バロンズ:リスク資産と安全資産、共に上昇する理由

2020年02月24日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーはウォール・ストリート(金融部門)によるメイン・ストリート(非金融部門、消費者部門)への進出を掲げる。モルガン・スタンレー(MS)は、個人投資家向けオンライン証券のE*トレード・フィナンシャルを130億ドル、金融業界としては約10年間で最大の規模で買収すると発表した。仮に買収が成功すれば、売上は440億ドル、800万件の個人投資家の口座数に加え、顧客の資産は3.1兆ドルに及ぶ。

今回の買収案は、MSだけのアイデアではない。例えばゴールドマン・サックス(GS)は、2016年に個人向けオンライン・バンキング”マーカス”を始動、今では600億ドルの預金を抱え、2019年の売上は8.6億ドルを叩き出した。

一方で、バンク・オブ・アメリカやJPモルガン・チェースは、仲介業務を立ち上げ何百万もの新たな顧客を獲得、後者は25万ドル以上の口座を有する新たな顧客に2,000ドルのボーナスを提供してきた。一連の動きは、金融危機後に厳格化され稼ぎ頭としての原動力を失ったトレーディングに代わるものだ。今後、メイン・ストリートへの進出が激化すると予想される半面、個人向けオンライン証券は取引手続き無料のサービスを展開しつつある。金融業界は今後、どのような変化を迎えるのか、詳細は本誌をご覧下さい。

(カバー写真:htmvalerio/Flickr)

2日間の米株下落は痛みを伴うが、米株は強気相場を継続―The Two-Day Stock Selloff Hurts. It’s Still a Bull Market No Matter Where You Look.

足元の市場では、矛盾する考えを持つことが重要なようだ。前週、米株のほか投資適格級、投機的格の社債などリスク資産は過去最高値を更新した。同時に、安全資産である金や長期債も、高値を記録。安全資産が上昇した背景は新型コロナウイルスのリスクが挙げられる。リスク資産は、新型コロナウイルスの大流行を受けて財政出動や金融緩和策が経済の悪影響を吸収すれば、2003年のSARS発生時のように景気悪化が一時的にとどまると想定され、値上がりしているのだろう。

また、民主社会主義者がトランプ大統領と本選で対決するとの見通しも、大統領の再選見込みを押し上げ株価上昇につながっているに違いない。トランプ氏の勝利は、2017年1月20日から時価総額が11.4兆ドル拡大した通り、米株にポジティブだ。

リスク・オン相場とリスク・オフ相場が同時発生している証左は、他にもある。一時期のテスラ株のごとくヴァージン・ギャラクティック・ホールディングスの株価が急騰する半面、公益関連の代表的な上場投資信託(ETF)である Utilities Select Sector SPDR(XLU)が新高値をつけた。中央銀行による流動性供給継続の思惑が投資家に広がっているため、こうした状況を迎えているのだろう。

米30年債利回りは1.9%と過去最低をつけ、実質の米30年物インフレ連動債利回りもわずか0.41%に過ぎない。それでも、米国債はマイナス金利の債券が13.5兆ドルへ再び拡大するなかで、プラスを維持している。

米国債利回りの低下に合わせ、S&P500は上昇。

(作成:My Big Apple NY)

金先物も21日に1,644.60ドルと2013年2月以来の高値で取引を終え、年初来で29.6%も跳ね上がった。金先物の上昇とともに、ドル高も進行中だ。通常はドル安局面で金先物が上昇するなどドルと金先物は連動しないが、今回は違う。ドル高とともに円建てとユーロ建ての金先物は、ドル建てが2011年に8月につけた過去最高値1,888.70ドルに届かない水準でも、過去最高値を塗り替えた。

ただし21日の米株相場は、テクノロジー株に引きずられ下落しS&P500種株価指数は1.05%下落、1月末以来の下げ幅を記録した。それまで、米株はアップルの売上未達の警告をほぼ吸収していたが、2月の米IHSマークイット総合PMIが2013年以来の水準へ急低下し、新規受注に至っては2009年以来の水準へ沈んだたため、下落を促したと考えられる。

とはいえ、ウォール街には「山高ければ谷深し」の逆、つまり「谷深ければ山高し( the bigger the drop, the bigger the pop)」という諺がある。投資調査会社ストーン・マクロの分析によれば、新型コロナウイルスの影響は既に古い材料として受け止められているという。中国人民銀行による利下げを始めとした一連の景気支援策などは、将来の景気回復などへの期待を促すものだ。また、FF先物市場では2回の利下げが織り込まれている。過剰流動性が存続する限り、リスク資産も安全資産も上昇余地があるのではないだろうか?


中国人民銀行が20日、政策金利である最優遇貸出金利(ローン・プライム・レート、LPR)を3ヵ月ぶりに引き下げた(1年物:4.15%→4.05%)ほか、2月はタイ、フィリピン、ロシア、ブラジル、オーストラリアなど相次いで利下げに踏み切りました。新型コロナウイルス感染者を多く確認するシンガポールでは、財政出動の用意があると表明。各国で対応が講じられています。Fedも年2回の利下げが織り込まる状況ですが、気になるのが7月に短期債の資産買入を終了するとの発表です。

これまで、資産買入に合わせS&P500は上値を切り上げてきました。

(作成:My Big Apple NY)

金利を低水準に抑えていたとしても、仮に市場の期待を裏切ったと判断されれば資産買入終了に合わせ失望売りが入ってもおかしくありません。新型コロナウイルス感染が沈静化しても、夏にかけ別の不確実性要因が市場を襲うリスクに留意すべきでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年2月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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