新型コロナを逆手に…都知事選からネット投票解禁を!

2020年02月28日 06:01

新型コロナウイルスの感染拡大が日本経済、社会にもたらすインパクトは日に日に増すばかりだ。きのう(2月27日)の政府による全国の小中高校の休校要請は、親御さんたちの対応も含めて波紋を広げたばかりだが、ほかの問題に目を向け、あえて前向きに考えると、昭和期から連綿と続けてきた岩盤規制や古い慣行をぶち壊す勢いを感じる。

マスク姿でテレワークの人も増加中(※画像はイメージです。つぐみみ/写真AC)

「令和の黒船」新型コロナ

幕末の黒船に象徴されるように、外圧がなければ自律的に変われない日本社会だが、物質的に豊かになってしまった平成のそれは、アメリカの圧力があっても規制改革を一部しか呑まないほどの鈍重な停滞にあえいだ。しかし、相手が天災やウイルスとなってくると、手遅れなほど老化したはずの日本社会にこれまでにない危機意識と行動を促しつつあるようだ。

その代表的事例がテレワーク導入に後ろ向きだった日本企業の変化だろう。社員らの感染という現実的な事情があったとはいえ、NTTや電通といったメインストリームが重い腰を挙げたことは特筆に値する。

また医師会の根強い抵抗で導入が進まなかったオンライン診療の社会実装も、外出が難しく、患者の殺到を緩和するという“やむを得ない事情”で進もうとしている。日本になじまないとまで言われたキャッシュレス化も、現金にウイルスが付着するリスクから一気に進むのではという観測すら半ば冗談で出てきた(苦笑)。

選挙にも変革を促すのか?

そして日本社会で規制ゲームの権化ともいえ、特に近代化が遅れているのが選挙制度だ。

ネットを使った選挙運動は7年前に世界最後でやっと解禁されたが、運動員が有権者宅を訪問して投票を呼びかける戸別訪問は、選挙期間中は公選法で禁止されている。選挙事務所の来客にせんべえを出すのはOKだが、法律が作られた1950年ごろは「贅沢品」とみなされたケーキはNGといった時代遅れの因習も放置されている。

そういうなかで最近、政治関係者との雑談で話題になったのが、このまま新型コロナウイルスの感染拡大が続いた場合、選挙活動や投票活動にどういう影響を与えるかというものだった。年内の解散総選挙のシナリオがいまのところ現実味が乏しくなった中で、当面の最大の政治決戦は都知事選(6月18日告示、7月5日投開票)だろう。

都知事選はもはや視界になし?(都知事公式FBより)

都知事選をめぐっては小池氏との激しい対立を続け、独自候補擁立をめざす自民党都連の対応や、山本太郎擁立説もくすぶる野党側の動向も焦点になるが、いまのところは小池氏再選が有力視されている。本稿では情勢については割愛するが、選挙構図がどうなろうと、新型コロナウイルスの感染拡大が選挙本番までに収束するのか現段階では不透明だ。

夏まで収束しなければ都知事選にも悪影響だが…

2003年のSARS流行では、WHOの収束宣言は7月に入ってからで、SARSと同じ展開になるのであれば、その時期までに都知事選にマイナスの影響はある(もちろんその頃まで事態が悪化していればオリンピック開催も危ういが)。いまでも各地の朝の駅頭活動で握手ができない事態になっているが、選挙活動は最悪ネットで発信できる。問題は投票行動だけは期日前であろうと、当日だろうと絶対に投票所に行かなければならない点だ。

しかし、自宅などでネットによる投票が可能になれば懸念は解消される。新型コロナで重症化リスクが比較的高いシニア層もツールの使い勝手はさておき理論上は安心して投票することが可能になる。国政選挙に先駆けたテストケースとして、日本一のメディア選挙から始めるというのは実に意義深い!……と、ここまで書いておいてなんだが、もちろんこの夏にいきなりネット投票導入は難しいことは百も承知だ。

写真AC

私も7年ほどこの問題に関心を持ち、勉強会に何度か参加した経験もある。マイナンバーの普及が10%そこそこで、デジタル化に遅れまくっている日本が、半年弱でネット投票をやるというのは無理難題すぎる。システム稼働の安定、セキュリティ対策、あるいは自由意志で投票する環境確保といった課題は、さんざん挙げられてきた。

一方で、世界的には、電子立国のエストニアの国政選挙でいち早く実現し、フランス大統領選では在外投票については2012年から実施してきた先例はある。

ネット投票導入の転機にできるか?

日本でも総務省が2017年12月に野田聖子大臣(当時)の指示で研究会を設立し、翌年8月に報告書を提出。在外投票での導入についてはかなり現実味が出ている。選挙業界では2020年代半ばの実現に期待する声もあった。

それでも選挙制度を改正するのは、政局や党利党略も絡んで一向に進まないことが実に多い。しかし、先述したテレワークやキャッシュレスなどの推進と同じく、未曾有のウイルス拡大という「外圧」を逆手に取れるチャンスではないだろうか。

マイナンバーを一気に半数程度まで普及させ、投票システムの開発を促し、G7の国政選挙で初のネット投票導入を実現する…。いまは夢想に過ぎなくても、破壊的イノベーションを促す千載一遇の機運を逃してはなるまい。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長

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