新型コロナ:社員が罹患したら会社はどうすれば良いの?

2020年03月04日 06:00

北海道の鈴木知事が異例の「緊急事態宣言」を出し、安倍総理が全国の小・中・高校などを臨時休校するよう要請する事態にまで発展した新型コロナウイルス禍。批判を覚悟で政治的な英断を下したものの、ここから2週間程度でこの事態が沈静化するのか予断を許さないが、仮に社員(労働者)が新型コロナに罹患してしまったとしたら、企業経営者(使用者)は、一体どのように対処すれば良いのだろうか?

写真AC

インフルエンザとは対応が違う新型コロナウイルス

アゴラの池田所長も述べておられるように新型コロナウイルス感染症は今年1月に指定感染症に認定されたので、労働者が新型コロナに罹患してしまった場合、当該労働者に対して、都道府県知事が就業制限や入院を勧告出来るようになっている。つまり使用者の判断というよりは法律上の定めに沿って、都道府県知事の指示に従うことになるのだ。

これに対して、労働者が季節性のインフルエンザに罹患した場合、法律上による出勤停止などの決まりはない。一般的な常識に照らせば、労働者が自主的に欠勤する(そもそも体調不良で出勤は出来ないであろう)と思われ、使用者も当然にそのように考えるだろうが、仮に無理して出勤してくる労働者がいたとしたら、それを止める術はない。

これを回避するためには、労使ともに納得できるルールを決めて、就業規則にしっかりと書き込んでおくべきだろう。普段、労使ともにあまり意識していないのかも知れないが、本当に『就業規則』は大事なのだ。

新型コロナウイルス感染症は指定感染症(厚生労働省)

いずれにしても、新型コロナもインフルエンザでも、労働者が罹患して欠勤する場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」にはあたらないと解されているため、会社には休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払う義務が発生しない。

前回の拙稿にも書いたが、社会保険に加入していれば、一定条件のもとで「傷病手当金」を受けることが出来るが、会社が社会保険の適用事業所となっていなければ受給は出来ず、またパートタイム労働者など短時間勤務により被保険者になれない場合も同様だ。また国民健康保険にはこのような制度は用意されていない。

企業が独自で私傷病に対する給付制度を設けているケースもあるかも知れないが、中小企業では非常に稀だと思う。ましてやパートタイム労働者まで対象としている企業が果たしてどれだけあるだろうか?

安倍総理が掲げた新助成金はセーフティーネットになりえる?

2月14日、厚生労働省は新型コロナの影響による中国との取引関係で業績が悪化した企業に対し、「雇用調整助成金」(売り上げや生産が減少しても雇用を維持する企業への助成)の特例を実施してきた。更に3月1日、特例の要件であった中国に関連しない企業にもその対象を拡大することを発表した。

この助成金は、企業が経済的理由によって自らの判断で休業した際、労働者に支払うべき休業手当の一部を助成するものであり、雇用のセーフティーネットの役割を担っている。本来は事前に計画書を提出するのだが、今回は特例として事後の申請が認められている。わずか2週間ちょっとで拡充策を打ち出したあたり、なかなかスピーディーな対応だと思う。

2/29の総理記者会見(官邸サイトより)

さて、この発表前日の2月29日、全国に休校を要請した安倍総理は保護者の休職に伴う所得の減少に新たな助成金を創設すると明言した。この時点では詳細が不明であったため「正規・非正規雇用を問わず、しっかり手当てする」という生煮えでは無くて、「平均賃金の80%は補填します」などとハッキリ具体的な数字を用いて発表すれば良かったのに…と思ったのだが、3月2日に「日額8,330円を上限に全額支給」と更にスピードアップして助成内容を発表した。

対象は小学生の保護者までとなり、上限額の設定はあるものの、かなり安心感が得られる金額ではないだろうか。

このほかベビーシッターを利用するの際の助成増額、午前中から運営するなど新たな対応を取る学童保育などへの費用補助もあり、やや大盤振る舞いの感じが無きにしも非ずだが、安倍政権や厚生労働省の本気が垣間見える気がする。

良い政策は積極的に真似するべきだ

今回の新型コロナ禍への対応として、感染者が出ないうちから「法定感染症」に認定、春節の冬休みを延長し、共働き世帯への配慮として看護休暇の申請を行えるようにした台湾政府は“神対応”との賞賛を集めている。有給休暇を拒む企業があった場合には、法律で処罰することもあると表明する念の入れようだ。

何かと後手後手だと批判される安倍総理が、支持率爆上げの蔡台湾総統を横目で見ているのかわからないが、現在、厚生労働省だけでなく、経済産業省も資金繰り支援としてのセーフティーネット保証や貸付などで企業の支援に乗り出している。

厚生労働省の支援策も含め、金銭的な対策は出揃いつつあるが、更に加えて台湾のようにマスクを実名販売制にしたり、コロナの発生状況をわかりやすくホームページで情報発信するなど、まだまだ打てる手立てはあるはずだ。

今回の事態鎮静化に向けては野党も懐の広いところを見せ、何かと難癖をつけるのではなく、建設的な意見・施策を提言して、挙国一致でこの難局に対応して欲しいと心から願っている。

【アゴラ研究所よりお知らせ】アゴラ出版道場卒業生でもある源田裕久さんの初の著書『中小企業の「就業規則」はじめに読む本(仮)』が4月下旬に発売されます。

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源田 裕久
社会保険労務士/産業心理カウンセラー アゴラ出版道場3期生

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