の電力供給を安定化させる施設です。

有償資金協力として展開されているウガンダ北部のナイル架橋の現場も視察。こちらはナイル川対岸のケニアと結び、北部回廊として通行・物流を大きく円滑化するためのインフラで、その中核として2年前に完成した「ナイル川源流橋」の勇姿を視察しました。

現地の方々のにぎやかな歓迎行事で迎えられ、橋を歩いて渡ると、既に観光名所にもなっているらしく、何人かの外国人の姿を目にしました。夜はライトアップされるそうです。

ODAはインフラだけでなく、食糧生産向上にも貢献しており、「米生産性プロジェクト」の現場では、コンゴからの難民にも稲作を指導しているとのことでした。

エチオピア

最後に訪れたエチオピアでは、エチオピア銀行経由で日本からの融資を受けた(ツーステップローン)女性実業家の方の追加的な支援要請を受けています。日本流の“KAIZEN運動”に成功した製靴企業は、ほとんど日本の中小企業に近い形態になっており、これからは輸出7割を目指すと意気軒昂でした。

否応なしに高かった中国のプレゼンス

ウガンダでは、ムセベニ大統領とお会いした際にナイル川源流橋のことに触れられ、「この架橋への日本の支援に感謝するとともに、より広い交易と発展への一層の協力を期待する」との言葉をいただきました。行く先々で現地の人々からも、日本に好意的な反応をいただきましたが、そうした一方で、現地で支援する日本人の皆さんも、中国人と間違えられることが多いと聞きました。それだけ、「アジアといえば中国」になりつつあるということだと思います。

ウガンダでは建設中の高速道路も見かけたのですが、それも中国の支援によるもので、しっかりそのことが道路のど真ん中に掲示してありました。行く先々で、中国のプレゼンスが否応なく高まっていることを実感したところです。

日本側の施設は、日本の支援で作られたのかどうか一目でわかりづらいことも多いのですが、中国側は、現地の人たちに向けたプレートを設置するなどして、現地民へのアピールに余念がありません。

今回の視察にあたって、私自身は、中国の「一帯一路」戦略(東アフリカはその西端)をにらんで、日本の支援の効果をどう最大化するべきなのかということに問題意識を置いていましたが、現地の状況は私が想像していた以上に進んでおり、危機感を募らせました。

「一帯一路」は周知の通り、アジアとヨーロッパを結ぶ貿易ルートを発展させる構想ですが、中央アジアを通る「陸のルート」に対し、今回訪れた東アフリカ地域は「海のルート」。そして後者は、日本にとっては通商上極めて重要なシーレーン(石油等を運ぶ海上交通路)にも重なります。

画像は通商白書2017より

実際、一帯一路戦略の流れで、日本のシーレーン沿岸の重要な港湾などのインフラを、中国政府の影響下にある企業に抑えられる動きも続出しています。このことは、我が国のエネルギー安全保障の観点からも無視できません。

「規模」では勝てない日本はどうする?

中国は、一昨年だけでもアフリカに600億ドルの投資を表明しています。支援対象によっては“高利貸し”ともいえる巨額の貸付をして、相手国が返済不能になるや港湾などの重要インフラを、中国政府の影響力下にある同国企業が長期で借り受けるという「債務の罠」への警戒論が欧米では強まっています。

これに対し、日本は冷戦終了からまもない1993年から、アフリカ開発会議(TICAD)を3〜5年おきに開催するなど、先進国の中では早くからアフリカ支援に取り組んできました。

昨年8月に、横浜で開催された第7回TICADでは、アフリカ54か国のうち53か国が参加(首脳級参加は42か国)。安倍総理がエジプトの大統領と共同議長を務め、総理からは参加国に対し、過去3年で200億ドル規模だった民間投資をさらに拡大し、産業人材の育成やイノベーションと投資を促進する方針を表明しています。

第7回TICADで記念撮影に応じる安倍首相とアフリカ諸国首脳ら:官邸サイト

それでも、日本は、ODA総額がピーク時の1兆円(1997年)から半減したまま推移しているのが現状。残念ながら日本の支援は、こうした財政的な制約も受ける中で、中国に対して金額ベースでは太刀打ちできなくなっています。しかし、「規模」を追い求めるのではなく、「品質」であれば、日本はまだ勝負できる。

今回の視察でもそのことを実感したのが、現場にあたる日本らしい目配りの聞いた人材の質の高さです。

現地ニーズにきめ細かく応じるヒトの力

ODAは、支援先の国民性など強みを見極める目利きと、現地事情に合わせた支援を提供することが成否を決めます。たとえばアジア諸国は器用な人たちが多く、ものづくり支援にスムーズに比較的適応しやすいのですが、アフリカ諸国では長らく戦乱が続いたこともあってか、手先を使った細かい仕事が得意でない方が多いようです。そこで農村やものづくりの職場で働く方々には、粘り強く懇切丁寧な指導が必要なわけです(ちなみに男性より女性のほうが真面目にスキルを身につけようと努力して上達も早いそうです)。

そうしたなかで、ウガンダでの夕食会では、国連やUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)・JICAの専門家など日本の若い方々の生の声を直接お聞きしました。今や派遣人員の半分以上が女性で、治安の悪い地方にも女性の皆さんが赴任してがんばっているそうです。

皆さん頼もしいだけでなく、現地の人々の輪に溶け込んで、心の通うきめ細かな支援をしていて大きな感銘を受けました。農業支援の中でコンゴからの難民の自立支援を息長く続けておられるUNHCRの女性の話は、特に印象に残っています。

そうした一方で、私は、日本のインフラ支援は質にこだわりすぎて、良くも悪くも「オーバースペック」になっているのではないかと思っています。

橋の上に悠々とそびえる巨大な構造物をみていると、「洪水対策などで技術的に実際に必要なのかもしれない」とも思いつつ、現地の交通事情に基づいた水準が「7」のレベルであれば、いまは「10」のレベルで作り込んでいるインフラも、「7」に合わせることで数の方を増やせるのではないか…。

このあたりは技術素人の私の所見なので、今後専門家の意見も聞きながら、引き続き検証したいと思いますが、中国に対抗して品質で勝負するなら、コストパフォーマンス重視の筋肉質な支援策を再構築すべきではないでしょうか。

皆さんのご意見を拝聴したいと思います。

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太田 房江
参議院議員(自民党)、元大阪府知事

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