アメリカはなぜ政策金利を緊急利下げをおこなったのか?

2020年03月04日 14:00

もしかしたらアメリカが0.5%の金利引き下げを3月17-18日の定例のFOMCを待たずして行うのではないかという噂は私も耳にしていましたが、NY時間3日の午前10時前の発表という異例の対応にやや困惑しています。市場もしばらく方向性を探る展開になるかと思います。深読みすればそれだけ悪くなる対策と解されるので株価にはマイナスの刺激になるかもしれません。(事実、そうなってしまいました。)

FRB公式ツイッターより:編集部

パウエル議長が「2020年の利下げの予定はない」と発表した際に私は「そんな1年も先のこと、なぜ断言出来るのだろうか」と疑念を呈したのを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。今回の新型肺炎は想定外の事態だったと切り返すのでしょうが、世の中、常に想定と違うことは起き続けているわけでそれが大きいか小さいかの違いだけなのです。その「波動」があることを重視せず、過去の経済の指標だけで判断したFRBとしてはあまりにもお粗末だったのであります。

では今回の緊急利下げでありますが、市場を含め「なんでだろう」という疑心暗鬼を生んでいます。しかも0.25%ではなく0.5%という踏み込んだ利下げがよりによってダウが史上最高の上げ幅を記録したその翌日に行うのは論理的に理解にしにくいものがあったのです。

当然議論の中には「政治的配慮だろう」という声もありますが、一部コメントはそれを完全否定しています。Preventive(予防的措置)であるというわけです。

何を心配しているのか、といえば新型肺炎がアメリカ内でどのように広まっているのか、実態がつかめない点があるのでしょう。ご承知の通りこの冬、アメリカではインフルエンザが大流行し、CDC(疾病予防管理センター)発表では患者数は2600万人、死者は1万4000人とされています。

なぜこんなになってしまったかといえばアメリカの医療費は異様に高く保険を持っていない人は医者にかかるのを憚れる状況が流行を広めたこと、およびインフルと新型肺炎の区別がつきにくかったこともあるでしょう。(ただし、最新のCDCの情報ではインフル患者は急速に収まりつつあります。)

一方、ここにきてシアトル地区では介護施設での集団感染の疑いなどで6人死亡し様々な緊急対策が取りざたされています。学校を休みにしたシアトル、ポートランド、ロードアイランド州のほか、非常事態宣言がワシントン州とフロリダ州に出ています。つまり、アメリカでも嫌な予感がしたのでしょう。もしも中国や日本のようになったらどうなるのか、であります。経済の停滞や後退が懸念される事態となれば一歩踏み込んで対策を打つというのが金融当局として妥当な判断ではないかというわけです。

個人的には、新型肺炎対策と利下げが必ずしもベストマッチではない気がしています。誰も外に出たくない、集会やイベントは休止が相次ぐ中、いくら金利が下がってもどうにもならないというひねくれた見方もできるからです。

昨日、日本の株価は下げ、終値ベースでは最安値を更新してしまいました。理由はG7の共同声明は空手形のようなもの、と解されたからであります。「景気下振れ回避」と言ったって利下げできるG7はアメリカとカナダだけであります。日本と欧州は対策の打ちようがないため、「具体案がないじゃないか」と失望を誘ったのであります。

G7を見ているとリーダーシップを取れる人(国)がいないのも明白であります。本来であればパウエル議長がもっとしっかりして世界をリードすべきなのですが、残念ながらそうならない現実を考えると今後の経済の回復力の出来不出来は当局の能力が厳しく問われるということになりそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年3月4日の記事より転載させていただきました。

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