新型コロナウイルス対応に見る政治の決断

2020年03月18日 14:00

報道によると、与野党の幹事長・書記局長は、17日、国会内で会談し、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府と与野党が参加する協議会を設置することで合意したそうだ。

17日の与野党幹事長書記局長会談(立憲民主党サイトより:編集部)

東日本大震災の例を踏襲した形で、党派を超えて経済対策や拡大防止策を話し合う予定で、近く初会合を開く方向で、構成メンバーなどを詰めるとのこと。

1.政治家と官僚の違い

政治の世界というのは、常に国会議員本人又は所属する政党の支持を拡大する競争である。

官僚の世界は、特定の支持者ではなく全国民を相手に公益を追求するという意識で仕事をしており、この点においてずいぶんと政治家と官僚は違うと感じる。

言ってみれば、役所はどこまでも役所だが、政治は民間に近い。

そうした競争による切磋琢磨があることが、政策をよりよくしたり、国民に選択肢を提示することにつながるし、政府が暴走することを止める機能もある。各党が独自性を出して自分たちの意見を通そうと働きかけることは、とても重要なことである。

一方で、このような意思決定システムの中でものを決めて、何かを実行していくというのは、とても手間暇と時間がかかる。おそらく、日本の中で最も効率の悪い仕事だろう。

いまだに紙文化から脱却できないなど、民主主義の本質と全く関係のない、単なる旧態依然としたやり方が残っていることによる非効率は、今すぐにでも改めなければならないが、意思決定を慎重に行う必要があるという意味での本質的な非効率性は、民主主義の必要コストだろう。

2.緊急事態の意思決定

今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、国難といってもよい状況である。

国民の生命、健康、生活を守らなければならず、スピード感も極めて重要である。このため、政府のリソース投入について、意思決定を丁寧にするための「ご説明」から、対策そのものに極力集中させることが必要である。 

これまで、政府の会議、国会での連日の審議に加えて、与党各党の会議、野党各党の会議と、政府が説明し、議論をする場所がものすごく細分化されていた。政党の会議以外にも国会議員1人ひとりの問合せも次から次へと来るので、議員会館に何度もかけつける。

その結果、対策を考える余裕がどんどんなくなっていく。対応に当たっている人間の立場で見える景色は、国会対応や政党の会議の対応で連日徹夜しても対策そのものは1ミリも進まないという苦しいものだ。

官僚にとって、一番苦しいのは長時間労働そのものももちろんあるのだが、死ぬほど働いているのに、国民のための対策が進んでいかないことだ。強い無力感にさいなまれる。

3.合成の誤謬と政治の英断

不祥事事案のように、野党が役人をいじめようとしているわけではない。対応に当たっている職員が過酷な状況で踏ん張っていることについて、野党の国会議員も含めてねぎらいの言葉をかけている。 

むしろ、各党がそれぞれの立場で一生懸命仕事をしようとすればするほど官僚が国会議員への「ご説明」に時間がとられてしまい、した結果起こる合成の誤謬みたいなものと言えるだろう。

東日本大震災の時も、政府に説明を求め議論をしていることが、政府の対策の手を止めることになるので、与野党で話し合って国会審議もしばらく止めたし、検討の場も一元化した。国会にしろ各党の会議の場にせよ、常日頃から政策の中身を考えることよりも、説明や調整の手間が極めて大きいということは、官僚なら誰もが日々痛感していることである。

当時私も「国会って、危機の時はちゃんと対策進めるために審議を止めるんだ。これで対策に専念できる。」と思った。 そうした実績もあるので、国会や党の会議が政府の対策の動きを止めかねないということは、永田町でも霞ヶ関でも皆が分かっていることである。

各党にも色々な思惑や意見があったと思うが、与野党の利害を超えて、議論の場を一つにまとめたことは英断で、日本の政治も捨てたものではないと感じる。 

調整に当たった方々、決断を下した方々に心から敬意を表したい。

4.充実した議論と見える化

会議が一つに集約されたことは英断であるが、そのことで批判が許されないような雰囲気になっては非常に危険である。 自由闊達な議論は常に歓迎されるべきだし、その過程が国民から見えるということも重要である。 政府の情報公開や各党の主張が分かるような形での報道も期待したい。


編集部より:この記事は千正康裕氏のブログ「センショーの『元』官僚のお仕事と日常のブログ」2020年3月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
千正 康裕
株式会社千正組代表取締役、元厚生労働省

過去の記事

ページの先頭に戻る↑