総理会見:10万円給付は安倍・麻生の逆転勝利か

2020年04月18日 06:00

官邸サイトより

今回の一連の措置は、安倍・麻生ラインの敗北だという人もいるが、私はそうではないと思う。むしろ、政治的には、上手に挽回して逆転勝利だとみている。

まず、10万円の給付金を所得制限を設けずに支払うが、これを申請主義で行うそうだ。

ともかく、一律給付は名簿作りが面倒で、3ヶ月くらいかかると言われていたが、申請主義だと、最速で手続きをした国民には、早ければ5月中にも渡せる。申請が遅れたり、不備だったり、精査を要する人への給付が遅れても文句言えない。富裕層で申請しなかったり、なんらかの意味で逃亡中とか表に出てこられない人には渡さないで済む。

そして、国民全員の口座番号などがマイナンバーと関連付けられて整理できれば、これから、様々な施策は非常にやりやすくなるし、それを考えれば、財務省にとって決して損ではない。

また、公明党の要求をきれいに丸呑みしたことで貸しを作ったことになり、憲法改正なども含めて、今後の政局運営はやりやすいのではないか。

外国人居住者には差を付けたら

なお、国民一人あたり10万円というが、総務省の事務方は、外国人も含める意向のようでおかしい。外国にいる日本人がもらっているかもらっていないか色々だろうが、ヨーロッパなどとの関係ではもらっているので払わざるを得ないが、それでも、同額である必要はあるだろうか?

私は、「国民連帯」のために、この異例の給付金を出すのなら、この大盤振る舞いのつけは、日本人が払っていくものなのだから、少しは差を付けて良いのではないか。たとえば、日本人10万円、特別永住者8万円、その他の永住者7万円、一時的な居住者5万円くらいでもいいような気がする。前例のない金額なのだから、きちんと議論して欲しい。

記者会見の概要

安倍首相は4月17日、午後6時から記者会見を行い、

①「緊急事態宣言」の対象地域を全国に拡大したことについて、人との接触機会を7割から8割減らすとした目標を達成し、大型連休での都市部から地方への移動を自粛するよう呼びかけ、

②所得が減少した世帯に30万円としていた案を見直し、国民に一律10万円とすることについて「ここに至ったプロセスで、混乱を招いてしまったことについては私自身の責任だ。国民の皆さまに心からおわびを申し上げたい」と陳謝すると友に、国民に一律10万円を給付する申請手続きは、「スピードを重視するとともに、申請する人が殺到して感染リスクが高まることを避ける観点から、手続きについては市町村の窓口ではなく、郵送やオンラインによることにしたいと考えている」、

③医療従事者の処遇を改善するため、感染者の治療などに関する診療報酬を倍増させる、とした。

①については、接触機会を最低7割、極力8割削減する目標が都市部の平日にまだ達成されていないとし、このままでは、新規感染者数を大きく減少に転じさせることは困難とした。

また、先月の3連休の「ゆるみ」が、感染を拡大させた可能性があり、大型連休に感染者が多い都市部から地方へ人の流れが起きると、地方には重症化リスクが高い高齢者がいることもあり、人の流入を防ぐため各地域が措置を取れるように「緊急事態宣言」の対象地域を全国に拡大するとした。

自己申請が早期の給付を可能にする理由

②については、これより先に、麻生財務相が、国民に申請してもらって、それに対して支払うという意向を示していた。

総理の記者会見で従来の市町村を通じるやり方だと3ヶ月かかるので、ネットや郵便での申請にかえて、国が直接やってスピードアップとしたわけだが、これは正しいと思う。 ともかく、行政が「間違いない名簿」を作ろうとした場合の実務的手間はおそろしいことになる。

写真AC

ともかくマスクの場合は、間違った人がもらおうが、二重にもらおうが、もらい損なう人がいても構わないからスピードを追求してああいう方法になったわけだが、現金はそういうわけにいかない。気の遠くなるような名簿作りが必要で、申請してもらう方が早いだろう。

しかもマイナンバーカードを持っている人とか、免許証がある人は口座番号とともに主として電子申請させ、すぐに払い込み、それができない人は郵送で申請させ、他の方法で確認でき次第にすれば市町村窓口の手間も省ける。

さらにマイナンバーと口座番号の紐付け、実際の住所の確認なども行え、今後の様々な施策の制度とスピードが飛躍的に上がるはずだ。

現在、マイナンバーカードは、14%の人が取得しているだけだが、運転免許は、2015年末現在の運転免許保有者数は,約8,215万人である。

なお、住民全員の名簿をつくるのが、非常にたいへんであることについて、リーマンショックのとき西宮市役所の職員だった杉田水脈代議士が非常に分かりやすい説明をしているので、引用しておく。

これはリーマンショックのときに市役所の職員だった杉田水脈代議士の指摘です。

政府が決定した後、必要な法整備を議会でしなければなりません。

例えば赤ちゃんからお年寄り国民一人一人に一律10万円と決めたとしましょう。

子供は口座を持っていないケースが多いので、保護者に振り込むことになると思いますが、保護者と一緒に住んでなかったり、また、複数保護者がいる場合はどの保護者に振り込むのが確認が必要となります。これを住民票などの情報を元に「えいや!」でやってしまうととんでもない数のトラブルが発生し、それに対応する体制が取れません。施設に入っているお年寄りなどについても同じことが言えます。「自分で申請できない人をどうするか?」の問題です。これは小切手の場合も同じです。

また、「選挙人名簿を使えば?」という意見がありましたが、給付をするのは選挙管理委員会ではなく、給付を担う組織ということになるので、名簿の閲覧ということになります。が、目的外使用は認められていないので閲覧が許可されません。また、選挙人名簿だと18歳以上の人にしか配ることができません。

こう言った普段使っている法律や規則の制限を一つ一つ議会の議決を経て変える作業、そして人員体制を組み、システムを作る作業が必要なので、時間がかかるのです。

「法律や規則をすっ飛ばして早くやれ!」ということになると「超法規的措置」となるのですが、生活支援や経済立て直しの緊急事態の超法規的措置については、日本においてはまだ議論が緒についていない状況です。人出の減少は目標に達していない 。

診療報酬倍増でお医者さんがぬか喜び

③について、安倍首相が診療報酬を倍増させると言ったので、関係ない医者たいがぬか喜びだ。

しかし、「新型コロナウイルスに感染した重症患者の治療にあたった医療機関が受け取る診療報酬を倍増させる」だけのことである。

新型コロナウイルスに感染した重症患者の治療については、集中治療室(ICU)の場合は入院料を1日16万~28万円程度に引き上げるらしい。

ぜひ、診療報酬総額を増やさない方向で、そもそも保険診療の対象にする必要がない診療は健康保険支払い対象から大胆に外すなど、国際水準の思考で公的医療の存続ができるための合理化に取り組まねばなるまい。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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