コロナで見えた、都民ファの課題。小池知事は恩讐を越えられるか

高橋 大輔

緊急事態宣言後、平日昼とは思えない人気の無い銀座(編集部撮影)

緊急事態宣言後、地域政党の動きはどうか

7日に東京をはじめ各都府県で緊急事態宣言が発令され、私自身も自宅で過ごす日々がこれまで以上に多くなりました。不要不急の外出が憚られるのは不便である一方、こういう時期だからこそ読書の意欲が一層高まります。

こういうときは今まで縁のなかったに本に挑んだり、あるいは記憶が薄れたのでもう一度読み返す本などもあり。私の場合はフランクルの『夜と霧』、アーサー・クラークの『2001年宇宙の旅』などに熱中しています。アゴラ読者の皆さまは、どんな本を読んで過ごしていらっしゃるでしょうか。

政府の動向は大いに気になりますが、私自身が都内在住ということもあり、都政の動きは時として政府や国会以上に気になります。過去にも書きましたが、政府の方針はあくまでも都道府県や市区町村を通じて私たちにフィードバックされるので、自治体行政や地方議員こそがプレイヤーだと思うのです。

コロナへの対応を巡っては、たとえば伊藤悠・都議会議員のように小池都政と安倍政権の対立を問題視する声もあります。

心情は理解できる一方で、それが果たして国に届いているかというと、そこは疑問を抱かざるを得ない。同じ構造はもしかしたら東京だけでなく大阪府にもあるのかも知れません。東京都政における与党である「都民ファーストの会」と、野党である自民党・東京都連の動きを見比べると、自民のアクションが活発なのに対して都民ファに対する不満が募ります。

「知事が、総理が」以前の問題。都民ファの声が届くための経路が見えない

4月1日以降、都議会自民党は小池百合子都知事や多羅尾光睦、梶原洋副知事らにも要望書を提出。そして自民党本部・岸田文雄政調会長、前田泰宏中小企業庁長官などに緊急要望を提出など、国に対してダイレクトに要望を上げるシステムが整っています(ただし、それで充分とは言いません。もっとスピーディにと申し上げたい)

東京都議会自由民主党公式サイト

一方で、都政における与党である都民ファーストの会はどうか。残念ながら、党のサイトからは政府に対する具体的なアクションを示す材料が見つからないのです。

都民ファーストの会公式サイト

もっとも無理からぬ話で、そもそも都民ファ結成の経緯が旧民進党の脱藩組で占められ、あるいは自民党からの離反組で占められているがゆえに、自民や公明、共産のように、国政に要望を吸い上げるための経路(パス)がそもそも無いのでしょう。

本来ならば「希望の党」がその受け皿となり得たかも知れませんが、希望の党はその後、現在の国民民主党に衣替え。その国民民主党も都民ファーストとの合流は実現することなく現在に至ります。そうした経緯を振り返ると、現在の都政と国政のねじれ現象はある意味当然の帰結といえるでしょう。

私自身それを望んでいるわけではありません。ただ、こうした現状はやはり残念です。コロナ対策で国との一体感が求められるだけに、なおさらそう思います。

嘆いても仕方がない。ならば、どうするか

後藤新平(Wikipedia)

東京都政における小池知事のロールモデルは、おそらく現在も後藤新平・第7代東京市長でありましょう。その片鱗は、2017年の首都大学東京における入学式スピーチなどでもうかがえます。

小池知事には後藤新平よりもむしろ、第2代・3代の市長を務めた尾崎行雄を意識していただきたいと願います。これは私が財団の一員だから言うのではありません。尾崎の2期9年にわたる東京市政は、現在の小池知事がままならぬ2つの要素に支えられていました。

東京市長時代の尾崎行雄(Wikipedia)

ひとつは、尾崎自身が国会議員と東京市長を兼務していたこともあり(当時は兼職が認められていた)、時の内閣とも一体で市政を推し進めることができた。これが何より大きいです。

後に「港湾事業以外は、ありとあらゆる改革を進めた」と述懐しているとおり、東京の区画整理や上下水道の整備、東京鉄道の買収市有化や電気・ガス事業の改革など、当選前の小池候補が掲げた「東京大改革」を尾崎は実現しています。

中でも東京が鉄道を買収するために工面した外債の発行などは、正金が欲しい政府の思惑と、それまで腐敗の温床となっていた東京鉄道の私物化を断ち切りたい市の利害を一致させることで「政府と東京市の渡りをつけた」ことが何よりの成功要因につながりました。

今年はワシントンでも自粛され話題にも上がりませんでしたが、毎年春にアメリカ・ポトマック河畔を彩る桜の寄贈を市会に諮り実現したのも、東京市長時代の尾崎の事績です。

一方で後藤新平の東京市長時代は、これといって目ぼしい成果が確認できるわけでもありません。後藤の名が現在にも残るのは都政よりもむしろ、関東大震災直後に内務大臣兼復興院総裁として当たった帝都復興であり、東京のリーダーとしてではない。

もしかしたら小池さんの後藤に対するリスペクトが「都知事後」を意識してなのかは分かりません。少なくとも今は国政に色気を出さずに一意専心され、それこそ「崖から飛び降りる」覚悟で、コロナ対策に当たっていただきたいと願います。

もうひとつ肝心なこと。小池知事は「都議会自民党の胸を借りられるか」

尾崎行雄の東京市政を安定たらしめたもうひとつの要素ですが、それは「議会の安定」にありました。これは単なる数だけの安定ではなく、それまで市会を取り仕切っていた巨魁・星亨の一派から信任を取り付けたことが長期安定政権の運営に繋がりました。

Facebook「東京都知事 小池百合子の活動レポート」より

現在に置き換えるならば、都議会自民党を味方につける、そこまでは行かずとも「登山ルートは違えども、めざす頂上は一緒」というビジョンを自民党と共有できるか、あるいは素直に胸を借りられるかに掛かっているといえるでしょう。

アゴラ寄稿陣の一人でもある川松真一朗・都議会議員はたびたび、自身のブログでも小池知事に素直さを求めて呼びかけています。

都民の命を守っていただくためには、やはり国と一枚岩、あるいは両輪でなければ困るのです。今こそ小池知事には1期4年の集大成として、過去のしこりを乗り越えて都議会自民党と手を握り、都政と政府与党の渡りをきちんとつけていただきたい。

コロナの克服は、そうした恩讐の彼方にこそある。そう願うのは私だけでしょうか。