ベネズエラの石油闇販売ルートを断て!米国がロシア企業に制裁

2020年03月16日 06:00

あらゆる手段を使って大統領のポストを維持し権力にしがみついているベネズエラのマドゥロ大統領。その彼を支えているのがロシアとキューバだ。キューバはベネズエラの軍事組織、特に諜報網をコントロールし、ロシアはベネズエラが産出する原油と金の販売を米国の制裁から逃れる形で仲介役として密かに販売している。マドゥロが必要な資金の入手を手伝っているのだ。また、ロシアは資金の投入も行っている。

プーチン、マドゥロ両大統領(ロシア大統領府)

ロシアにとってラテンアメリカの地政学上の拠点となっているのはニカラグア、キューバ、そしてベネズエラである。だから、プーチン大統領はベネズエラをロシアの影響圏の外に置くことは絶対にさせない。そのためにはマドゥロがロシアの役に立たなくなれば、その後任を見つけて大統領のポストに就かせるはずだ。その候補者は制憲議会の議長でチャベス前大統領に忠誠を誓っていた元軍人のディオスダド・カベーリョだ。米国も同じくこの人物を味方につけようとしている。昨年のグアイドーがリーダーとなって起こそうとした政変を実質潰したのは彼だ。

皮肉にも、このロシアの意向に加担しているのがスペインのサパテロ元首相だ。彼はこれまで39回ベネズエラを訪問して民主的総選挙の実施を実現させようとしてマドゥロの説得に努めて来たが、ミイラ取りがミイラにさせられた感じだ。そのサパテロの意向に同調した外交を展開しているのが、スペインのサンチェス首相だ。

ロスネフチ社章(Wikipedia)

米国はマドゥロ政権の資金源を断つ為にこれまで制裁に次ぐ制裁を課して来た。だが、遂にマドゥロの一番重要な資金源となっているベネズエラの石油を闇ルートに乗せて販売の仲介役をやっているロシアの石油会社ロスネフチの商社ロスネフチ・トレーディングとその最高経営責任者ディディエ・カシミロに先月制裁を課した。

ロスネフチ・トレーディングは2011年に設立された会社で、スイスのジュネーブに本社を構えている。ロスネフチの外国での販売、流通、輸送などを担当して商社機能を果たしている企業だ。(参照:diariolasamericas.com

ロスネフチ・トレーディングはベネズエラ国営石油会社(PDVSA)が採油する原油の凡そ3分の2をパナマでの事務処理を経由してインドや中国に販売して来た。

最近の同社による販売先で判明しているものを以下に列挙すると。

  • 2019年8月 200万バレルを積荷として受け入れる船会社を見つけて発送。この仕向地は不明。
  • 2019年9月 16度のメレイ原油100万バレルをアジア向けに発送。
  • 2019年9月から12月 5500万バレルを発送。目的地は不明。
  • 2020年1月 16度のメレイ原油200万バレルを西アフリカに発送。

(参照:diariolasamericas.com

現在PDVSAは日量70万バレル採油しているが、2008年には320万バレル採油していた。採油の為の設備投資の不足が採油量が下降している一番の要因である。採油量は今後さらに減少して行く模様で日量60万バレルまで落ちると予測されている。(参照:lainformacion.cominfobae.com

ロシアはベネズエラに2006年から現在まで150億ユーロ(1兆7700億円)を投入し、その返済をベネズエラは資金不足から原油または金で行って来た。2017年の時点での負債額40億ユーロ(4720億円)の返済は半年毎に10年かけて分割返済することでロシアと合意した。2019年の中間時点で10億ユーロ(1180億円)まで負債を減らすまでになっている。2020年末までには返済完了を計画しているという。(参照:abc.es

さらに、ロシアは採油への投資として50億ユーロ(5900億円)と金とダイヤモンドの採掘に10億ユーロ(1180億円)を投入する意向を表明している。ロシアはこのようにしてマドゥロが今後もロシアに依存せざるを得なくさせている。しかも、ロシアはベネズエラに武器を販売しており、ロシアが損失することはない。2009-2013年のベネズエラ向けの武器の輸出はロシアの全武器輸出の5%を占めていたが、現在は1%以下となっている。(参照:bbc.com

一方のマドゥロの最近はPDVSAが所有している採油地区を外国の企業に売却したい意向を表明するようになっている。自国では資金難のために希望するだけの採油ができなくなっているからだ。しかし、制裁下にあるベネズエラに投資をするのは危険で、スペインの石油会社レプソル(Repsol)も寧ろ、ベネズエラでの採油事業を縮小する方向にある。また、米国もレプソルに対してベネズエラでの事業の縮小を要請している。

米国は今回制裁を課したロスネフチ・トレーディングと取引関係を持っている企業に対して90日以内に同社とのベネズエラに関係した取引は中断するように要請している。(参照:abc.es

今回の制裁の発表から2時間でロスネフチの株は35億ドル(3780億円)ほど下落した。しかし、制裁による効果は常に疑問視されている。仮にトランプ政権が望んでいるような成果が出た場合は、マドゥロ政権は相当に苦しい事態に追い込まれることになるのは必至だ。(参照:infobae.com

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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