長期の干ばつと貧困に喘ぐ中米グアテマラ、国外脱出者は26.5万人に

2020年03月04日 06:00

中米というのは日本では殆ど話題にならない地域。最近の中米のニュースとして日本で取り上げられたのは米国に向かう集団移民「キャラバン」だ。それは生活苦に喘ぐ中米の多くの市民、特にグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルからの移民である。

グアテマラで貧困にあえぐ子供(Feed My Starving Children (FMSC)/flickr:編集部)

彼らが米国に容易に入国できるわけではない。それでも貧困生活を送るしかない逆境から何が何でも抜け出したいという気持ちがそうさせるのである。結果は不法移民者として米国との国境の手前で足止めさせられるのが常である。また最近はトランプ政権からの圧力でメキシコ政府も不法移民の取り締まりを厳しくしており、本国に身柄を送還させる場合が増えている。

不法移民が止むことなく発生している原因のひとつに干ばつがある。グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルを襲っている干ばつが長期化しており、「乾燥回廊」と呼ばれるようになっている。エルニーニョ(El Niño)現象と呼ばれて、ペルー沖合の海域が3-4年周期で海面の気温が上昇して、それが影響して中米地域で雨が長期間降らず気温の高い状態が続いている。

特に、その影響を最も強く受けているのがグアテマラだ。その顕著な例を5キロ平米のアテスカテンパ湖(Atescatempa)に見ることができる。嘗て湖であったのが少しづつ水面が減少して2017年には完全に干からびてしまったのである。

2019年のグアテマラは年間で降雨があったのは僅か65日だけだったそうだ。その影響を脆に受けているのが農家である。栽培できるものがなくなり、彼らの飲料水も欠乏するという状況になっている。昨年だと8月の時点で既に8万世帯に政府は救済金250ケツァル(3500円)を各世帯に支給した。(参照:eleconomista.net

貧困と取り組んでいる国際協力団体オックスファム・グアテマラによると、トウモロコシの栽培の80%が壊滅したと報告されている。栽培できたとしてもひとつひとつの粒が水分不足を如実に示すかのように貧相で商売にはならない不作物になっているという。栽培はトウモロコシやコメである。

その影響から、同団体は、少なくとも3万3000人の子供が過度の栄養失調に陥っており緊急の医療支援が必要だとしている。また、国際連合世界食料計画(WFP)によると、グアテマラの人口1700万人の内の15%は日々の食料に事欠く状態にあるそうだ。
(参照:eldiario.es

グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルの3か国に蔓延る凶暴な暴力組織からの脅威と、そして空腹から逃れる為に、昨年はグアテマラから26万5000人が国外に脱出したそうだ。仕事、安全、食料を求めて米国に向けて不法移民となったのである。それは2018年と比較して130%の増加だという。移動して行くのにグループを組んで移動すれば安全に米国に向けて北上できると考えて誕生したのがキャラバンである。

グアテマラでは干ばつだけが原因で貧困が始まったのではない。中米の中でもグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルに加えてニカラグアの4か国は国を発展させる産業が不足してもともと貧困層が過半数以上を占めている。今回取り上げているグアテマラの場合は人口の60%が貧困層である。食料の支援が必要な人たちである。その影響で子供の半数は慢性的に栄養失調にあり身体の発育に遅れが観察されているという。

保健省によると、昨年は5歳未満の1万5300人の子供に栄養失調が観察されたそうだ。それは2018年と比較して24%の増加だとしている。また、137人の子供が極度の栄養失調で死亡したことも報告された。(参照:eldiario.eslavanguardia.com

その悲惨さを示す一例として、23歳の3人の子供を抱えたアセデチの場合、生後8カ月の子供は過度の栄養失調で治療を受けた。2歳の子供は栄養不足が極限に達し死亡する危険性があったが15日間の療養所での治療で回復した。住んでいる家はわらで作られ、ベッドはサトウキビの茎でつくったもの。電気もキッチンも浴室もない。彼女は「この貧困な国から出るために援助が必要だ」と語り、どこに行きたいのか取材で尋ねると、「お金があるところならどこでも」と即答した。(参照:elpais.com

このような貧困の国が食料支援で1億8330万ユーロ(216億円)に相当する予算を充てているのに対し、軍事費は3億3270万ユーロ(393億円)相当を用意しているというのである。(参照:lavanguardia.com

グアテマラの問題は国の運営の85%が民間事業によるものだということ。しかも、それが8つのファミリーによって寡占化された状態になっているということだ。ということで、国家の発展が8つのファミリーの利害に依存しており、貧困層のための改革が出来ない状態にある。92%の小規模な生産業者が利用できる土地は全体の22%しかないということ。逆に8%の富裕層の生産業者が残り80%を占有しているということだ。貧困層が依存している収益率の低い農業に政府が投資しないというのが現状だ。

国全体の収入の40%を10%の富裕層が占めているという開発の遅れている国で良く見られる富の不平等がグアテマラでも観察されるのである。(参照:nomada.gt

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑