バロンズ:大手米銀、健全性や株価で「今回は違う」展開か

2020年03月24日 06:00

バロンズ誌、今週はカバーにて新型コロナウイルスが全米で猛スピードで感染拡大し、ダウが最高値から35%も急落するなか、”第2の世界恐慌(Second Great Depression)”を回避すべくワシントンに対応を呼び掛けた。

米連邦公開市場委員会(FOMC)は既に3月3日と15日の2回の緊急利下げでゼロ金利政策へ回帰しただけではなく、7,000億ドルの量的緩和を発表。米議会は①83億ドルのウイルス対策向け追加予算、②約1,000億ドル相当の新型コロナウイルス対策向け経済救済法案――を成立させ、足元はトランプ政権が1,000ドル相当の小切手給付を含む1兆ドルの救済案を掲げ(注:22日に上院は手続き上の採決で必要な60票に届かず)、クドロー経済国家会議委員長は2兆ドルの救済案について言及し始めた。しかし、一連の政策が十分か定かではない。果たして何ができるのか、詳細は本誌をご覧下さい。

今週は名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリートではなく、フィーチャーからこちらをお届けします。

カバー写真:Chris Goldberg/Flickr

米大手銀、金融危機以来の初の重要な試練に直面―Big Banks Are Facing Their First Major Test Since the Financial Crisis.

米大手銀に、試練の時がやってきた。大手銀は金融危機以降、中小規模の銀行からシェアを奪い、資本を積み増し過去最高益を計上してきた。今、彼らは前例のない緊張にさらされている。銀行側は危機への準備対応につき十分と豪語するが、投資家は不良債権に呑み込まれずにいられるか、固唾を呑んで見守る状況だ。

銀行セクターの株価はそうした懸念を表すかのように急落中で、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴなど大手6行の株価は前週に平均で15%下落し、年初来で40%以上も落ち込む。経済がよろめく局面で直接影響を受ける業種なだけに、当然の帰結だろう。

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(作成:My Big Apple NY)

そもそも、銀行には数多くのリスクが忍び寄る。米政府が借り手支援に向け、銀行に利息免除や手数料免除、さらに債務支払い中止を命じないとも限らない。そうなれば、銀行の利益が脅かされること必至だ。

投資家にとって、景気後退入り局面で銀行セクターは回避すべき業種だで、特にどれほどのリセッションが直撃するか、どの程度続くか不透明な場合は要注意である。2008~09年当時は住宅市場に集中したが、足元の危機は全てのセクターで一気に悪影響が及びうる。

多くの投資家はテクノロジー関連、医薬品株、電力など公益関連こそ安全資産と見なすに違いない。しかし、大手銀は存在感を放ちつつある。

ウェルズ・ファーゴの著名な銀行アナリスト、マイク・マヨ氏は「金融危機当時、銀行こそが問題の一部だった」と指摘する。しかし足元は「過去10年において危機に準備してきた実績から、力強さの源泉として、解決策の役割を担いうる」という。銀行を価値を測る上で、投資家は貸倒引当金の積み増しが意識されるだけに、利益より有形固定資産など純資産に着目しがちだ。

JPモルガンは20日に86ドルで取引され、株価純資産倍率(PBR)は1.4倍だった。バンク・オブ・アメリカは21ドルで1.1倍、ゴールドマン・サックスやシティ・グループはそれぞれPBR1倍を下回り70%、55%程度だ。

しかし、マヨ氏によれば「銀行のバランスシートは当時と比較にならないほど堅固で、むしろ大手10行のうち増資や減配を決定することの方が驚きだ」と語る。そのように分析するマヨ氏は、JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ、U.S.バンコープ、PNCフィナンシャル・サービシズ・グループを選好する。

その中でJPモルガンは消費者と商業向けの融資において多様性を確保し、資産運用部門も順調で、投資銀行としての成長も望める。さらに、心臓手術を受けたばかりのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)の下、業界で最高のリターンを遂げてきた。

バンク・オブ・アメリカは、ブライアン・モイニハンCEOの下で消費者部門と商業部門でトップの地位を築き、且つ貸倒損失が競合と比較して低い。

ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは、競合と比較して投資銀行部門や資産運用部門などのエクスポージャーが高い分、融資の規模が小さい。従って、両社のビジネスは下方リスクを低減させる側面をもつ。

地銀は中小企業への融資比率が高いだけに、大手銀より新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく、株価は最高値から50%以上も沈んだ。とはいえ、U.S.バンコープやPNCは教法と比較しエネルギー企業へのエクスポージャーが低い。また、PNCは資産運用大手ブラックロックの株式を保有し、同行の株価の35%の価値を占める。

大手銀に視点を移すと配当性向は平均30%程度で、バンク・オブ・アメリカに至っては2019年で25%に過ぎない。証券詐欺をめぐる集団訴訟を抱えたウェルズ・ファーゴは、50%だった。配当利回りにもその違いが現れ、ウェルズ・ファーゴが7.2%と業界1位に対し、バンク・オブ・アメリカは3.4%、JPモルガンは4.2%である。

FRBが前週、大手銀が1.3兆ドル相当の普通株を、2.9兆ドル相当の流動性資産を有していると指摘、健全性を強調した。つまり、大手銀は現金や国債などリスクの低い流動性資産を保有していることになる。例えば、JPモルガンの2019年末時点の資産2.6兆ドルのうち有形自己資本が1,880億ドルだった一方、融資残高は9,480億ドルだった。そのJPモルガンは、15日に声明で「状況が劇的に悪化したとしても、バランスシートは金融システムとあらゆる顧客層を支える事が可能で、政府を支援する用意がある」と決意を明らかにしていたものだ。

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(作成:My Big Apple NY)

また、マヨ氏いわく大手銀の融資も制御可能だ。マヨ氏はシティグループ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン、ウェルズ・ファーゴなどエネルギー企業向けエクスポージャーが136億~199億ドルであり融資額の1~3%に過ぎないという。さらに銀行は、エネルギー企業の債務返済において優先順位が高い利点もある。

FRBが厳格なストレステストを敷いてきた経緯も、銀行に健全性を与えたと言えよう。成長率が8%減、失業率が10%、株式相場50%安という深刻なシナリオが実現した場合でも、大手銀18行は普通株式等Tier1比率は平均12.3%から同6.6%へ低下する程度となり、最低限として求められる4.5%を上回る。

大手銀が自社株買いを中止したことで、融資に回る期待も大きい。銀行株に期待するのはアナリストだけでなく、オマハの賢人と称されるウォーレン・バフェット氏もその一人だ。同氏が率いるバークシャー・ハサウェイは、2019年末にシティグループとモルガン・スタンレー以外の大手銀行株を750億ドル相当保有し、最も同セクターに投資してきた。バフェット氏は割安感と高いリターン好む傾向にあるが、同氏の戦略が奏功するのか。ただ賢人も投資で誤る場合もあり、バークシャーは航空株を最も保有する投資家でもある。


バロンズ誌、「今回は違う=This time is different」シナリオを提示してきました。もちろん、銀行のバランスシートは約10年前と違い、健全性を担保しています。ただし、現状は①新型コロナウイルスの終息時期、②景気支援策の効果、③経済の減速並びに回復の度合い、④地政学的リスクなど他の危機への波及——などの見極めも必要。また、米銀はゼロ金利復活で収益確保が困難な時を迎えます。過去の弱気相場における株式相場動向も踏まえながら、賢明な判断に努めたいところです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年3月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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