姥捨て山チックな英国式新型コロナ対策にも一理

イギリスのジョンソン首相がなかなか過激な新型コロナウイルスが注目を浴びている。なにしろいきなり、「自分は英国民に対して正直に言わなければならない。より多くの家族が,彼らの愛する人たちを寿命に先立って失うことになる」ときた。日本が武士の国ならイギリスは騎士の国だ。それならではの物言いである。

集団免疫の方針を発表するジョンソン首相(Number 10/flickr)

BBCによればイギリスは数週間以内に、70歳以上の高齢者や持病のある人に数か月の間、外出を控え、他の家族との接触も控えるように要請するようだ。そのかわりに、学校は閉めないらしいし、イベント開催の自粛にも消極的だ。

実は、これはこれで筋の通った対応だ。つまり、若い人はかなりの割合で新型コロナウイルスに感染して免疫をつけてもらう。年寄りは引き籠もってもらって感染しないように徹底的に自己防衛してもらうが、不幸にして感染した場合にはかなりの割合が死んでも仕方ないという割り切った政策だ。

これまでの例からいっても、本当にその病気が怖くなくなるのは、国民の多く感染して免疫を持ったときだ。ただ、それが増えるのがゆっくりだと、重症者は手厚い看護ができるし、良く効く薬も開発されるだろうから、そんなたくさんの人は死なない。

ただ、そうなるには、時間がかかって、経済活動も長く沈滞することになる。そこで、罹患しても滅多に死なない若い人や子供には、そこそこ罹ってもらって早く決着を付けてしまおうということらしい。

だから、学校が開いていて適当に罹ってもらうのはむしろ悪い話でもない。ただし、条件は、高齢者や病気持ちが数か月間、ほとんど外出せずに大人しくしてくれていることらしい。

一応、論理が完結しているという意味では真っ当な話だ。ただ、良いことだけではないので、愚かな有識者が学校を閉めないというところだけ切り取って鬼の首をとったように非難するのは無責任だ。日本人が感染を拡大させて免疫を付けようというような対策を支持するはずあるまい。

手洗いを呼びかけるロンドン市内のバス停広告(duncan c/flickr)

そのほか、活動自粛が長く続くと、若い人は我慢できないだろうし、経済にも悪いから、もう少し流行が拡がってから勝負を賭けた方がいいという判断もあるようで、そのあたりは、日本政府の対応とある意味では共通だ。

これからジョンソン首相がどの段階でどういう決断をするか知らないが、安倍首相があまりあわてて、渡航制限や学校閉鎖をするのが良かったとは私も思っていない。

高齢者を、ともかく閉じ込めようというのは、ある意味で正しい。フランスなどでも、学校を休みにする理屈として、子供は罹っても大丈夫なのだが、逆にそれだけに家に戻って高齢者などに感染させる恐れがあるので閉校するという理屈を使っていた。ともかく、お母さんが働きに行くから、お祖父さんお祖母さんに面倒見てもらうのは、年齢によっては困るということのようだ。

感染症への対処はいろんなやり方があるし、どれがいいとは単純でない。国民性によっても違うだろう。ただ、確実に言えることは医療崩壊こそいちばん怖い。それは国全体と言うよりは地域などで起きる。

韓国などについていえば、大邱でそれが起きた。逆に大邱の悲劇を別にすれば韓国の対策はそこそこうまくいっているのだが、片端から検査はしないという日本式のほうが地域的破綻などを起こさないのは間違いない。

その点、イギリスではどういう流れになるかと言えば、主治医が決まってるので全てその指示に従うのであり、診断やアドバイスは電話でして風邪なら自宅隔離を命じられる。そして、10日間は様子を見て、そのとき、部屋はカーペットでない部屋であることが必要だ。また、トイレでも他の人と合わないようにし、部屋は十分に換気する。もちろん、人とは会わない、外出もできない。

さらに、15年以上前から医療システムが変わっていた点も挙げられる。地域で全ての医療関係者にカルテが共有され、窓口も一本化され、医者の梯子はできなくなっている。

イギリス政府の発表については、いろいろ参考になると思うので、外務省の日本語訳をリンクしておく。全文ご覧いただくと良いと思う。

新型コロナウイルスに関するジョンソン英国首相の声明(外務省サイト)