コロナとの戦い:長期ゲリラ戦と正規戦の間に

みなさま緊急事態宣言を受けて一生懸命外出を控え家で仕事しておられることと思う。「外へ出たいなー」とおもってもぐっと我慢するためにはその必要性について自分の中で腑に落ちる必要がありましょう。

緊急事態宣言下、人影もまばらな道頓堀(Janne Moren/flickr)

「自分は自宅で外出自粛したいと思っているけど会社が意識が低くて休ませてくれない!」とか、会社経営者にしても「従業員に出勤命じたくないけど倒産させるわけにいかない。」など様々な理由で外出自粛できない、させられないという状況も、政府が安心して外出自粛できるように経済対策をすべきだが、ウィルスは経済対策を待ってはくれない。自分や家族を守る努力は必要だし、意識が薄い会社には意識を高めて頂く必要もある。

なので、改めてコロナという敵について改めておさらいしてみた。本当にそんなに怖いのか。そして、「コロナとの戦い」というけれど一体いつまでどういう風に続くのか。

その結果、思うに、残念ながら、残酷なまでにコロナは超筋悪だ。人間の心理の裏をかいて油断させて感染を爆発させ、ベビーフェースで人類の基本的生活原理を一変させかねない恐ろしいウィルスだ。その上、もはやコロナとの戦いはこれからガチンコのクライマックスを迎えた上、さらに、ゲリラ戦のように長期戦の気配濃厚。 

1.感染スピードが著しく早い

コロナのやっかいさの一番の点は、極めて感染力が高いということだ。無症状(17.9%)や軽症の人が8割の上、潜伏期間が長いため、多くの人が気づかないままウィルスを感染させ、その広がりは指数関数的である。ある地点を超えたら壁を急上昇するかのように爆発するのだ。「気づけば手遅れ」になるということだ。

2.感染爆発により死者数が社会の許容レベルを超える

感染した人の2割は重症化し、2%の人は死に至る。2%って別にと一見思うかもしれないが(それでもインフルエンザが0.1パーセントなので20倍)、感染力が強いので母集団が巨大となり、したがって、重傷者のボリュームが各国が備えている医療キャパを簡単に超え、医療崩壊を迎えれば、致死率は2%ではなく10%以上に増大する(高齢者では2割弱の致死率)。その結果、死亡者数は社会がとても許容できないレベルに増加しうる。

だから、あの美しいイタリアでも、先進的な医療があるであろう英国でも、NYでも、まるで戦場の野戦病院のような光景がスタジアムや公園が現れ、遺体の置き場所に困るような凄惨な光景が出現しているのだ(これは本当に現実なのか、映画じゃなくて、と思うような)。

米国は死亡者が最大で2万人を超えているし、スペイン、イタリアも1万人を大きく超えている。このような多数の死者を出す日常は日常ではありえない。

厳戒態勢のニューヨーク(New York National Guard/flickr)

3.接触制限以外の有効な対策がない=経済打撃不可避

このウィルスについては自然な感染拡大による集団免疫獲得は政策手段にはできない(英国が当初採用しようとして余りに甚大な人命被害予測から方針転換した)。それまでに死亡する人の数が甚大で社会的に許容できないからだ。つまり、確かに感染は収束した。でも、何千人(国によっては何万人)もの人が死んだ、という状況になってしまうからだ。日本だって自粛も何もせず放置して100万人が感染すれば、その2%の2万人くらい死亡する計算になる。それは許容不可能だろう。

したがって、最も重要な決定的な対策は、ワクチンを開発量産することだが、それには最低1年か2年はかかるというのが大方の見方だ。

では、その間どうすればいいのか。接触を減らす、しかない。しかも、自宅ぐらいしか安全地帯はない。一歩外に出れば、人がいるところならどこで感染してもおかしくない。外に出る時は、店でも、電車でも、道を歩くときでも、どこでも、他人とは2メートルの社会的距離)(social distance)を取る。「三蜜」なんて曖昧な言い方ではなく、「店でも電車でも道路でも2メートル間隔を人とあけること、それができるように入場制限すること」と具体的な指示を出すべきだ。 

8割各人が接触を減らせば感染拡大を反転させられる。感染が広がらなければ医療崩壊も起きず死亡者も抑制される。感染収束に成功したと喧伝している武漢はじめ外出制限を厳しくやったイタリアでも死亡者が減少に転じ始めた。 

ところが、緊急事態宣言が出たとはいえ、日本は欧州や米国に比べれば危機感は薄い(一つ前のブログにも書いたが、欧米のような感染爆発に至っていないのでそれも無理からぬ面あり。)。宣言が出る前と比べ東京でも確かに外出している人は減ったけれど、8割接触削減にはまだ遠い。百貨店もホームセンターもsocial distanceを保つことが業務上不可能な理容美容も除外、居酒屋も時間短縮で営業可能なので、そんな徹底した外出自粛は難しいかもしれない。2週間で感染カーブを下に向けるというならこれらの業種は本来閉店させる(その代わり生活対策もする)べきだ。

4.期戦化せざるを得ない。→ 社会の在り方も変化

北海道で感染第二波が確認され、再度緊急事態宣言を知事は行った。一旦、感染収束に成功したと思っても、他地域で感染が広がっていれば、また人の移動に伴って第二波、第三波がやってくることを如実に示している。これは世界で各地域が順を追うように感染移動し広がっていることを考えれば、一旦、ある国で感染収束に成功しても、世界のどこかで感染が広がっている限りは第二波、第三波の可能性があり、そのための対策を怠ってはならないということを意味する。世界がぐるっと回って全世界的にコロナが収束するのはいつになるだろうか。1年や2年の覚悟は必要かもしれない。

コロナとの戦いは、ゲリラ戦を日常的に戦いながら時々国家間の正規な戦闘行為が必要になるスタイルの「長期戦」になるのだろう。深刻さが違うので気が引けるが、たとえば、ダイエットと同じように、「体重急増して〇〇キロ超えたら1日プチ断食」の要領で、感染爆発しそうになったらときどき緊急事態宣言みたいな感じで今後の1年くらい推移するのかもしれない。

5.特殊論について:「パスカルの賭け」

日本人は、そもそもコロナをそこまで怖いと思っていない。欧州ではまさに「第3次世界大戦」という感覚で、たとえばロンドンで殆ど道に人が見られないのは、当局が強制的に規制しているからだけではなく、「死の恐怖」から外出をできるだけしたくないと個々人が感じるからだそうだ。

日本について、イギリスも米国も、3週間前は自分たちもそうだった。接触8割減が実現できなければ、日本も遠からず欧州のようになるだろう。つまり、指数関数的に感染爆発して医療崩壊し死者が激増するのではないかとみている。この見方は間違っているだろうか。そうあって欲しいが、そうでないかもしれない。 

多くの日本人が信じている「日本は特殊」信仰が足を引っ張ることにならいか心配だ。

パスカル(Wikipedia)

先が不明な時はパスカリストになるべきだ。パスカルは、「神は存在するかどうか」という命題について、「神がいるとすれば、善行を積むこと。天国にいける。神が仮にいなかったとしても、善行を積むことはマイナスにはならない。したがって、神がいるかどうかわからない場合の合理的行動は、神が存在すると思って行動することだ」という趣旨を述べている。 

日本は、医療水準も一般公衆衛生レベルも世界最高水準、病床数も世界一だが、感染症対策可能な病床数でいえば日本はイタリアの半分だ。コロナに限っていえば医療キャパは大して高くない。今日もニュースで各地の院内感染が報告されている。感染があった病院はしばらく閉めたり、感染したり濃厚接触の医師スタッフは当然隔離になる。医療崩壊は始まりつつある。

BCG打ってるからとか、距離間ラテンじゃないからとか、実は人種的に強いとか、いろんな日本の特殊性により、「日本は感染爆発しない」とか「感染爆発しても重症化しにくいとか死亡しにくい」説については確証がない以上、「日本だって感染爆発させたらイタリアやイギリスみたいになる」と思って対策することが必要だ。

6.デジタル経済がデフォルトに

 コロナ後の世界は、デジタル経済での勝者が勝者になる世界だ。日本は、マイナンバーカードも普及しておらず、テレワークも5.6%。シンガポールだけでなく、マレーシアだってインドネシアだって、オンライン授業をするという世の中。東南アジアでさえGRABでタクシーをオンライン確保するのが当たり前。コロナ危機の機会に、日本が周回遅れになっているデジタル化とデジタル化の恩恵を十分に享受するための基礎インフラに当たるマイナンバーカード普及を劇的に進めるべきだ。そうでないとコロナ後の世界で日本の立ち位置が後進国と化していないとも限らない。

7.生活補償は感染症拡大抑止対策

日本政府は、緊急事態宣言を出したとはいえ、社会経済の機能を維持したままウィルスを収束に持ち込む方針のようだ。1年も2年もかかる長期戦だと思えば、その発想もわからないではない。けれど、56日までの期間は8割接触削減するというのであれば、それが可能な対策を取らねばならない。

ライフラインに関わらない店や事業は5月6日までは生活は保障して閉めるようにお願いするべきだ。現金直接給付の対象は一律が望ましいが、それはちょっとということであっても少なくとも現在の30万円現金給付の対象範囲は狭すぎる。みんな毎日の生活が大変なのだ。不安で自粛するのだって大変なのだ。

即刻追加的に大半の人がカバーされる個人の直接現金給付が必要だ。実現できるよう取り組んでいく。これがベーシックインカムになっても構わないではないか。コロナ後は従来の延長線の世界ではないだろうし、コロナ危機の期間というのはいってみれば社会実験をせざるを得ない特殊期間なのだから。


編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏(自由民主党、大阪選挙区)の公式ブログ 2020年4月13日の記事を転載させていただ