バロンズ:狂乱の米3月雇用統計に驚くなかれ、今後さらに悪化も

2020年04月06日 14:00

バロンズ誌、今週のカバーは新型コロナウイルス感染拡大をめぐる米国経済の影響を、全米感染者数1位となったNY州を軸に伝える。NY市はこれまで、2001年の同時多発テロ事件を始め2012年のハリケーン”サンディー”など、数々の困難を乗り越えてきた。しかし、他の都市と違って人口密度が高く(全米は1平方㎞当たり約34人、NY市は約2万7,000人、ご参照:日本は1平方km当たり約340人、東京都は約6,350人)が高く、公共交通機関に依存する(全米の相乗りを含む自動車関連通勤の割合は85.3%、NY州は59.1%)など疫病に弱い側面があることは否めない。

(写真:/\ltus/Flickr)

(写真:/\ltus/Flickr)

アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所(AEI)によれば、NY市を始めとした6大都市圏の域内総生産(GDP)は2018年に5.1兆ドルと米経済の4分の1を占め、国家レベルならば世界第3位に相当する。24大都市圏へ広げれば、米国GDPの半分を占める。巨大都市圏がくしゃみをすれば米国経済が風邪を引くこと必至で、既に米新規失業保険申請件数は過去2週間で約1,000万件にのぼった。4月末までに一時解雇者数が2,000万人に到達するとの予測が聞かれるなか、米国経済はどうなるのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は米3月雇用統計を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

大幅な雇用減は税収の急減を招きニュースヘッドラインは暗さを増すが、真実は一段の悪化を示唆―Massive Job Cuts and Falling Tax Receipts Make for Grim Headlines. The Real News Is Even Worse.

新型コロナウイルスによるパンデミックが深まるなか、良いニュースと悪いニュースがもたらされている。悪いニュースは、経済指標の予想以上の悪化だろう。良いニュースは、時間の経過に伴う感染者数の鈍化が挙げられるが、未だに出口は見えてこない。

雇用統計は不具合を残すものの、米国経済の全体像をつかむ上で最初に届けられる情報であることに間違いない。

米3月雇用統計では、金融危機以来となる非農業部門就労者数の急減や失業率の急伸などを確認した。しかし、失業率が実体経済を反映したとは言い難い。ブリーン・キャピタルのジョン・ライディング氏とコンラッド・デクアドロス氏によれば、失業者が140万人増加した一方で雇用されているものの、病気やその他の理由で勤務できなかった」人々は170万人、そして労働市場からの退出者数は180万人に及んだ。この2つを合わせれば、失業率は3月の結果からさらに2.1%押し上げることになる。

(作成:My Big Apple NY)

(作成:My Big Apple NY)

非農業部門就労者数(NFP)をみると、娯楽・宿泊が前月比45.9万人増となり最も弱かった。週当たりの平均労働時間は0.2時間短縮。唯一の明るいニュースである平均時給も、低所得の職が大幅に削減されたため押し上げられたに過ぎない

雇用統計が遅行指標であるだけに、米新規失業保険申請件数に注がれつつある。アライアンスバーンスティーンで首席エコノミストを務めたジョセフ・カーソン氏によれば、経済の動向を知る上でもう一つの有益な情報は納税額だ。3月第2週までの過去2週間で、連邦源泉徴収額は前年同期比10%減少した。

州毎の源泉徴収額にも、新型コロナウイルス感染拡大の余波が現れている。TLラナリティクスの調査によれば、3月に源泉徴収額が予想通りあるいは予想以上だった割合は全米50州のうち46%にとどまり、2月の73%を下回った。源泉徴収額が増加した州も全体の68%にとどまり、2月の90%以下となる。ただし、TLラナリティクスによれば州の源泉徴収額はラグを伴う。しかも3月第2週の結果はまだ米国が新型コロナウイルス感染拡大のリスクを理解しておらず、外出禁止関連措置が導入される前だった。また、失業保険申請件数の急増は源泉徴収額の減少を意味する。いずれにしても、本格的な悪化がみられるのは4月になってからだろう。

約2兆ドルの景気刺激策には、中小企業向けに返済免除付融資の賃金補償プログラムとして約3,500億ドルが盛り込まれたが、米国人労働者に素早く行き渡るとは限らない。コーナーストーン・マクロは、この点を重要視し「4月の雇用統計・NFPは前月比2,000万人減少し、失業率が17%に急伸する」と予測する。

真っ暗な経済見通しに加えて感染者数が増加する状況で、S&P500種株価指数が再び下値を試してもおかしくない。3月23日につけた終値での最安値2,237.40は、4月3日の終値を10%下回る程度だ。さらに、米株市場の時価総額は2月の最高値から10兆ドル消え去った。こうした損失は減配や設備投資縮小につながることだろう。

――米3月雇用統計の結果は大幅減となりましたが、外出禁止関連措置が発動・勧告される前の3月12日に給与を支払われた労働者をベースとした試算である点に注意。外出禁止関連措置は3月19日のカリフォルニア州を皮切りに、3月末までに38州が実施に踏み切っています。従って改定値で一段と悪化する余地を残し、4月がこれより弱い場合Wパンチとなるリスクをはらみます。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年4月5日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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