偽装の「医療崩壊を防ぐ」でいいのか?

2020年04月21日 06:00

とうとう、がん研有明病院でも、看護師さんにコロナ感染陽性者が出た。そして、日本テレビでは、「路上や自宅などで容体が急変して死亡し警視庁が変死として扱った事案で、死後に、新型コロナウイルスへの感染が判明するケースが、相次いでいることが分かりました」と報道されていた。急激に重症化することが知られている、この感染症の怖い要注意点のひとつだ。

それにしても、日本人は「瀬戸際」、「ギリギリ」、「重大局面」が大好きだ。このような言葉で何週間も国民を欺き続けるのもどうかと思う。多くの人が疑いの目で見ているのは明らかだ。世論調査でも、約80%の国民が、緊急事態宣言は遅すぎたと回答している。それにしても、目の前で起こっていることから目を背けて、黒に変わっていても、これは灰色だと主張し続けることにどれだけ意味があるのか疑問で一杯だ。

カメラ兄さん/写真AC

有事には、厳しい現実を見て対応しない限り、後手後手になる。ボヤが大きく燃え広がってきている状況になっているにもかかわらず、まだ、大丈夫だ、ボヤの状況だと言っていると、大火事につながる。日本の現状は、もう、消せないくらい炎上している。出血している患者さんに対して、出血していないと事実を否定し続ければ、死につながる。

こんな状況で、日本感染症学会が「新型コロナウイルス感染症に対する臨床対応の考え方 ―医療現場の混乱を回避し、重症例を救命するためにー」と称するコメントを出している。そこには、「地域の流行状況によるが、PCR 検査の原則適応は、「入院治療の必要な肺炎患者で、ウイルス性肺炎を強く疑う症例」とする。軽症例には基本的に PCR 検査を推奨しない。時間の経過とともに重症化傾向がみられた場合にはPCR法の実施も考慮する」とある。医療現場の混乱を防ぐために、すなわち、医療崩壊を防ぐためという。

ロックダウンを前提にした、厳しい行動制限下であればともかく、行動制限が緩やかな日本でこの非科学的なコメントを出す見識を疑わざるを得ない。軽症者が行動制限を受けないままに、感染が広がり、感染経路不明の感染者が増えている状況をどのように捉えているのか?そもそも、「PCR検査を広げれば、医療崩壊が起こるので、検査をしない」という「おまじない」のような言葉で、この感染症を乗り切れると考える非科学的な妄言は、この人たちの世界の常識であるかもしれないが、明らかに世界の非常識、まさにガラパゴス島の発想だ。

学会と名のつくアカデミアまで、このようなコメントするのは、日本の恥でしかない。今でも通勤電車は三蜜と言っていい。当然のことだが、三蜜を避ければ感染しないわけではない。西浦・北海道大学教授が言っていたが、30分間会食をするだけでも感染することがあるのだ。総理大臣が奥様の行動を「三蜜ではない」と擁護しているのだから仕方がないが、この国の政治家や専門家会議からは「国民の命を守る」という覚悟・気概が全く伝わってこないのだ。多くの人が右に倣えをして、太平洋戦争に突入し、多くの人の命を失ったことから何を学んだのだろうか?

この非常時に、「政治の混乱を来すのはよくない」と何かを言いにくい状況かもしれないが、国民を守るのが政治の責任ではないのか?現在の状況が進み、多くの国民が命を落とすかもしれない状況でも、何も言わないなら、議員バッジを外せばいい。今から、80年前の悲劇を繰り返さないために、立ちあがる議員はいないのか?

米国のファウチ所長のような、あのトランプ大統領にさえ物申す科学者がいても、後手に回ってしまったのだ。現時点での米国の感染者数は76万人を超え、死者は4万人を上回っている。専門家は科学的な観点から、命を救うために提言するのが、その責任ではないのか!国民の命よりも、自分の立場に未練がある御用学者など不要だ。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年4月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
医学者、内閣府SIPディレクター

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