これからの自動車会社への提言:ディーラーにも各メーカーの色を --- 前田 貴大

寄稿

先日、アゴラにも掲載された「自動車会社の生き残り戦争」を閲覧して普段、自動車販売会社で働く、私が現在の自動車メーカーや車社会に日々、感じていることを書いていきたい。まず、私はこの部分に着目していきたい。

「私は日本も含め、自動車会社は20年後に急激すると考えています。スマホメーカーが数社に絞り込まれているように自動車もそうならざるを得ないのであります。」

ここの、部分には非常に賛同するのと同時に私が働いているメーカーは生き残れるのかという不安にも駆られる。何故なら、今のように他産業の企業が自動車を開発する以前の2005年からトヨタとSUBARUが資本提携を行った。今日、日系メーカーでは8社あるが、トヨタ系、日産系、HONDA系の3つの系列に分けることが出来る。

そして、系列メーカーはそれぞれプラットフォームの共通化により、シナジー効果を生み出すために製品を生み出しているが、実際にはメーカー名と、車種名が違い、少しばかしフロントマスクが違うだけで、各メーカーのブランドが見えないばかりだけでなく、目先のビジネスに目がくらみ同じような車しか作れなくなってしまっている。

次に、文中ではMAASの一例として、最近トヨタがCMで宣伝している静岡県裾野市の実験都市を例に挙げていたが、これは去年の東京モーターショーのトヨタブースとMEGAWEB内のブースでも垣間見えた。

今までのモーターショーと言えば新車発表会であったり、コンセプトカーの展示が主であったが、昨今の環境問題や経営環境の結果、トヨタは自動車を一切、展示していなかった。(補足にはなるが、グランエースを展示していたが、トヨタ車体という子会社ブースであった。)

新型車グランエース、東京モーターショー2019 トヨタ車体ブース展示モデル(トヨタ自動車公式サイトより:編集部)

それよりも万博のパビリオンのような“自動車会社が考える”未来の生活様式や未来の街といったモビリティシティをイメージさせるような展示方法であったことは、筆者の記憶に新しいが、そのような生活様式に全員が全員、満足できるのだろうか。筆者は下記の文言に非常に共感している。

「多分、冒頭のように俺はシェアは嫌だ、という人は必ず出てきます。その為のカスタムメード的な自動車の需要はあるのでしょう。」

私自身が、車好きだからか人と違うような車に乗りたいのと同時に自動車は外に居ながらも自分のもう一つの部屋であると考えているため、MAASのような個人所有を反対し、移動という公共を新たに作ることは反対である。しかしながら、私たちの世代では移動できれば何でもいいと考えている人が多いことは無視できない。

これからの自動車会社に対して、文中でブランド力を高め、それに見合う車を作るよう提言していたが、自動車会社が各ブランドの色を出した自動車を作っていくことは、もちろん必要だが、それよりもエンドユーザーが実際に購入や点検といったサービスを受けるディーラーに、もっと各メーカーの色を出していかなければいけないと思う。

acworks/写真AC:編集部

レクサスやマツダディーラーを見れば、メーカーのブランドコンセプトが一目でわかるような作りになっている一方で、トヨタ以外のディーラーはどうであろうか。メーカーの個性や主力車種の個性は違うのにもかかわらず、働く人や箱モノに関しては殆ど同じで差別化がなされていない。

例えば、日産であれば電気自動車やコンパクトカーをイメージされる方も多いかと思うが、ディーラーのショールームを見てみても、それらをイメージさせるつくりにはなっていない。三菱もオールブラックスとのタイアップCMを流し、昔からの力強さを彷彿とさせているが、ショールームは日産と同じように、イメージさせる作りにはなっていない。

もし、メーカー各社が今のような状態を嫌い、将来、飲み込まれるのを嫌うのであれば、各メーカーの色を出した自動車を販売するのは勿論だが、ディーラーにも各メーカーの色を落とし込むために投資をきちんと行っていかなければならない。

現場でお客様と対峙している従業員は、時代は新しくなるにもかかわらず、業界の体質なども含め新しくならないことに非常に苦労している。100年に一度の転換期と呼ばれる今、各自動車メーカーは決断の時を迫られている。

前田  貴大(まえだ  たかひろ)
自動車販売会社勤務の会社員、あたらしい党党友