話題にならなくなったアメリカ大統領選

メディアをみても新型肺炎関連のニュースばかりで広がりがないと感じている方は多いのではないでしょうか?国民全員が専門家になれるほどの知識を持つ一方、飽きてしまい、字ずらを読む目が滑って何も頭に残っていない方もいらっしゃるかもしれません。世の中では様々なことは起きています。今日は忘れ去られたアメリカ大統領選のフォローアップをしたいと思います。

トランプ大統領 ホワイトハウスHPから

民主党の候補選びはほぼ6割ぐらいの州の予備選が終わりましたが現状バイデン氏が1217票、サンダース氏が914票で指名獲得に必要な1991票までバイデン氏が有利に展開するとみています。支持率の推移のグラフからもバイデン氏の支持が急速に伸びていることから民主党勢力の中でも新型肺炎で急進派より保守的な考えを持つ人が増えているとみられます。

ただ、バイデン氏のボイスがアメリカ全国民に伝わっているかといえばアメリカも新型肺炎とその経済的影響が興味の主流であり、それどころではないという雰囲気が伝わってきます。

一般的には有事の保守という傾向は強く出ます。戦争など非常事態に陥った時は国民が一体となるという意味から国が一つにまとまりやすくなります。時のトップに委ねるということでもあります。ただ、当然ながらそれには結果が伴わなくてはいけません。一定の成果が出るのが夏前でしょうから今回の大統領選挙の行方はそのころから白熱化するのではないかとみています。

新型肺炎がこれほどになる前、私は今回の選挙はトランプ大統領の信任選挙のようなものと申し上げたと思います。新型肺炎がアメリカを襲い、非常事態宣言が出され、ビジネスがストップし、失業率は多分一気に30%ぐらいになると見込まれる中、どのようなV字回復のシナリオを作るのか、そこにトランプ氏の運命が託されていると思います。当然ながらバイデン氏なりサンダース氏は外野でヤジを飛ばし続けるだけのポジションになります。

メディアへの露出度、国民の注目度という点ではトランプ氏が潜在的には有利になりそうですが、あくまでもそれは国民が期待する結果を出せれば、ということに尽きます。仮に感染者数の爆発的増大が止まらない、死亡者がとてつもなく増える、経済の混迷度が深まりパニックになる、精神的病を患って暴動や銃乱射など社会の混乱を招くような事態に陥るなど失政が続けばメディアのバッシングは厳しいものになるでしょう。

個人的にはトランプ大統領にとってはあまり得意な形勢ではないとみています。もともとは外交や交渉ごとを通じてインパクトがある攻撃型の政治を得意とする方です。今回のように守りの政治にどこまで強みがあるのか、読みにくいところです。今の状態では国際外交もできず、中国、イラン、北朝鮮などと外交バトルをする時期でもありません。

国内経済は1930年代の大恐慌を上回る失業率となるとみています。その当時の最悪の失業率は24.9%でしたが、上回る兆候は出ています。今週末に発表になる3月度雇用統計では3月分の数字をすべて織り込まないため実際には5月初めに発表される4月の雇用統計が本当の意味での注目データになるとみています。

トランプ大統領はある意味、歴史的事態の中でタクトを振るう総指揮者であり、その結果は後世に語り伝えられることになります。その腕前は今後2-3か月で概ね判明するでしょう。

サンダース氏が主張する1%対99%についてはインパクトが低くなります。なぜなら富裕層ほど今回の影響を一番大きく受けているはずで資産価値が3割から5割ぐらい落ちているケースも多く、富裕層から転げ落ちた人も多くなりそうです。一方、レイオフ(一時解雇)の人たちはそれでも失業保険のほかに政府からの補助が出る上にお金を使いたくても使えないという事態になっているため、いわゆる格差のコントラクション(収縮)が起きているとみています。

いずれにせよ、社会的風潮が今まで以上に直接的に反映される11月の大統領選はトランプ大統領の手腕と安定感、存在感を見せることができるのかどうか次第になりそうです。大統領選当初の下馬評や見込みとは諸条件が完全に変わってしまい、全く違った異次元での戦いになりそうです。今の時点で私には予想は不可能です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年4月2日の記事より転載させていただきました。