コロナウイルス報道に見る劣化したメディア

2020年04月01日 06:00

世界でのコロナウイルス感染者は80万人を超え、死者数は4万人に迫りつつある(参照:Coronavirus Update  Live)。

こんな状況で、「すぐに緊急事態宣言をすべき」と主張していたコメンテーターの発言をうなずいて聞いていた私だが、続いて「日本は重症者だけPCR検査をしてきたので、医療崩壊を防いできた」「PCR検査をすると医療崩壊になる」と自慢げに言った。これには腰が抜けそうなほど驚いた。

「重症者だけ選択してPCR検査をしてきた」ことを評価することは、「軽症者を封じ込めないままに野放しにして、拡散を容認する」ことと同じだ。この条件では、早晩、水面下に広がった感染の影響で、重症者が顕在化して医療崩壊する。今、若者たちが無症状や軽症のまま、出歩いて拡散してさせているとの非難の声が上がっているが、これは危機感をしっかりと伝えきれなかった国やメディアの責任だ。

編集部撮影

確かに下に示すように若者の致死率は低いが、感染者数で見る限り、日本では年齢層の差はさほどない。ライブハウスなどのクラスターで濃厚接触者を優先的に検査してきたので、サンプリングバイアス(検査対象者が発熱・倦怠感・咳などの症状を持っている人たちを平等に検査対象にしていない)による偏りがあるが、若者は感染しないわけではない。

死亡した割合は、

となっている。60歳代までは低いが、70歳だと約10%、80歳だと20%超と非常に高くなっている。日本で感染拡大がおこっていない(らしい)理由として、衛生面での意識が高いことがあげられている。しかし、PCR検査数が少ない日本の数値は国際的に信じられていない。

致死率が低い理由として興味深いのは、国際的な疫学的調査で、結核予防ワクチンであるBCG接種が、国別の致死率に反映されているという報告がある。致死率の高いイタリアやスペインと近いにもかかわらず、ドイツやポルトガルでの致死率が低いことからBCG接種との関連が示唆されている。

最初のコメンテーターの話に戻るが、産経新聞の正論欄でも述べたように、医療崩壊することを避けるために検査対象を絞るというのは科学的でない。

上記のように、軽症の感染者をとらえきれなければ、軽症者がウイルスを拡散するのは自明の理だ。これでは、感染が静かに広がっていくので、ある日突然、一気に重症感染者が増える。ニューヨークの例で分かるように、2週間で患者数は90倍に増えるので、危機的状況にすでに達していると言って過言ではない。

一昨夜、小池東京都知事は、カラオケ、ライブ、クラブやバーでの感染者が多いとして、さらなる自粛を求めた。報道を見ていても、通勤途中ではなく、クラブやバーで感染したと推測する理由が明らかでない。感染経路不明だが、クラブやバーで感染したとするのは矛盾しないのか?クラブやバーに感染者はいたのか?

当然ながら、軽減したとはいえ、満員電車は三密状態(密閉、密集、密接)であり、感染リスクは高い条件を満たす。まだ、70歳には達していないが、四捨五入すると70歳になる持病持ちの私は、とっても不安な気持ちで通勤している。

今、スペインでは感染者の十数%が医療従事者であること、フランスでは獣医師が医療現場に投入され、英国では飛行機の客室乗務員が医療補助を行うとの報道があった。医療崩壊を防ぐためには、医療従事者の感染を回避することが重要だ。病床や呼吸器が十分でも、医療従事者が不足すれば、それが医療崩壊を引き起こす。医療従事者を守ることにもっと注力すべきだ。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年3月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
医学者、内閣府SIPディレクター

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