実は自治体はコロナ対策に1円も使っていない説:市民にツケが回ってくる!

2020年04月19日 06:00

コロナ対策に1円も使っていない自治体?

全国に緊急事態宣言が出され、いつ収束するか先が見えない中、コロナの感染拡大防止と併せて、国民の耳目を集めているのが給付をはじめとしたコロナの経済的二次被害を防ぐための支援策だ。国民一人当たり10万円といった国単位の支援策、休業要請に伴う協力金という都道府県単位の支援、堺市が発表した水道料金の8割減額といった市町村単位の支援と、それぞれの立場で独自の支援策が動き始めている。

私の住む京都市も矢次早にコロナ対策の4月の補正予算を1400億円計上し、観光業に対する緊急助成や感染症対策などの予算を計上しているが、実は今回の補正予算でいえば、全額国から貰ったお金で、市の財源は1円も使っていない。厳密には中小企業預託金800億円という支出があるが、これは翌年返却される為、予算上の支出とはみなさない。

京都市Facebookより:編集部

また一部この間の自粛によって中止になったイベント等に使われる予定だったお金を補正予算に回しているので全くゼロというのは言い過ぎかもしれないが、少なくとも新規に予算を捻出した項目はない。5月議会でも更に補正予算が組まれる予定だが、これまた国から貰ったお金で対策を練る予定だ。

各自治体、「独自の施策です」と胸を張るが、もともと今回はそうした裁量を持たせたお金が国から配られているので、実は、「独自の」といっても「独自の予算」でやるわけではない。大抵の自治体でも同じようなことが起きている。

もう少し丁寧に言えば、4月の補正予算については上記の通りだが、2月議会に計上された予算には多少独自の予算が計上されているので、タイトルに書いた「一円も使っていない説」とまでは言い切れないにしても、ほとんど使われていないという実態にはさぞ驚かれるのではないかと思う。結局、財政に余裕がない自治体は身動きがほとんど取れない。

財政難のツケが市民に回ってくる

自治体はどんどんと借り入れが出来る国と違い、好き勝手に借り入れをすることを認められていない。国を本店だとすれば、自治体は支店、支店には極めて限定的な裁量権しか与えられておらず、トータルの予算も国が地方交付税交付金というお金を支給し、コントロールしている。その為、もともと財政は収支トントンになるように設計させており、好き勝手な借り入れが出来ないようになっている。

そうした縛りがある中で自治体の予算編成が組まれるのだが、中身は千差万別、限度額最大まで借り入れをしたり、積み立てを切り崩している自治体がある一方、財政に余裕がある健全経営をしている自治体とかなりの差がある。

昨今、休業要請の為の協力金などを気前よく放出するなど特に話題になる東京都だが、これは主要閣僚から発言が飛び出すように極めて財政が豊かゆえにできることだ。続いて、積極的に攻めの姿勢が高く評価される大阪府の吉村知事だが、こちらも東京には及ばないまでも、かなり踏み込んだ支援を進めている。当初、「東京のような支援は出来ません」と断言していた大阪府でも、休業補償に係る協力金を個人事業主に対しては50万円、中小企業に対しては100万円を市町村と折半する形で支給することを発表した。

こうした取り組みにより高い評価を得ている吉村知事だが、これを可能にしているのは、実は橋下知事時代に徹底した財政再建に踏み込んだおかげということは余り言われていない。大阪府と折半することを快諾した松井大阪市長は会見で、「協力金の財源は10年前ゼロだった市の財政調整基金(市で蓄えている貯金)が、コツコツ蓄えて1491億ある。こういった緊急事態のときに蓄えていたもの。スピード感を持って投入することで、経済が回復するまで企業に事業と雇用をなんとか守っていただきたい」と胸を張る。

財政再建をやりきった自治体だからできることだ。

「大阪維新の会」公式ツイッターより:編集部

一方、隣の京都市は全国最低レベルで金がない。だから、今回の補正予算でも一円も身銭を切っていない。というより無い袖は振れない。

そういった事情を鑑みてか、決して財政豊かとは言えない京都府だが、市町村と折半することなく休業要請に伴う協力金(個人事業主10万円、中小企業20万円)を府独自で創設することを決めた。これは京都府なりにかなり頑張ったと私は思うが、県境をまたいで支給される額が、大阪が50万円、京都が10万円という差は府民にとって納得感があるとは思い難い。なぜなら、その差は自治体の規模ではないからだ。

先述のように、大阪は東京と違い、もともと財政が豊かな自治体ではない。違いはただ一つ、「財政再建をやりきったか、否か」ということだ。

自治体の財政問題というのはとにかく選挙の争点になりにくく、関心も薄いテーマのひとつだが、こうした有事になるとその差が如実に出る。財政再建を後回しにしてきたツケはきっちり市民に回ってくるのだ。このように自治体の財政力によって有事の対策にかなり大きなかい離が出る。もちろん、国はそれを回避する為に出来るだけ財源を地方に回す努力をするのだが、痒い所に手が届くサービスまでは手が回らない。

普段、後回しにされる財政問題だが、この際改めて皆様にも御一考頂きたい。

今必要なのは支援だけでなく、兵站の確保!

最後になるが、その上で今自治体が出来ること、いや唯一市民に回ってきたツケを回避できる方策を申し添えておきたい。それは、大胆な予算の組み替えだ。この間、家庭でもお金の使い方がかなり変わったのではないかと思う。私自身、外で会食する機会がゼロ、レジャーや余暇に係る費用もゼロ、その分家庭での食費や光熱費が増えた。当然臨機応変に皆さん対応しているはずだ。

3月に議会で可決されたばかりの行政の予算だが、家庭と同じように大幅な見直しをする必要がある。一部中止になった事業予算が補正予算に組み込まれているが、全庁を挙げて不要不急な事業は全面的に縮小し、休業補償や経済対策に振り分けるべきだ。命と生活を守るもの以外、削れるものは徹底的に削る。このままではコロナ倒産やコロナ失業で自殺者が増え、地方経済もガタガタ、市民生活もままならない事態になりかねない。

今度ばかりは職員の給与カットも時限的にやらねばならない。多くの市民が痛みを伴っている中で、公務員だけが痛みを伴わないこと自体おかしなことで、「公務員給与が民間に準拠する」なら、早々に公務員の皆さんも歯を食いしばって取り組みべきだろう。ちなみに、この効果は凄まじい。京都市の規模でだいたい人件費が1000億円、一割のカットで100億円が捻出できる。例えば100億円あると、追加で市内の全事業所に10万円配り、さらに小中学校の生徒全員に3万円の学習用タブレット支給が可能だ。

「ない袖は振れない」ではなく、「なければ作るしかない」。全国一斉緊急事態宣言下となった今、自治体がすることは市民の関心が高まる目の前の感染防止や補償だけでなく、それらをスムーズに進行させるためのバックヤードたる兵站の確保だということだ。

※金額を訂正しました。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
村山 祥栄
前京都市会議員、大正大学客員教授

過去の記事

ページの先頭に戻る↑