移動禁止のイタリアに緊急インタビュー

長谷川 良

イタリア放送協会(RAI)サイトより:編集部

中国武漢発の新型コロナウイルスは世界100カ国以上に感染を広げ、世界的大流行の兆候を深めてきた。欧州ではイタリアが新型肺炎の最大感染国となってきたことを受け、コンテ政権は8日、イタリア最大の経済地帯、同国北部ロンバルディア州(ミラノ市を含む)やベネト州など14自治体(人口1600万人)の国民を隔離し、地域間の移動を禁止する厳格な措置を発表。

そして10日には、感染が南部にも広がってきたことを受け、同措置を同国全土に適用することを決定した。同措置は4月3日まで実施される。隔離措置に反した場合、最長3カ月の禁錮刑の対象となるという。

イタリア保健省によると、10日時点で同国の感染者数は1万0149人、死者は631人。感染規模が抑制できない場合、コンテ政権はさらに強硬対策を検討せざるを得ないという。

ベルガモ市で会社経営するカルロ・ツォナト氏

そこでイタリアの最大感染地、同国北部ロンバルディア州のベルガモ市(Bergamo)で会社「ナトランド(NATURANDO)」を経営するカルロ・ツォナト氏(67)にメールを通じて緊急インタビューした。「移動の自由」制限下の市民の声を紹介する。

(ベルガモ市で10日夜現在=現地時間、感染確認者は1472人。同市の医療収容能力は崩壊寸前だ)。

――ツォナト氏はベルガモ市で健康医療関連食品などを販売する会社を経営しているが、コンテ政府は国民に外出を控え、自宅に留まるように要請する移動の自由を制限する特別措置を出したが、あなたの日常生活はどうか。

先週日曜日からロンバルディア州と他の14自治体は自由な移動を規制する制限エリアに指定された。10日朝、その制限はイタリア全土に拡大されたばかりだ。会社に働きに行く目的や食糧買い出しや必要な医薬品を購入しなければならない時だけは外出できる。

路上で警察官に止められて質問を受けたならば、なぜ外出しているのかを説明する必要が出てくる。警察官は市民に質問できる特別権限を有しているからだ。その意味で、市民は自由には動くことができない。政府は今、テレビやラジオを通じて国民に大規模な意思疎通キャンペーンを組織化しているところだ。

――コンテ政府の今回の決定をどのように受け取っているか。厳格すぎるか、それとも必要な政策か。あなたの隣人はどのように反応しているか。

私個人としては、政府の決定は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎ、国民の健康を守るという意味で必要な対応と受け取っている。明らかな点は、今回の状況は政府や国民にとって初体験ということだ。だから、感染拡大当初、適切な対応を素早く実行することは容易ではない。

政府や機関、医療専門家、メディアの間で新型肺炎への対応で一体化や共通認識は十分ではなかった。そのため、国民に多くの混乱が生じ、時にはコントロールを失い、カオス状況をもたらしてきたわけだ。多くの国民は合理的な理由もなくスーパーで食糧やトイレットペーパーなどを買い漁った。

――市場ではマスクやトイレットペーパー、消毒液などの不足がみられるのか。

健康関連の商品不足は深刻だ。マスクや消毒液を見つけるのは非常に難しい。定期的にそれらの商品を店舗で購入することは不可能な状況だ。

――政府の移動の制限の決定は4月3日までだが、その期限が延長された場合、国民はどのように受け取ると予想するか

全ての国民は移動の制限期限が延期されないことを願っている。もし延長せざる得ない場合、政府は経済的に大きな負担を負う人々へ支援を提供しなければならない。それを実行せずに制限期間を延期した場合、国民の反応は厳しくなるだろう。

――映画や劇場は閉鎖され、外食もせずに家に留まり続けることは、人との交流や対話を重視するイタリア人にとって厳しくないか。国民は自宅でどのように時間を使うのか。新型コロナウイルスの感染でイタリア人のライフスタイルは変わると思うか。

私の場合、自宅でもコンピューターや電話で仕事ができる。それらは元々私の仕事だからだ。しかし、人と会うことが出来ず、特別な集いや会議をマネージできないため、それらの仕事や会合を延期せざるを得なくなった場合、どのような事態が生じるか、正確には予想できない。

私たちは多くの自由な時間を得るだろう。だから、それをどのように利用し、実行できなかった事をカバーするかなどを考えておかなければならない。今まで持てなかった本を読む時間や、内省の時間を多く持つかもしれない。いずれにしても、私たちのライフスタイルは大きく変わるだろう。

現在のような状況は困難だか、有効に利用できることを願っている。心の声に傾聴しながら、環境に優しい(eco-sustainable way)ライフスタイルを目指して人生で何が優先課題かを再度明確にしていきたい。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年3月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。