新型肺炎と東京オリンピック

世の中、総自粛ムードが漂っています。便利だった日常生活がこれだけ制限されると我々はいかに便利な時代に生きているか、実感することになるでしょう。

安倍首相の公立小中高校の3月2日からの一斉休校のお願いに対しては賛否両論、熱く論じられています。個人的には小池百合子都知事が「もっと早く発表してもよかったんじゃない」とコメントしたことに同意しています。

日本(特に役所)は何か起きないと動かない「前例主義」が主導しており、「予防的(Preventive)」という発想はあまりありません。今回の賛否の議論の中でも「うちの県は誰も発症者がいないじゃないか」と食って掛かる知事も見受けられますが、そういうものではないのです。災いはどこからやってくるかわからないのです。もちろん、来ないことに越したことはありませんが、政府とはあらゆるものを天秤にかけた場合、国民の安全が第一だというスタンスであります。〇〇県は発症者が多いからここだけ重点的に行おうでは江戸時代の関所があるわけではないので今の時代、コントロールが不可能なのです。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

 

今回の施策の背景には先日申し上げたように東京オリンピックの開催が頭にあると思います。そして開催国の日本がまずはこの問題をきれいにすることが当然の義務という強い姿勢から日本にしては珍しく「予防的対策」を取ったのであります。国会のバトルを聞いていると野党の質問者は本気で質問しているのか、精神状態を疑いたくなる人もいます。

わかりやすく言えば「津波が来そうです、皆さん避難してください」と政府が言っているのに「俺んところは大丈夫なはずなのになんで避難しなきゃいけないんだ」と食って掛かるようなものです。政府は国民の命が第一なのを野党はお忘れになったのでしょうか?野党が政権を取ったら国民は生きていける自信がありますか?

ところでその東京オリンピックですが、私は思った以上に懐疑的になりつつあります。なぜか、といえばオリンピックは世界中の人が集まるという意味で世界の新型肺炎が収まっていることが前提になるからです。日本ではなく世界であります。

オリンピック参加国には中国、韓国、イラン、イタリアのみならず北朝鮮もやってきます。北朝鮮についてはどうやら事実を隠していたことがばれ始めているようで一定数の死亡者がいるようでそこから逆算すると感染者は4ケタ台にあると推定できます。あの国がどのような対策を施しているのか全く分からないのでコメントしようがないのですが、一部の国家については数に表れるのは「氷山の一角」である可能性は否定できません。

今、その新型肺炎問題は北米でも一周遅れで大きな話題になりつつあります。本日は感染者がいる大型クルーズ船が寄港するカリフォルニア州で緊急事態宣言をしたほか、カナダの報道も日増しに肺炎関連のニュースが増えてきており、株式市場も大きく揺れ動いています。

相当数の選手団、観客が一堂に会するオリンピック、そのうち、屋内競技も多数ある中で本当に開催できるのか、といえば3月に入ってしまった今、世界でこれ以上拡大しないことを祈るしかないと思っています。

何かあった時の防疫対応はオリンピック期間中、ぎゅう詰めになるので対応がしにくくなるでしょう。船上ホテルもいまや誰も使いたくないと思います。ただ、予定通り開催しても、状況次第ではキャンセル続出になる気もしています。防疫やいざという時の対応という危機管理がしっかり準備しているのか、政府やオリンピック担当相にも聞いてみたいものです。

SARSの終息宣言は7月でした。今回は終息宣言を待っていては間に合いません。遅くても来月に世界レベルで終息と言えるような状態になることがキーではないかと思います。その間、日本はあらゆるケースシナリオについて対応できるだけの準備ができるか、ここにかかっています。教科書はどこにもありません。IOCもお手上げでしょう。

その中で開催を強行するならば完璧な準備を施せるかが開催国の手腕の見せ所であります。このような危機管理マニュアルは役人では作れないかもしれません。頭を下げてでも民間企業の専門家に手伝ってもらい、準備すべきではないでしょうか?

まさにフィンガークロス(うまくいきますように)だと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年3月6日の記事より転載させていただきました。