バロンズ:米経済の回復は、V字型かEKG型かそれとも?

2020年04月13日 14:00

バロンズ誌、今週のカバーは新型コロナウイルス終息後の世界を占う。既に新型コロナウイルス感染拡大により消費者、企業、政府の姿勢は変化した。長きにわたって信じられた仮説は葬り去られ、財政タカ派は経済安定のための支援策に異論を唱えない国民皆保険や手厚い社会福祉制度など、一時は過激な政策とみなされたが、主流になりつつある。債務は罵り言葉に変わり、必要不可欠な医薬品や医療機器は長らく信じられていた国際多様性の利点に疑問が投げかけられ始めた。運用資産400億ドルを有し、新興市場の投資ファンドとして知られるインベスコ・オッペンハイマー・ディベロッピング・マーケット・ファンドのジャスティン・レベレス氏は「新型コロナウイルスはブラック・スワン」と指摘する一人。同氏は「ブラック・スワンにより国家、社会、個人が壁にぶつかるごとに、国家と市場、そしてヘルスケアや教育など全てが根本的な変化を余儀なくされてきた」と語る。では、今回我々はどんな変化に直面するのか。詳細は、本誌をご覧下さい。

(カバー写真:Gilbert Mercier/Flickr)

(カバー写真:Gilbert Mercier/Flickr)

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は新型コロナウイルスでの米国経済の影響を取り上げる。筆者の解釈に基づく抄訳は、以下の通り。

経済への悪影響と、その回復スピードとは―Here’s How Bad the Economy Will Get — and How Quickly It Could Revive

事象や現象を率直に説明できないとき、隠喩が多く使われがちだ。新型コロナウイルスによる社会や経済への深刻な影響を語る時も、同様だろう。

パンデミックは見えない敵との戦争であるため、国家総動員が求められる。自然災害とも指摘されるが、地震やハリケーンと違い世界的な問題でいつが終わりか分からない。また、都市封鎖や業務停止は政府の指示によるもので、人為的に逆境が作り出されたといっても過言ではない。

何より重要な影響としては、世界で10万人以上の死者が出た事実のほか、米国で失業率が大きく上昇し所得が失われたことだ。そして、問題はいつ治療薬が流通し、経済の回復するかだろう。経済の落ち込みが人為的ならば比較的回復への道のりは平坦だろうが、実際はウイルス大流行の終息次第で、タイミングは不明確である。また、企業と労働者がいつ通常業務に戻るのかも不透明だ。

グッドフライデーの休日を挟んだ4月6日週、S&P500種株価指数は12.1%上昇し、1974年10月11日以来の大幅高を遂げただけでなく、3月23日の安値から25%回復した。米連邦準備制度理事会(FRB)が2.3兆ドルの緊急支援措置を発表した結果、経済の回復が近いと受け止め米株市場や社債市場などが力強く反発したためだ。

果たして、実際に回復は近いのだろうか?経済活動は外出自粛などを受け多くの業種で停止し、高速道路の交通量は激減し航空便は一部で同時多発テロ事件以来の前年比95%減に及ぶ状況だ。米国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長は「回復のタイミングを決定づけるのは我々ではなく、ウイルスだ」と語る。

ドイツ銀行のマクロストラテジスト、アラン・ラスキン氏は、米株市場と米経済の関係を精査した上で、米株市場の動向は経済破綻より歴史的な浅く短期間の景気後退を示すと分析する。しかし、むしろ過去3週間に及ぶ米新規失業保険申請件数が表すように現状、経済は猛スピードで後退しつつある。

既に悲観的な数字が飛び出しており、最も恐怖を誘う予測値はJPモルガン・チェースによる米4~6月期実質GDP成長率見通しで、従来の前期比年率25%減から同40%減へ大幅に下方修正した。一方、回復の時期はというと、同社は5月にかけ外出禁止関連措置が続くと予想した上で6月から上向くと見込み、7~9月期の実質GDP成長率見通しを前期比年率23%増10~12月期については同13%増と掲げる。ただし、2020年通期では7.7%減となる見通しだ。

(作成:My Big Apple NY)

(作成:My Big Apple NY)

コーナーストーン・マクロのナンシー・ラザー氏は、さらに経済回復に懐疑的だ。4~6月期に米実質GDP成長率が前期比年率20%減を経て、7~9月期も同2%減と小幅ながら景気後退が続くと見込む。「エコノミストはユーモアのセンスを示しため、小数点で予測値を示す」とは歴史家であり詩人のウィリアム・ギルモア・シムズの名言だが、予測値から小数点が消え、まるでジョークを忘れたかのようだ。それも、この状況では当然だろう。

経済回復は従来、V字かU字、W字などを描いてきた。果たして今回はどうか。RBCキャピタル・マーケッツのトム・ポルセリ氏とジェイコブ・オービナ氏は、死者数の頭打ち時期など不確実性を伴いつつ、5つのシナリオを提示する。例えば、V字型の確率は35%と算出、ウイルス感染者や死亡者のピークアウトが予想より早期に確認できたシナリオであり、その場合、米経済は7~9月期末に正常なトレンドに回帰すると見込む。

とはいえ同社は楽観的ではなく、二番底すなわちW字の確率もV字型と同様の確率を見込む。このシナリオでは秋に新型コロナウイルス感染拡大の再発を見込むが、ソーシャル・ディスタンシングなど有用な対策を経験済みで、10~12月期の米国経済の悪化は4~6月期ほどのにならない見通しだ。

RBCは短い期間の景気後退と長きにわたる上向きを予想するチェックマーク(✔)型回復につき、20%を見込む。感染者や死亡者が高止まりしても、ファウチ所長が数日内に実行可能と言及した抗体検査が順調に進行し新型コロナウイルスに抗体をもつ人々が増えれば、経済の正常化が比較的早期に進む見通しだ。

その他、RBCはベスト・シナリオにEKG型(心電図=electrocardiogramからEKGのほかECGという場合も)も掲げる。低い死亡率と景気刺激策の恩恵による力強い経済の反発を織り込んだものだが、実現の確率につき5%程度しか見込んでいない。

もうひとつ、長いU字型の回復を予想。新型コロナウイルス感染拡大が収まらず、景気後退が金融危機時のように長期化するシナリオだ。

2020年上半期に見舞われる景気後退はユニークであり政府が公共衛生上の戦いに直面するなか、ゴールドマン・サックスは1981~82年型の景気後退を予想する。当時も物価の上振れに伴い、ボルカーFRB議長(当時)による大幅な利上げを受け人為的な景気後退に陥ったものだ。ただし、FF金利誘導目標が20%へ引き上げられた後で利下げに転じてまもなく、雇用を失った250万人もの労働者は職を取り戻すことになる。GSは「経済減速が故意に引き起こされ、マイナス成長を伴う政策が一時的だった場合、企業は一時解雇を最小限にとどめがちだ」と分析する。

とはいえ、GSは楽観的な見通しには大きなリスクが立ちはだかる。外出禁止関連措置や業務停止の緩和の時期、経済への波及などが不透明であるほか、ウイルスが再発するとも限らない。また、正常化した後の経済にも不安が残る。

ザ・ジェローム・レビー・フォーキャスティング・センターのデビッド・レビー氏は、株安で資産価値が急落するなか、引退済みのベビーブーマー世代を中心に健康上のリスクを冒してまで旅行に出ていくのかと疑問を呈する。確かに、米株市場の時価総額は2月19日の最高値から6.9兆ドル吹き飛び、前週の急反発を受けて3.3兆ドル取り戻したに過ぎない。

レビー氏は政府の対応を評価し米経済の回復を見込むように、トランプ政権と米議会は約2.2兆ドルの大型景気刺激策を始め迅速に対応してきた。Fedも9日に緊急措置を発表、社債や地方債の取得など未曽有の決定を下し経済下支えを図る。ただし、景気刺激策に盛り込まれた雇用補償プログラム(Payroll Protection Program)は不足状態にあり、次なる経済対策が待たれる。新型コロナウイルスの終息を始め、米景気の回復を予想するのは未だ極めて困難と言えよう。

――米経済の回復がどのようなタイプになるのか、我々は限られた情報を元に予想するしかありません。ただ一つ言えることとして回復のモメンタムを決定するのは、スティングよろしく“Shape of My Heart”、心の在り方なのでしょう。そういえば「Those who fear are lost( 恐れる者は敗北する」なんて歌詞も耳に届き、今聞くとまた一段と味わい深い名曲です。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年4月12日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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