ウイルス禍の「非常事態」は1つでなく3つ

2020年02月04日 06:00

最も怖いバブルの崩壊

中国の武漢市を発生源とする新型ウイルスは、世界に大きな混乱を巻き起こしています。世界保健機構(WHO)は感染拡大を阻止するため、「緊急事態宣言」を出しました。私は「緊急事態」は1つではなく、3つあると思います。

Mitha Putri/flickr

03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の当時と比べて、中国経済の世界に占めるシェアは当時の4%から現在の18%まで拡大しています。中国経済の停滞が世界に及ぼす影響は格段に大きくなっています。

情報社会のネット化もずっと進み、虚実を織り交ぜた情報が瞬く間に広がり、世界を不安に陥れます。産業活動のサプライチェーン(供給網)は中国を軸に、各国に張り巡らされています。ウイルスによる感染症問題は次元が異なる段階にきているのでしょう。

冒頭に申し上げた3つの「非常事態」とは、まず「WHOのいう感染症の拡大と人的被害の阻止そのもの」、2つ目は「ウイルス禍が世界に与える巨大な震度により、生物化学兵器としての威力を立証してしまったこと」、3つ目は「いつまでも続くことはないと、警報が鳴らされてきたマネーバブルの崩壊」です。

事態をどうとらえ、どう対応すべきかついて、今、世界は実験場の場になっています。発生源の究明、水際対策、感染者の隔離ばかりでなく、幅広い視点が必要です。

ウイルスが自然発生なのかさまざまな情報が飛び交っています。「武漢の病原体研究機関から漏れたのではないか」「新型コロナウイルスにエイズウイルスが挿入されているのをインドの科学者が発見」、「中国が情報公開に乗り出すのが遅かったのは裏がありそうだ」など虚実を見分けることできないまま、情報がネットで拡散しています。

ウイルスは生物化学兵器になり得ます。生物化学兵器は国際条約で禁止され、条約は1975年に発効しています。どこまで守られているか、実効性はどうなのでしょうか。「兵器の開発ではない。研究のためだ」と、言い逃れはいくらでもできます。

ウイルスの威力を目の当たりにして、、生物化学兵器に触手を伸ばしたいと考える国が出てこないとも限りません。すでに密かに手を伸ばしている国はあるでしょう。この兵器は「貧者の核兵器」とも呼ばれ、核兵器に比べれば安上がりです。

しかも核兵器や大量破壊兵器は、関連施設を上空の衛星から偵察できます。それに対し、生物化学兵器は研究機関で密かに開発・製造ができるでしょう。その誘惑にかられる国は事態の推移を見守っているに違いありません。その意味では「緊急事態」です。

もう一つの「緊急事態」とは、グローバル化が進み、中国のような巨大な生産拠点で異変が起きると、世界中に深刻な影響がでてくることです。国際通貨基金(IMF)の専務理事が「SARSよりも懸念が深い。中央銀行は金融緩和の維持を」と呼びかけました。

最も警戒を要するのは、ニューヨーク市場で株価が急落し、中国は大幅安、日本でも週明けの3日、同じく急落、世界市場は株安の連鎖反応を起こし始めています。主要国の超金融緩和政策が長引き、マネー市場には膨大な投機資金が堆積しています。

NY証券取引所(flickr)

「バブルはいつか崩壊すると警告できても、いつ、何がきっかけで崩壊するのかは、起きて見なければ分からない」と、言われています。「その時を今、迎えようとしているのか、政策当局が対応すれば、ソフトランディングできるのか」です。

米連銀議長(中央銀行総裁)はかつて「バブルは破綻してみないと、バブルであったかどうか分からない。できることは、破綻後の金融システムの救済だと、語りました。

バブル破綻後の政策については、悲観的な見方が多いようです。「金融政策では、米国は若干追加緩和の余地はあっても、日欧中は非常に限定的な手しか打てない」「財政政策では、金融政策よりは発動余地はあっても、大胆なテコ入れはできない」です。

特に日本は、平時なのに史上最大の当初予算、その前段階としての補正予算を組んでしまっており、「緊急事態が発生したとき、どうするのか」と、懸念されてきました。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年2月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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