ホリエモンがいれば十分?メディアに問われる質問力 --- 中田 智之

2020年03月22日 06:00

堀江貴文氏のYoutubeチャンネルが凄まじい成果をあげている。

先日既存メディアだけでなく外務省も接触できないカルロス・ゴーン氏と対談したのは記憶に新しい。

そして直近では新型コロナウイルスに関する最新の知見を、NIHという世界的な有名な医学研究機関に所属する博士研究員にインタビューし、非常に質の高い情報をもたらすという具合だ。

標題のとおり、テレビのコメンテーターが連日繰り返す出口のない問答にうんざりしていたわたしは、質の高い質問者と回答者が直接動画配信したほうがよほど公益に資すると感じた。

そこで今回は既存メディアが発信する「専門家」の言説と、何が違うのか分析したい。

1.質問力が高い

堀江氏の専門性はIT分野であるが、基礎的な科学知識が身についているのか、単に地頭の良さと評価すべきなのか、非常に質問がいい

たとえば「国民を安心させるために政府はどうすればよいですか」などといったフワッとした質問はしない。これには明確な回答がないので、専門家と言えども意味ある回答は不可能だ。

堀江氏の場合、専門家が回答しやすい形式に落とし込んだ質問ができていると感じた。その結果専門家も、自分の得意分野を十分に活かしたアウトプットできているように見えた。

ある程度の前提知識がある質の良い質問者によって、具体的かつさらにワンランク上の情報を専門家から引き出すことができるのだ。

2.専門家の選び方

これはツイッター医療アカウントなどから以前より指摘されているが、開業医などを感染症の専門家と称するのはもはや厳しい。

開業医は臨床治療の専門家であって、目の前の一人一人の患者を治す能力に疑いを差しはさむものではないが、必ずしも広域医療や公衆衛生に関する制作立案部分の専門家とは言い難い。

開業医の役割としては来院患者に対して、医学的な正確さというのは若干妥協しても、その患者が病気を受け入れ、治療に前向きになるようにコミュニケーションの中で導くことである。

開業医や現場臨床医というのは患者を安心させるために、はっきりわからないことも明言してしまいがちで、強く同意を求められれば同意しがちだ。これはその患者とのコミュニケーションが断絶することで治療中断となった場合に、さらに大きな医学上の問題が発生するのを防ぐために、ある程度必要なことではある。

しかしそれが番組の意向や、他のコメンテーターの誘導的な質問に迎合することに発揮され、それが「専門家の意見」として広く情報発信されるのは防ぐべきではないだろうか。

ときには分からないことを分からないというほうが真摯な態度であり、そのスタンスは学会発表や研究などのトレーニングを通じないと身につかない部分でもある。

もちろん「ほんとうの」専門家は忙しくてテレビにレギュラー出演などできないから、あくまで解説員的に国民に対しわかりやすい言葉選びができる開業医を選ぶのはありえるだろう。

しかし情報発信の基調の部分に関しては、「ほんとうの」専門家からもたらされる情報から大幅に逸脱しないよう配慮する必要はあるのではないかと考える。

まとめ

このように質の高い情報がYouTubeなどで発信され、人々が気軽にアクセスできるようになると、既存メディアの価値が問われることになる。

ワイドショーはほとんど専門性を持たないような一般人目線にまで、様々な情報を行きわたらせることができたという意味で、これまで世論形勢に大きな価値を持っていた。

しかし大衆迎合が過ぎ、問題提起という以上に問題そのものになってしまっている可能性もあるのではないか。

専門知識を理解できる質問力の高い記者が、本当に質の高い答えを返せる専門家を紹介して、質の高い情報を得る。それをしっかり軸としてもちながら、ワイドショーなどで一般人目線にダウンスケールした意見を幅広く発信する。

この二軸が必要なのではないかと考えている。

すでに現場の声などに関しても、YouTuberが主体にメディアを凌駕する発信をしている。

また、国会議員による専門家へのインタビューなどといった試みも始まっている。

既存メディアは資金力によるキャスティングの自由度という強みや、幅広い層に対する発信力という強みがある。

それらを活かし「YouTubeがあればテレビいらないよね」と言われないポジションというのをブラッシュアップしていってほしいと考えている。

中田 智之 歯学博士・歯周病認定医
ブログやアゴラで発信する執筆系歯医者。正しい医学知識の普及と医療デマの根絶を目指している。地域政党「あたらしい党」党員

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