今だから観る『復活の日』

井上 貴至

小松左京さんのSF小説を映画化した『復活の日』(1980年、深作欣二監督、角川春樹事務所/TBS製作)を観ました。

これほど豪華な日本映画は観たことがありません。

舞台は、日本、ドイツ、イタリア、アメリカ、マチュピチュ、そして南極。CGのない時代、チリ海軍から本物の潜水艦を借り、ホワイトハウスを再現。

俳優陣も、草刈正雄、緒方拳、ジョージ・ケネディといった錚々たる顔ぶれ。日本制作なのにほとんどが英語、日本語字幕という国際映画です。

当時としては、日本映画最高の24億円の製作費がかけられたと言われています。

あらすじの詳細は、Wikipediaなどを見てほしいのですが、致死率が極めて高い「イタリア風邪」が世界各国で流行。結局、感染せず生き残ったのは、極寒の南極大陸とイギリスの原子力潜水艦だけ。

都市のパニック、医療崩壊、残されたものの恐怖と苦悩が非常にリアルに描かれています。最後の力を振り絞って診察する緒形拳演じる医師の「どんなことだって終わりはある。どんな終わり方をするかだ」というセリフや、お父さん、お母さんが亡くなり、ピストルで自殺する子供のシーンなどがとても印象に残ります。

隊員が感染し、食糧と医薬品を求めて南極大陸への上陸を希望したロシアの潜水艦を、イギリスの原子力潜水艦が撃墜するシーンも圧巻。

また、南極大陸では、男性855人、女性8人という偏りの中で、レイプ事件が発生。極限状況の中で、人間がどう生きるか、どう尊厳を保つかということが問われます。

また当時の米ソ冷戦の構造や、核戦略に対する鋭い批判などもとても興味深かったです。

40年経っても存在感抜群の映画。SF作家が未来を予測し、科学者が実現するという言葉を思い出しました。皆さんも、ぜひ。


編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2020年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。