新型コロナの感染拡大で現金の需要が増える?

2020年04月04日 06:00

かっちゃん/写真AC

新型コロナウィルスの拡大が世界中に広がっているが、これによって現金の需要が増えるかもしれない。

こう言うと、それは「現金の需要が減って、キャッシュレス化が進む」の間違いではないか、と思われる方も多いと思う。

人の手から人の手に次々と渡っていく紙幣や硬貨は、ウィルスの伝播のルートの一つと考えられ、欧米では消費者はスマホ決済やクレジットカード決済のような非接触型の支払手段を好むようになり、商店も現金での支払いを拒絶するところが出てきていると聞く。

事実、中国では早くから汚染された可能性のある紙幣は、紫外線を照射したり高温にさらしたりして消毒した後、2週間保管し、それから再度流通させるようにしているそうだ。

また韓国の中央銀行も、還流してきた現金は2週間保管してウィルスの痕跡がなくなるのを待ってから再度流通させたり、一部は焼却すらしていると聞く。

さらにアメリカのFRBは3月下旬に、アジア地域から還流してくる現金を再度流通させる前に検疫することとしたとロイターが報じている。

しかし、「紙幣や硬貨によってウィルスが拡散されていると考えるのは行き過ぎ」という意見もあり、カナダの中央銀行は、現金に触れるリスクはドアノブやキッチンのカウンターや手すりなどを触るのと同程度のリスクであるとして、WHOが推奨するように手洗いの励行に心がけることとし、商店が現金の受け取りを拒否したりしないようにと言っている。

またWHO自身も、一時WHOの広報担当者が紙幣がウィルスをうつすと発言したように報じられたことに対して、そのような発言や警告をしていないと明確に否定している。

もっとも、そうは言っても人情としてはやはり、現金決済よりも非接触型の決済の方が安全だと思いたくなるので、今回の新型コロナ騒動を契機に非接触型の決済手段が世界で一層広まることになるかもしれず、こうした取引の面での現金需要は新型コロナの影響で減っていくだろう。

しかし、私が新型コロナの感染拡大で現金需要が増えると言ったのは、こうした取引のための現金需要ではなく、資産の保全のための現金需要が今後増えてくることを言いたいのだ。

現在、新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために世界中いたるところで都市や国がロックダウンされ、人々の往来がなくなり、生産や消費が大きく落ち込んでいる。直接的には陸海空の交通関係の企業や、ホテル、飲食店、各種イベント会社などが最も被害を受けるだろうが、それだけでなく様々な業界に新型コロナはマイナスの影響を及ぼすだろう。感染の収束がいつになるかにもよるが、それこそ大恐慌以来の大きな経済活動の落ち込みとなる可能性が高い。

これに対して各国の政府・中央銀行は、大規模な財政支出や通常ではありえないような金融政策をとって新型コロナショックを弱めようとしているが、なかなか容易ではなかろう。

Reuben Ingber/flickr

とりわけ問題なのは、2008年のリーマンショック後の金融システム破綻回避と景気の下支えのために主要国中央銀行が量的緩和を中心とする超緩和的金融政策を長くとり続けたために、世界の債務、特に民間債務が持続不可能なレベルまで膨れ上がっていた、その時に今回のショックが到来したことだ。

昨年11月7日、IMFのゲオルギエバ専務理事は講演で、世界の公的債務と民間債務の合計は188兆ドル(約2京円)と過去最大となっており、経済と金融の安定に対するリスクとなっていると述べたが、まさに今そうした借金でパンパンに膨らんだ経済が新型コロナショックで破裂する危険が差し迫っているのだ。

今のところは、新型コロナショックは金融危機にまでは及んでいないが、感染の収束が長引けばいくら主要国政府や中央銀行が頑張っても、リーマンを超えるショックが来る可能性は否定できない。

もしそうなったら、人々は自分の財産を守るために何をするだろうか。やはり一番確かなのは株でも債券でも預金でもなく、現金なので現金の確保に血眼になるのではなかろうか。

だから私は新型コロナショックで現金の需要が増えると考えている。

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有地 浩
株式会社日本決済情報センター顧問、人間経済科学研究所 代表パートナー(財務省OB)

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