クルーズ船と日本の憂鬱:後手に回る日本の対応

2020年02月09日 19:00

今朝の報道では、クルーズ船内の乗客乗員100人程度が発熱などの体調不良を訴えたとあった。閉鎖空間に隔離されていることに対するストレスもあるので、コロナ感染症との関連性は未知だが、対応が後手に回っているようだ。

横浜で停泊中のクルーズ船(NHKニュースより編集部引用)

公海上を航行している船舶に対して、日本の権限がどこまで及ぶかはわからないが、少なくとも、最初の検査試料を採取した時点における危機対応策は間違っていたように思う。感染者がいることを前提にして検査したのならば、その時点で行動を制限すべきでなかったのだろうか?そして、ここまで来れば乗客乗員全員の検査が必要ではないかと思う。

昨日のテレビで岡田さんという解説者が、「田村元厚生労働大臣が全国で1日1万人以上の検査ができる体制を整備したと言っていた」と発言していたが、これが事実なら、全員検査への対応も可能なはずだ。この方も、現状を考えると全員の検査をすべきと言っていた。今日も6人感染者が見つかったとニュースが伝えていたが、何人を調べた結果なのか分母がない。これは日本の報道に見られる致命的な欠陥だ。

武漢で日本人患者が肺炎で亡くなったが、新型コロナウイルス感染かどうか確認できていないとのことだ。つまり、新型ウイルスによる死者には数えられていないことになる。これでは実数が正確に把握されていないことになる。どこまで続くのかわからないが、経済への影響は避けられないだろう。

米国はこの感染症に対してかなり厳しい態度で臨んでいるが、この困難に対して、日本がどこまで中国を援助できるか、それが今後の日中関係に重要だ。

話はここで一変するが、昨日、日本アイソトープ協会の主催で講演会が開かれた。私と金沢大学の絹谷清剛先生が演者だった。絹谷先生のテーマは核医学治療だった。アイソトープを上手に利用すれば、骨転移の制御も可能かと思った。しかし、放射線同位元素というだけで、複雑な何重もの規制が横たわる。放射線に対する過剰な恐怖心が医療の進歩を妨げているのではないか?海外では急展開があるのに、日本が取り残されている。免疫療法と同じような状況だ。

先週号のScience誌に「Neoadjuvant checkpoint blockade for cancer immunotherapy」という総説が掲載されていた。科学的に考えれば、もっと早い段階で免疫療法を行うのは当然だと思う。患者さんの免疫を徹底的に抗がん剤で叩いてから免疫療法を提供するのは、普通に考えて理に反する。標準療法は正しいと盲目的に信じるのは、科学ではなく、宗教のように思えてくる。

標準療法なるものを根底から考え直し、新たな治療体系を一から組み立てることが必要だと思うのだが、国には10年後どころか、5年後を見据えた発想がない。5年前の世界を見て、必死で追いかけるだけだ。これでいいのか、日本のがん医療は!


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年2月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
医学者、内閣府SIPディレクター

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