新型コロナ:投票率が激下がり?ネット投票は実現できるのか

2020年04月21日 06:00

新型コロナウイルスの蔓延により、選挙時におけるネット投票・オンライン投票への期待が高まっている。

人との接触を避けられないのが「選挙」である。有権者を対象にした集会や握手を控えたりする程度のことはできるが、ポスター掲示など選挙活動を手伝ってもらうスタッフにはどうしても外出や人との接触が生まれてしまう。

さらに深刻なのは「投票」だ。現在の投票所に足を運ぶスタイルでは、有権者に外出を強いることになるため、投票を控える有権者が増える傾向が強い。実際に、ここ最近に実施された選挙のほとんどで投票率が軒並み低下し、宮崎県日向市長選挙では20ポイント低下した。

写真AC:編集部

ちなみに、この4月だけでも、衆議院静岡4区補選のほか日本全国でなんと!計103件の選挙が実施・予定されている5月から12月の間でも300件超の選挙が予定されている。

今後、長期間にわたるコロナ下の社会が想定され、多くの現行の制度やシステムの改変が求められるであろう。投票制度においてもそうである。早急にネット投票・オンライン投票の導入に向けて着手すべきだ。

本稿では、本格的な議論がなされてこなかった「ネット投票・オンライン投票」について、海外の例も紹介しながら課題を整理し、今後の展望について述べてみたい。

スマホで投票出来る国

バルト三国の一つである「エストニア」は、1991年に旧ソ連から独立をした人口約130万人の国である。独立後、国を挙げてIT技術の開発に力を入れた。その結果、ほとんどの行政手続きが国民番号と結び付いており、オンラインで完結する。

エストニアのオンライン投票(EU議会flickr:編集部)

各種申請にわざわざ行政機関に出向く必要はない。住民登録、納税、登記、資産、医療、教育、警察など公的なものについて、婚姻・離婚を除くほぼ全ての手続きがオンラインで完結、法人登記が最短3時間で出来る話は有名だ。その他、処方箋や駐車場料金支払いなど民間・ビジネスに関わるものまで幅広く応用されている。

これらサービスの基本となるのは、全国民に割り当てられた「国民IDカード」の存在だ。これこそ我が国に導入された「マイナンバーカード」のモデルとなったものである。その普及率は驚異の94%(日本のマイナンバーカード普及率は14%程度)。ITに対する国民の意識も高い。

ネット投票の画面(出典:「NHK NEWS WEB」)

そんなエストニアでは、2005年に地方選挙、2007年に国政選挙に「ネット投票」を導入。IDカードをリーダーに通し、専用アプリにログイン、投票画面には政党名と候補者名があり、候補者を選択するだけで投票は完了する。スマホからでも投票は可能だ。

乗り越えるべきハードル

しかし越えなければならないハードルはいくつもある。

まず1点目は、「システムを安定的に運用できるか」だ。1億を超える有権者のデータを管理した上で、二重投票を防止するため、全国の各市町村のデータと即時的にネットワークでつながる必要がある。大量のやりとりを処理しながら、トラブルを防ぎ、安定的に運用することが果たして出来るのか。

2点目は、「投票の秘密を守れるか」ということである。ネット投票では、「投票内容」と「投票者情報」が紐づいている。つまり、投票者個人から投票内容を特定することも可能となる。投票の匿名性が担保できなければ、導入することは難しい。

3点目は、「誰かに強制されず、自由に投票できるか」という点だ。ネット投票だと、特定の場所に人を集めて、強制的に投票させることも可能となる。この点について、エストニアでは選挙期間中、何度でも投票をやり直せるようにすることで、仮に強制されても後で修正が可能な余地を残している。自由な投票環境の確保は大きな課題である。

その他にもコスト面や、法整備、投票事務など、乗り越えるべき課題は多い。

政府の動向と実証実験

2017年12月、野田総務大臣(当時)の指示により、総務省がインターネット投票の課題を検討する有識者研究会を立ち上げた。まず、海外在住の邦人を対象とする「在外投票」から試験的に行っていく方向性を示している。

総務省は昨年度に、試験的な投票システム開発費などに約2億5000万円の予算を計上している。実証実験の中で、投票フローやセキュリティー面での課題を検証、マイナンバーカードを海外でも利用可能とする法整備なども進めるとしている。

在外選挙インターネット投票システムモデル(出典:総務省)

また、つくば市では、2018年にブロックチェーン技術を用いた国内初の実証実験も実施されており、様々な可能性が検討されている。

早急な整備を

以上のように「ネット投票・オンライン投票」の導入には、様々な課題があることは事実だ。また、現在のところは実証実験にとどまっている部分も多く、このままのペースでは実現は遠い先となってしまう。

また、ネット投票に不可欠なマイナンバーカードの普及率は依然低いままだ。この状況を何とか打開しない限り、一向に実現はしないであろう。

しかしながら、民主主義の根幹をなす選挙制度において、「投票」の安全性が確保できない我が国の状況は早急に対処しなければならない。音喜多参議院議員もブログで書かれたように、国会議員はもちろん、地方議員や首長も含め、ネット投票・オンライン投票の実現、その環境整備に向けて大きく声を挙げていくべきだ。

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堀江 和博
日野町議会議員 / 元衆議院議員公設秘書 / 滋賀県出身・京大院卒 / 政治行政・選挙研究

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