デジタル活用教育にアクセシビリティ対応を③

新型肺炎の今こそ遠隔教育を充実させよと原英史さん・吉井勇さんたちが提言している。傾聴に値する提言だが、アクセシビリティ対応への言及が抜け落ちている。

文部科学省の「子供の学び応援サイト」には「わくわくサイエンスリンク集」というバナーがある。ここから、多くの機関が提供する子ども向けページにリンクできる。

しかし、リンク先機関のほとんどはウェブアクセシビリティ方針を公表していない。ざっとチェックしたところ、科学技術振興機構日本科学未来館国立歴史民俗博物館には掲載がなく、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は推奨ブラウザのリストがあるだけだった。例外は理化学研究所で、ウェブアクセシビリティJIS規格の適合レベルAA準拠をきちんと表明していた。

理化学研究所のウェブアクセシビリティ方針(一部)

ウェブアクセシビリティ方針は、そのサイトにおける対応の基本的な考え方を表明するものであって、いつまでに、どこまでアクセシビリティに対応するか、準拠をどのように確認するかなどが書かれるものである。

総務省は2016年に「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を公表した。このガイドラインは国及び地方公共団体等公的機関にウェブアクセシビリティ対応を求めるもので、その背景には、障害者差別解消法や障害者基本計画がある。2017年度末までにウェブアクセシビリティ方針を策定・公開し、適合レベルAAに準拠(試験の実施と公開)するのが具体的な目標である。

科学技術振興機構、日本科学未来館、国立歴史民俗博物館、宇宙航空研究開発機構などは、このガイドラインを無視している。僕はガイドラインの原案作成で主査を務めたので、残念で仕方がない。

10人に一人以上の子どもが何らかの障害をもっている。新型肺炎の影響で通常の学びが中断した今、そんな子どもたちがサイエンスを学ぶ機会がアクセシビリティの不備で阻害されるのは気の毒だ。

ガイドラインの担当課(総務省)に問い合わせたところ、各府省や地方公共団体本体を優先し、関連機関は後回しになっていたそうだ。リソースは限られているから順番が付けられていたのはやむを得ないが、今回の事態で不備が露見した。

子どもの学びに関係する公共機関には、ウェブアクセシビリティ対応を急いでいただきたい。また、原さん・吉井さんたちの提言はこの点について言及して欲しい。