公取委、楽天に対する緊急停止命令申し立て

2020年02月29日 11:30

29日の東京新聞の記事(「送料無料 緊急停止申し立て 楽天、実施取りやめず」)。

通販サイト「楽天市場」を運営する楽天が、一定額以上の購入者への送料を出店者負担で無料にする制度を導入するのは独禁法違反(優越的地位の乱用)の疑いがあるとして、公正取引委員会は28日、制度の緊急停止命令を出すよう東京地裁に申し立てた。楽天が、立ち入り検査を受けた後も3月18日の導入を取りやめないことから、緊急に出店者の不利益を防ぐ必要があると判断した。

公取委は、「出店者側は(1)送料負担で出費が毎月数十万円増える(2)確実に売り上げが増えるなどの直接の利益はない-ことなどが分かり、公取委は制度導入で出店者側の不利益は避けられないと判断した」とのことである(同記事)。

公取委による緊急停止命令の申し立ては16年ぶりだという。

楽天の三木谷浩史会長兼社長(コーポレートサイト決算資料動画より:編集部)

公取委の検査後、楽天は妥協案のようなものを提示した(「楽天が妥協案、公取委はどうする?楽天「送料無料」問題③」参照)が、公取委には響かなかったようだ。

楽天が「3月18日」という期限を切って、「送料無料」(その後「送料込みの価格」と言い換えた)の断行という、「強硬手段」に出ようとしたことが、緊急停止命令の申し立てという公取委側の「強硬手段」を招いたということはいえるだろう。直近の期限を設けて、合意に至らなければ強行するというのであれば、それを事前に問題視している公取委としても即効性のある対応をしなければならない、ということになる。

社長の三木谷氏は、送料無料の要求について、送料無料ではなく送料込みの価格にしてもらいたかっただけだなどと述べ、「誤解を招いてしまった」と釈明したそうだが、それもよくなかったのかもしれない。言いたいことは変わらないという主張は、結局、送料を店舗側に負担させたい思惑であることには変わらないということかと公取委に認識されてしまったのかもしれない。

楽天は「送料を商品価格に転嫁すれば出店者の負担は増えないなどとして、予定通り実施する意向を示していた」(冒頭の日経新聞記事)とのことであるが、それは店舗側が送料を負担してかつ値上げをすることを強いていることを意味する。

送料無料となった場合、同一店舗で複数商品を同時に購入する消費者にとっては不利になるという可能性も無視できない(まとめ買いに対する相当の値引きがあれば別であるが)。送料別途請求ならば送料は一回で済むが(そうでない場合もあるようなので決済時には注意が必要である)、送料無料(あるいは込み)の場合は、消費者は個数分送料を負担することになってしまうおそれがある。無料の強制が実は消費者利益に反する結果となるという楽天への批判は公取委にとって大きな材料となる。

今後、楽天はどのようにディフェンスしていくのであろうか。

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楠 茂樹
上智大学法学部国際関係法学科教授

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