トランプ、バッハ発言で急展開!東京五輪は延期か中止か瀬戸際?

2020年03月14日 06:01

おとといの拙稿で、東京五輪組織委の大物理事、高橋治之氏がWSJのインタビューに唐突に応じて大会の1〜2年延期論を私見としてぶち上げ、それを森喜朗会長が憮然と打ち消したことについて額面通りに受け取れないと指摘した矢先だった。きのう13日は、世界的VIPの発言が相次いで伝えられ、早くも事態が動いた。

トランプ、バッハが延期に相次いで言及

まずはトランプ大統領が「無観客など想像できない。1年間延期したほうがよいかもしれない」と発言(参照:NHKニュース)。日本時間では13日未明に入っていたが、メディア各社は瞬く間に速報した。

NHKニュースより

そして朝になってIOCのバッハ会長もドイツ公共放送局の取材に対して「中止や延期はWHO(世界保健機関)の勧告に従う」と発言したことが伝えられた(参照:ANNニュース)。バッハ会長はコロナウイルスの感染拡大で東京五輪が中止や延期になる可能性について、メディア側の質問にもスルーし続けてきたので、あきらかにフェーズが異なってきたと感じさせる。

ドイツ公共放送(3/12)より

さらに、きのう(3月13日)は西日本新聞が「官邸、極秘に五輪中止シミュレーション」と踏み込んだ記事を掲載した。記事中、政府関係者をソースとして「五輪延期の可否の検討や、中止時の損失を試算する作業」がすでに行われているとしている。このシミュレーションがどれほどの規模なのか、実相は不明だが、官邸で極秘の“撤退戦戦略”チームが結成されているとすれば、国内外のここまでの動きは、一つの流れの一環と見るべきではないだろうか。

中止なら日本だけが巨額損失の事態

このまま大会の中止または延期へと流れが止まらないのであれば、日本としてはまずこの撤退戦の「最終防衛ライン」は中止の前に置いて最悪でも延期に踏みとどまらないといけない。

気づいている人は多くないが、仮に中止になった場合、東京都や組織委は損失をIOCに請求することを放棄する契約を締結している(東京都HP「開催都市契約2020」P.73)。それだけではない。英BBCによると、IOCは大会中止になっても2000万ポンド(約26億円)の保険をかけており、数億ポンド(数百億円)規模の保険金でカバーする。

日本側もそれなりに保険をかけているはずだが、それでも過去7年かけて突っ込んできた巨額の投資を取り戻すのは不可能だろう。つまりIOCは損失は大きくない一方で、日本側は立ち直れないほどの損害を抱え込むことになる。

なので、日本としてはベストシナリオは予定通りの開催だが、それが難しいのであれば次善のシナリオは年内、あるいは1〜2年後の延期になんとしてもソフトランディングさせることが至上命題となる。IOCの有力委員と強力なコネがある高橋理事がここにきてWSJに顔出しで出てきたのは、まさに世界中のIOC委員とスポンサーに対するアピールの一環として極めて重要な意味を帯びていたのではないだろうか。

日本にとっても電通にとっても死活問題

電通本社(d’n’c/flickr)

少なくとも「下交渉」は始まっていて、中止ではなく延期という方向性について、バッハ会長、あるいは有力委員たちの「脈」を探り始めていてもおかしくはない。それに高橋氏が背負っているのは「国益」だけではない。

万一、中止となれば、日本国内のオリンピック関連スポンサーの損失問題となり、高橋氏の出身母体の電通の経営を直撃する。電通は先ごろ2001年の上場以来、初めて赤字に転落しており、中核ビジネスの五輪で巨額の損失が追い討ちするのはなんとしても避けたい。

政府レベルでも中止ではなく延期に向けた国際的な世論形成に布石を打ち始めてもいい頃だ。そう考えると、トランプ大統領の唐突な延期論は、いつものつかみどころのなさから気まぐれに発言した可能性も否定できないが、しかし、それなら中止ではなくなぜ延期だったのだろうか。

やはり安倍首相がトランプ大統領に頼み込んでいたとしてもおかしくない。頼み込んでないなら、ここでこそ4年近く築いてきた親密な関係性を活かすべき局面だ。

ここまで書いてきたことは筆者の推測に過ぎないが、状況証拠はだいぶ揃ってきたように思う。

「延期」世界的特ダネ競争に唯一勝てそうな日本メディア

なお余談ながら、世界各国のメディアの特ダネ合戦は、どの段階で東京五輪延期(中止)のシナリオを打てるかどうかになってきつつある。高橋理事を引っ張り出したWSJは、カルロス・ゴーン被告の日本国外逃亡劇の経緯も速報。アメリカはIOCに経済的影響力を持つ放映権ビジネスの本場ということもあり、この取材レースの本命であろう。

対抗馬もロイターやAPあたりの欧米勢になるのであろうが、日本から読売新聞が大穴になる可能性も指摘しておきたい。別に私の古巣だから言うのではない。日本メディアで稀有な存在だが、IOCの有力委員に長年食い込み、過去にも五輪関連のスクープで世界中のメディアを追いかけさせた大ベテランの女性記者がいる。

延期か中止か、はたまた予定どおり開催か、開催できても無観客か…めまぐるしい情報戦がここから繰り広げられていく中で、メディア各社の動きからも目が離せない。

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長

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