新型肺炎:共産主義の問題と怖さ ここにあり

極めて異例のことですが、中国共産党が自らの失政を認めました。

中国の体制を説明しておくと、中国は民主主義国ではありませんし、日本のような普通選挙もありません。首相や大臣も、地方の市長も全て共産党の指名で決まります。と言うことで、全ての行政は共産党のもとにあります。地方の上には国、国の上には共産党という組織があり、その共産党の中であらゆる国の方針が全て決まります。

行政はそれを実行するという組織で、全ての権力は共産党にあるのが中国の共産主義です。そして、その共産党のトップが習近平総書記で、この人は国家主席でもあります。その習氏をトップとした最高幹部であり中国共産党の最高意思決定機関を政治局常務委員会といいます。

その常務委員会が2月4日に新型コロナウイルス肺炎の初期対応について「中国の統治能力にとって大きな試練となり、一連の対応で至らない部分が明るみに出た」と、表明しました。こうしたことを中国共産党が表明することが、極めて異例なのです。なぜならば、「共産党は間違いを起こさない、共産党は絶対に正しい」これが中国共産党体制だからです。中国共産党が「間違えました」などと言って、「ふざけるな!責任とって辞めろ!」などとなれば、共産党に対する信頼は落ちてしまいます。

ところが、さすがに感染者数が2万人を超え、春節が終わった後も工場は閉鎖のままで働けない、やがては給料をもらえるかわからないという状態に陥っていますから、人民の不満を一度抑えると目的があったと思われます。

「一連の対応で至らない部分」が何を指しているのかと言えば、それは武漢市や湖北省の行政や共産党の対応で、中央政府や中国共産党に批判が来ないようにしたとも言えます。ですから、「対応が不十分だった」ということで地方の共産党幹部を400人以上、すでに処分したそうです。

一方で武漢市の周先旺(しゅう・せんおう)武漢市長は、「発表がタイムリーでなかったことについては、これが伝染病であり、伝染病には『伝染病防治法』があり、法に基づき発表しなければならないことを理解してほしい。私は、地方政府として情報を得た後、(中央政府から)権限を授けられて初めて、発表できる。この点が当時、理解されなかった」とコメントを発表しています。これは「地方政府は権限がなければ情報を発表することができない」と言った、こちらも異例の発言です。

記者会見する武漢市長(湖北省人民省サイトより)

もう2ヶ月も前の、12月8日に新型肺炎の感染が確認されているんですが、中央政府の国家衛生健康委員会が把握したのは12月30日、中央も地方も感染拡大の発表や対応をしないまま、年に一度の民族大移動である春節を迎えました。そして1月21日、武漢では春節のイベントを盛大に行った後、25日に武漢氏を封鎖しました。しかし封鎖までの間に、武漢市の人口約1108万人のうち500万人以上が武漢の外に出てしまっていました。

はっきり言いましょう。
これまでの中国の対応が新型コロナウイルス肺炎を拡大させて世界中に不安を与えているわけです。

地方は怒られるから中央政府に報告をしない。そして、中央政府は悪い情報は隠したい。なぜならば、国民の権力批判を恐れているからです。

そして、先ほど言ったように、もう既に400人以上が処分されているわけですが、強権政治でトカゲの尻尾切りをして国民をなだめる体質が不健全そのものですね。私は、民主主義がベストだとは言いません。けれども、共産主義の問題と怖さがここにあります。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年2月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。