13回目の結婚記念日に寄せて 〜 ALS患者の夫婦像・家族像

我々夫婦は13回目の結婚記念日を迎えました。この日は朝から講演予定でした。いつもの講演と違うのは、そこに妻と子供達がいる予定だったことです。結婚記念日に自分が仕事している姿を家族に見せることは、私にとって意味深いものでした。

しかし残念ながらこの講演はコロナウイルスの影響で延期になってしまいました。せっかく外出ヘルパーさんを確保したので、家族でちょっとだけお出かけしました。

思い返すと家族だけでのお出かけ・旅行は、2014年年末の三重旅行が最後で、もう5年もの月日が流れてしまいました。その旅行中もサービスエリアで転んだり、アスレチックに登れず子供達と遊んでやれず、惨めな思いをしました。妻へのせめてもの労いにと夕飯に松坂牛を大奮発しましたが、当時ものの値段をわからない子供達に「美味しい♪」と大半をあっという間に平らげられたことが、昨日のことのように思い出されます。

家族だけの時間、夫婦だけの時間、私がALSの身でそれを望めば必ず家族の誰かが犠牲になることを、ALSと共に生きる中で我々夫婦は思い知りました。しかし、ALSによって死ぬことはありません。人工呼吸器をつければ生きられるのです。ALS宣告=余命宣告では決してないのです。

今年の正月、久しぶりに実家に家族全員で顔を出しました。私は2人のヘルパーさんと、妻は子供達と出掛けて現地合流しました。そして私はケアの都合で先に帰宅しました。年末に家族で映画を見に行ったときも同じ方法で行きました。

私には何処でも連れて行ってくれるヘルパーさん達がいます。その助けを借りて可能な限り家族の時間を過ごして、無理なところは割り切ってヘルパーさんを頼り別行動をとるのが、今の私達の『家族でのお出かけ』です。

今回は家族で岐阜の歴史博物館の特別展示『大河館』に行きました。今岐阜県は『麒麟がくる』で大盛り上がりを見せています。元々私も妻も歴史好きで、子供たちも興味を持って見ていました。

その後私は夕方の看護師のケアに間に合うように先に帰宅しました。もちろん一緒に出かけて一緒に帰宅するのが、家族の当たり前の姿ですが贅沢は言えません。働いている姿を見せるのはお預けとなりましたが、ひと時でも家族のお出かけができて幸せな1日でした。ありがとうございます!

恩田聖敬


この記事は、株式会社まんまる笑店代表取締役社長、恩田聖敬氏(岐阜フットボールクラブ元社長)のブログ「ALSと共に生きる恩田聖敬のブログ」2020年2月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。