日本の入国制限に対抗:韓国政府は事態の深刻さを理解せず

2020年03月08日 11:30

音楽の都ウィーンには日本から多くの音楽学生が留学し、「モーツァルトやシューベルトが活躍した本場の音楽を」という気概で学んでいるが、韓国からも数では日本人より多くの音楽学生がウィーンで学んでいる。

外相就任前に駐オーストリア大使を務めた潘基文前国連事務総長は、「オーストリアは私の第2の故郷です」とよく言うが、これは同氏の外交官として身についたリップサービスだけではないだろう。韓国人はオーストリア、特にウィーンが好きなのだ。

韓国、イタリア、イラン3国・地域に対して入国制限を表明するクルツ首相(中央)(2020年3月6日、オーストリア連邦内務省公式サイトから)

ところで、新型コロナウイルスが中国から欧州全土に拡大し、イタリアでは中国に次いで多くの感染者が出、ローマは緊急体制下にある。その感染国イタリアと国境を接しているオーストリアでも2月ごろから感染者が増加し、7日正午時点で74人の感染者が見つかっている。

そこでオーストリアではクルツ政権が6日夜、欧州ではイタリア北部のボローニャとミラノ、そしてイラン、韓国への直行便を「来週から2週間、完全に停止する」と発表した。新型肺炎で直行便停止の対象国はアジアでは韓国一国だけだ。

クルツ首相は、「国民の健康を脅かす新型コロナウイルスの感染国からの入国者に対しては厳格な規則を適応する。具体的には、それらの国からの入国者は英語か独語で書かれた公の健康証明書を提示しなければならない。なぜならば、直行便ではなくても第3国経由で入国する人がいるからだ」と説明している。

オーストリアのアンショ―バー保健相は、「国境を閉鎖し、入国禁止措置するのとは違う。新型肺炎の感染の危険性を抑えることが狙いだ」と述べ、感染国に挙げられた国に対して理解を求めている。ブリュッセルで緊急開催された欧州連合(EU)保健相会合に参加したアンショーバー保健相によると、「会合では感染者が急増する韓国とイランに対して懸念を表明する国が多かった」という。オーストリア政府の決定に対し、韓国側から今のところ批判や不満の声は聞こえない(「オーストリアと韓国は相性がいい!」2019年10月25日参考)。

日本の冨田大使(左)に抗議する康京和外相=KBSニュースより

一方、日本政府が韓国からの入国者に対し、指定の隔離場所で2週間、待機を要請し、韓国人への査証免除制度の一時停止などの厳格な入国制限を決定したことに対し、韓国の康京和外相は6日、冨田浩司駐韓日本大使を外交部に呼び出し、強い遺憾を表明したばかりか、「日本政府の韓国人への入国制限措置に対し、韓国側も同様の措置を9日付で実施する」と発表したというニュースが入ってきた。

康京和外相の発言を聞いた時、当方は一瞬、「韓国政府は新型コロナウイルス対策を日韓の歴史問題と勘違いしているのではないか」と思ったほどだ。韓国の若者たちが日本企業に就職したり、勉強をしている数は多いから、入国制限の厳格化は大きなダメージだが、新型肺炎対策は歴史問題でも就業問題でもない。純粋な感染対策だ。

国民の安全を第一に重視するイスラエルはオーストリア人の入国を禁止したが、オーストリア政府がイスラエルの決定に抗議して、「わが国の国民の入国をなぜ禁止するか」といった類の文句や苦情を吐露したとは聞かない。他国の新型肺炎対策措置に批判や文句を表明した国は、中国共産党政権を除けば、当方が知っている限りでは、韓国政府だけだ。

韓国政府は本気で新型肺炎対策を考えているのか、と首を傾げたくなる。国民の安全を考え、入国制限や渡航禁止が必要と判断すれば、それを実行するのは政府の仕事だ。日本政府が韓国民の入国制限に乗り出したことに対し、韓国政府が文句を言ったり、撤回を要求などはできない。

クルツ政権は韓国人の入国がオーストリア国民の健康を脅かすと判断し、2週間という期間、厳重な入国制限に乗り出したが、韓国への敵対行為とか、憎悪といった感情に基づくものではないことは明らかだ。

オーストリアと韓国両国間の貿易は年々、拡大している。韓国人への入国制限はオーストリア側にとっても経済的ダメージがある。しかし、現時点では新型肺炎対策を優先しなければならないための、やむを得ない決定だ。

同じことが日本政府にもいえるだろう。日韓両国の経済関係は深い。その国の関係者の入国が制限されたり、禁止されれば、日本側にとってもマイナスだが、現時点では仕方がない、という判断が働いたはずだ。韓国では7日時点で7041人の感染者が見つかっている。死者は48人だ。

韓国大統領府Facebook

日本政府の決定に抗議して対抗措置を発表した韓国政府は果たして一国を統治する政府と呼ぶに値するだろうか。入試試験で設問を正しく理解できないために、間違った答えを書いた受験生のようではないか。問題が何かを、まず正しく理解できなければ、どんな長い答えを書いたとしても、その受験生は落第するだろう。同じことが韓国政府にも言える。

韓国中央日報電子版は7日、5日のCNN情報として、「日本の感染者数は政府公表より10倍ほどの可能性がある」という憶測記事を報道した。韓国では政府やメディアは日本との歴史問題では常に「米国では……」と報じて、日本を批判してきた。新型肺炎問題でも「日本こそ感染国」というイメージ操作に乗り出すために、CNN報道を利用しているわけだ。

繰り返すが、新型コロナウイルス対策は歴史問題でも政治問題でもない。日本を批判するために常套手段を駆使したり、ロビー活動に精を出している時ではないのだ。韓国という国が新型肺炎で危機に直面しているのだ。韓国政府は厳しい現実から目を逸らすべきではない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年3月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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