広島平和式典デモ騒音問題、条例化へ一歩 & 広島市に“ひろトリ”の影?

広島市議会は予算特別委員会が設置され、令和2年度の当初予算案を審査しています。3月17日には、総務関係の質疑が行われました。

私も登壇し、①「平和記念式典」②「文化芸術振興」を主なテーマに予算案を質しました。平和記念式典に静謐な環境を取り戻すことは、広島市民のみならず、日本国民の皆様のためのものです。広島市は私とのやり取りで、静謐な環境、そして、日本の誇りを取り戻そうとする強い意志を示してくれました。

ところが、私の登壇中、市政担当記者が数人いたように記憶していますが、3月18日付朝刊にはまったく報じられていませんので、自らお知らせいたします。

答弁のポイントを列挙します。

騒音問題:広島市「条例制定視野」

まず、①「平和記念式典」に関する質疑です。アゴラでも再三、取り上げていただいていますが、8月6日の平和記念式典において、左派系のデモ団体による騒音問題が長年の懸案となっています。17日の予算特別委員会では、広島市は3月下旬にデモ団体と協議に臨むことを明らかにしました。

昨年12月下旬の初協議以来、2度目の話し合いとなります。前回の協議では、デモ団体側は、広島市が収集した音量データ(デモ時のシュプレヒコールや太鼓を打ち鳴らす音量)などを要求していました。デモ団体が対応策を練るための材料にするという理由でした。

昨年の平和式典当日。安倍首相の挨拶中に「アベ帰れ」のコールが(筆者撮影、官邸サイトより)

今回の協議では、デモ団体がどう応じるのかが焦点となります。広島市はこの協議以降もデモ団体と話し合いを重ねる構えですが、デモ団体が音量を下げない、静謐な環境づくりに協力しないなどの対応次第では、「引き続き条例制定も視野に入れた実効性のある対応を検討せざるを得ないと考えている」との答弁を得ました。

この答弁がまさにポイントとなります。実は、昨年12月下旬の協議以降、「広島市が条例制定断念」という趣旨の報道がポツポツと出ていました。どういう意図を持ったものかはご想像にお任せしますが、広島市は条例制定を視野に入れ続けていたことはこの答弁から分かります。これらの報道を打ち消す効果があるとともに、広島市が平和記念式典に静謐な環境を取り戻そうとする本気度が伝わってきました。ひとまず、3月下旬の協議を注視したいと思います。

「あいトレ」に酷似したイベントの動き?

さて、②「文化芸術振興」の質疑ですが、理解を深めやすくするため、まずは経緯や背景などを説明します。

広島市は、広島国際アニメーションフェスティバルという短編アニメーションの映画祭を1985年度から開催しています。今や「世界四大アニメーションフェスティバル」の一角を担うものですが、集客力の低迷やマンネリ感もあり、リニューアルも兼ねて、音楽とメディアを柱とした「総合文化芸術イベント」を創設する構想が出ました。

広島市議会予算特別委で質問する筆者

そして、令和2年度に同イベントの検討委員会を発足させて、イベントの基本計画を策定する案が出ました。検討委員会の活動費が令和2年度の当初予算案に計上されたため、予算特別委員会で審査されることになったのです。

ところが、市議会への説明に先行する形で1月5日、地元紙がこの件に関して報じました。その記事や見出しには、「芸術祭」「経済活性化」「産業創出」等の言葉が躍っていました。勘の良い方ならお分かりだと思いますが、これらは、「ひろしまトリエンナーレ」の名称や開催目的と酷似しているのです。

ただでさえ、「あいちトリエンナーレ」や「ひろしまトリエンナーレ」で敏感になっている時の報道ですので、心中穏やかではありませんでした。

そういった経緯や背景があり、3月17日の予算特別委員会で質疑に取り上げたのです。広島市は、「『総合文化芸術イベント』は、そうした(ひろしまトリエンナーレのような)現代アートの展覧会ではなく」と答弁し、ひろしまトリエンナーレとは一線を画す姿勢を明らかにしました。その根拠は、音楽分野はプロ楽団である広島交響楽団が中心となること、メディア分野は短編の他、映画化されるような作品群(商業ベースのもの)も想定していることにあります。

ひろしまトリエンナーレのプレイベントの一件は、実行委員会が実質的にイベントのすべてを握ってしまったことに一因があるといえます。広島市が構想する総合文化芸術イベントが同じ過ちを繰り返さないよう、来年度は検討委員会に引き続き注視して参ります。