企業倒産と雇用悪化を恐れる市場

市場には新型肺炎そのものを恐れる以上に各国や地方都市が独自に行っている各種閉鎖措置を恐れているように見えます。人の動きがフリーズしたことで企業が「生死」をさまよいつつあり、ショック死を織り込み始めたかもしれません。

閉鎖状態の米国では昼間も市街地が「もぬけの殻」に(米ワシントン州タコマ:Tom Collins/flickr=編集部)

ブルームバーグには「多くの航空会社が5月末までに破綻へ、新型コロナで-コンサル会社」とあります。オーストラリアのコンサル会社が発表したものでありますが、内容の精度はともかく、ないとは言えないシナリオかもしれません。経営的厚みのない格安系航空会社は既に実質的に破綻している可能性はあります。欧州の主要航空会社では運航は8-9割減便とされ、従業員のレイオフ、無休待機を含めた対策はほぼ世界中の航空会社で必須でしょう。

また、ホテルの稼働率もほぼ壊滅的になる可能性があります。多くのコンベンションが延期、中止となっています。ジュネーブオートショーも中止ですし、世界中の市民マラソン大会もほぼ消えました。人の移動を伴うことでビジネスや経済活動が行われていたことを考えればあまりにも恐ろしい状況であります。

レストランは欧州やアメリカの至る所で営業時間や運営などで大幅制限がかかり始めました。レストランビジネスは日銭商売でそれまで「そんなに儲けていたの?」という店ですら一夜にして暗転する業種です。比較的リーズナブルな価格帯の店にはまだ家族連れや少人数の友人同士が集まりやすいものの「高級」と称するところは全く客が入らないというところも増えています。

日本では民泊関係の投資家たちが悲鳴を上げています。彼らは「上澄みビジネス」と称するものでホテルが満室であったり、最近、どこも取り入れている「ダイナミックプライシングシステム」で価格が異様に跳ねたときなどの受け皿的なビジネスとして成り立っていたのですが、ホテルそのものの稼働率が低迷し、価格も安ければわざわざ民泊する必要がなくなります。日本からは民泊用にいくつも買った不動産を持ちきれず、全部手放したという話も聞こえてきました。

これらを見るとサービス業の打撃が最も大きく、モノへの需要はさほど落ちない傾向が出てくるとみています。経営のスタンスはサービス事業重視のトレンドでしたので思った以上に厳しい試練となる業種も多いかもしれません。

リーマンショックの時はGMやクライスラーといった企業が倒産しました。しかし、アメリカの倒産はむしろ足かせがなくなって再建しやすいというメリットがあります。アメリカの航空会社は倒産して再建するのが当たり前となっている点からすれば私は衝撃度は思ったほどではないとみています。

むしろ、雇用環境が激変する公算は高いと思います。アメリカの雇用統計は3月、4月分あたりからどのような数字が出てくるかです。利下げはその意味で予防的措置にはなりますが、即効性はありません。また、ガソリン価格が崩落したこともあり、物価が急速に下がっている公算があります。インフレ率がどこまで落ちてしまったかも注目になります。

こういう時は落ち着きを取り戻しているアジアから早急な経済回復、復興を図るきっかけを探すことが重要かと思います。その点、日本は厳しい管理体制を敷きながらも公立学校が一部再開したように少しずつ、人の流動性が出てきていることは注目です。海外からの人の流入は制限しながらも国内については屋外のアクティビティは必要以上に禁止しないなど何らかのステップは考えた方がよいのかもしれません。

株価については日本は3月末決算の売りが一巡していることと新型肺炎はアジアが落ち着き始めているので回復してくるとみています。アメリカがくしゃみをしても日本が大丈夫なのはアメリカが周回遅れだからであります。

社会は時間との戦いの真っ只中にいるような気がします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年3月17日の記事より転載させていただきました。