都が発表した「コロナ対策緊急融資制度」って使えるの?

伊藤 悠

東京都YouTubeより:編集部

新型コロナウィルス対策は、主に、3つのカテゴリーに分けて、対応すべきだと考えています。

当たり前ですが、一番は感染抑止のための危機意識の共有。誰もが感染源になることを考えれば、今ある自分の命、隣人の命は、互いの我慢と協力に上にしか成り立たない、とても危ういものだという認識を持っていただくことです。

これは、「爆発的感染の恐れ」という小池知事の強い言葉によって一定の効果を発揮しました。多くの方の我慢と忍耐をお願いするもので、申し訳なく思いますが。

二つ目のカテゴリーは、医療崩壊を防ぐことです。この方法論は、ここでは割愛し、今日は、この危機意識の共有によって、もっとも被害を受け、存続の危機に立たされている、三つ目のカテゴリー、個人の所得をはじめ経済、特に、中小企業をいかにして支えるかについて詳述したいと思います。

都のコロナ対策補正予算補正予算の中身

小池知事は2月19日までに401億円のコロナ対策補正予算を取りまとめ、都議会は補正予算案を可決成立させました。

内訳を見ていきたいと思います。401億円のうち、364億円が中小企業支援策であり、9割が制度融資に係るものです。

制度融資は、ご承知の通り、東京都信用保証協会が裏書きすることにより、資金を必要とする中小企業に金融機関が融資を行いやすくする仕組みです(詳細はこちら)。

都は364億円を使って、この制度融資枠に「新型コロナウィルス感染症対応融資(融資上限額2億8千万円)」を新設し、融資目標額を1000億円に設定しました。さらに、これまで融資申込事業者が払っていた保証料を全額免除することで、資金繰りに窮する企業の一助にしたいと考えました(詳細は東京都産業労働局)。

もちろん、借りた金は返さなくてはならず、給付ではないので、いわば「災害」に見舞われた飲食店の経営者からは、「借りた分、返す苦しさが増す」とのお叱りを受けます。それでも、私は、本来、売り上げを上げ、従業員を雇用できる企業が潰れてはいけない。潰してはいけない。給付できなくても、負担の少ない融資を行うべきだと考えていますので、どうかご理解をいただきたいと思います。

手続きはとにかくスピードを

その際に、いくつか、都に申し入れていることがあります。

一つは、融資の際の審査を緩めることです。飲食店一つとっても、全く無借金で経営しているところはほとんどないでしょう。すでに借り入れがあるから、融資できないというのでは、緊急融資の意味がありません。公益性をもった信用保証協会の審査として、公益的に、ここは、融資の審査基準を考えるべきです。

もう一つは、提出書類の簡素化と審査の迅速化です。融資条件として、コロナの影響で売り上げが落ち込んだことを証明する必要があります。これについては、書類の簡素化が昔に比べれば進んできていると思うのですが、問題は迅速化です(参照:「新型コロナウイルス感染症対応」該当届のサンプル)。

例えば、より、融資条件のよい4号認定を受けようと思えば、事業所のある地元区の商工部の窓口に行き、審査を受け、認定される必要がありますが、区の予約待ちが3週間になることもザラにあると聞きます。3週間待たされている間に、支払いが追いつかず「倒産」というということも十分に考えられるため、即時に改善すべきでしょう。

これは、区で審査できる担当者が、この火事場の窓口に間に合っていないことを意味しますので、都が支援すべきだと考えています。

また、4号認定の審査の際に、区の担当者によっては「1ヶ月ごとの売り上げでしか見ません」ということもあるということです。

経営者が「2月25日から3月25日までの売り上げを、昨年と比較して審査してほしい」と言っても、「いえいえ、2月は2月なので、2月1日から2月28日までしかみません。3月分は、それでは3月31日が過ぎてから来てください」ということになると、資金繰りが間に合わずに、倒産に追い込まれかねませんから、有事には、柔軟な認定の仕方を、窓口の職員にはお願いをしたいと思います。

セーフティネット保証4号認定の概要(経済産業省サイト)

経営者が「諦めない」融資制度づくりが必要

さらに、融資の申し込みを検討する経営なら、こんな悩みもあるのではないでしょうか。

うちの売り上げ規模で、一体、いくらまで借りられるのか?

今回の緊急融資では、8000万円まで担保不要となっています。

いつ終息するともわからない事態だけに、できるだけ融資を受けたいと思っている経営者も少ないくないはずです。もちろん、融資なので、過去の売上げ、借入金、利益率、将来性など、審査してみなければわからないことが多いのは当然です。

しかし、「どうせ、借りられないだろう」、「借りられても、大した金額ではないだろう」と諦めて、存続意欲を失わせてしまっては、緊急融資制度創設の意味がありません。

私は、例えば、ですが、都が「特設サイト」を創設し、会社の規模、売り上げ、借入金などを打ち込めば、経営者が、一定の融資額の目安を確認できるようにしてあげてはどうかと思います。借り入れ意欲を沸かすものであり、有意義だと考えます。

また、すでに信用保証協会の融資制度で借り入れをしている経営者の皆さんは、「うちはもう、借り入れをしているからムリだろう」と諦めないで頂きたいのです。

例えば、8000万円借りたいけど、まだ未返済が2000万円残っているからと、諦めかけている経営者の方は、ぜひ、窓口に行って、相談して頂きたい。

「2000万を返済するので、8000万円を貸してほしいのだが、どうだろうか」と。

今、この急場においては、きっと融資担当者も相談に乗ってくれるはずです。その際に、2000万円返して、融資を受けられなかった時は悲惨なので、もちろん、そのことも融資担当者に相談しておくといいと思います。心ある融資担当者なら、きっと有意義なアドバイスをしてくれるはずです。

有事のいま空前の規模での経済対策を

最後に、冒頭にも触れたように、この緊急融資制度の創設の背景は、新型コロナという、未曾有の「有事」に瀕して、本来、売り上げをあげられる中小企業を支えるという公益的考えに立ったものです。だからこそ、批判は覚悟で、審査はその公益性を十分に考慮されるべきと申し上げました。一方で、不正があっていいというものではありません。

8000万円を借り入れて、個人の資産に振替え、計画倒産するような悪事を絶対に見逃してはいけません。そのためには、審査を厳しくするのではなく、捜査を厳しくすべきと提案しておきたいと思います。

東京には、世界一有能な警視庁があり、捜査二課があります。有事に乗じて、詐欺と認定できる事案については、徹底した捜査、立件をお願いしたい。その担保があれば、融資の審査担当者も随分気が楽になるでしょう。

今は、有事です。上記の、支援策だけで、ボロボロになった中小企業を救えるものではないことは承知しています。4月中をめどに、小池知事は企業支援策などをまとめ、発表するとしていますので、今後も積極的に、空前の規模で、経済対策を打っていかなければいけないと自覚しています。

併せて、砂漠に水をまくような、小規模で、効果の低い対策では仕方がありません。政策投資効果のもっとも高い、支援策を、やはり、現場の経営者から聞き取りながら、積極果敢に打ち出して行かなければいけないと、責任の重大さを感じているところです。

今後も、中小企業支援の具体的な提案を行なっていきます。

伊藤 悠(いとうゆう)東京都議会議員(目黒区選出)、都民ファーストの会 政調会長代理
1976年生まれ。早稲田大学卒業後、目黒区議を経て、2005年の都議選で初当選(現在3期目)。都民ファーストの会では、政調会長代理を務める。