新型コロナ、「PCR検査する派、しない派」の議論はもうやめませんか?

松村 むつみ

新型コロナウイルス肺炎に関して、「PCR検査する派」「しない派」の議論がまだおさまっていないように見える。少し前のTwitterでは、医師たちもが二派に分かれて議論する様子も見られ、「お前はする派、しない派のどちらなんだ」と、医師が尋ねられることすらあったようだ。

Hoang/flickr:編集部引用

しかし多くの医師は、一部では純粋に医学的な考察を離れてしまった議論を、どこか空回りしているような、本質的ではないことをずっときかされるような気持ちで眺めているのではないだろうか。

筆者も以前、ワイドショーが「全員にPCR検査を」と叫んでいたときに、ほかのメディアで、軽症でも全員検査は重症者に割くべき医療のリソースを奪う可能性について述べ(参照:現代ビジネス拙稿)、アゴラに寄稿した文章でも、検査対象は厳密にすることで、イタリアのような医療崩壊は避けるべきとの主張をした(リンクはこちら)。

基本的にこの主張は変わっていないのだが、「検査する派」「しない派」と、対立があるかのようにみせる議論は、本質から外れているように思う。多くの医師は、「無症状の人に検査をする必要は無いが、医師が診察して検査が必要と判断した人は、速やかに検査がなされなければならない」と考えている。

PCR検査は既に保険適用となり、医師の判断で検査をすることが可能になり、多くの地域では運用が改善されてきている。現在、地域によっても差があるが、全国で、「医師が検査が必要と判断し、検査が実際に行われた症例」の陽性率は5-6%程度であり、陰性でも感染している場合があるとはいえ、「巷に広く感染が広がっている状態」とはまだ言えない。検査体制をもっと充実させ、検査件数を増やすかどうかについては、地域によっても異なっており、クラスターが発生している愛知、大阪、兵庫などの地域では、検査体制の拡充がはかられるべきだろう。

一方、「検査拡充イコール医療崩壊」論も、長いことTwitterを賑わせているが、たしかに、ある条件下では、軽症患者や無症状患者が病院におしかけ、医療崩壊がおこる可能性がある。しかし、「検査を今よりも必要な分だけ拡充する」ことが、医療崩壊に直結する訳ではない。医療というのは、「ゼロか100か」の議論ではなく、必要なことを必要なだけ改善することが重要なのだ。

また、現在、患者が増えている地域では、指定病院のベッド数が足りなくなっており、自宅療養体制の確立も急務であり、家でどのように過ごすかだけではなく、いつから外出してもいいのか、仕事に復帰してもいいのか、おおよその目安が作られる必要もある。

現状、検査だけが問題になる段階ではもうなくなっており、他にも議論されなければならないことは増えている。

TwitterなどのSNSでは、文字数が少ないこともあり、どうしても対立が煽られてしまう。しかし、真に有意義な議論をして、コロナウイルス対策を前に進めるためには、一度冷静になって状況をも見つめ直すことが必要ではないだろうか。