コロナ下で変化する民主主義

2020年04月21日 21:00

一律10万円の給付が決まりました。

このブログでも2回に渡ってとりあげました。

【発表した記者会見の伝え方の話】
今日の安倍総理の会見よかった

【政策としてどうだったのかという話】
一律10万円の給付を検証してみる

1.極めて異例のプロセス

実は、今回の決定はとんでもなく異例のことです。

■ 一度、与党の了承をとって閣議決定したことを実施前に方針転換した。
私が赴任していたインドならよくありますが、日本では本当に珍しいです。

■ 財源がないのに、えいやっと配る。
12-13兆円という年間の税収の1/5くらいのお金がかかりますが、こんなに短時間で決まったのは極めて異例です。本来は、当初の一世帯30万円の給付で4兆円の財源を用意していたわけです。3倍のお金が必要になりますので政策変更といっても、ものすごく大きな変更です。

2.理想の政策プロセス

私が考える理想の政策プロセスは以下のようなものです。

① 詳しい人が徹底的に考える。
本当に意味のある政策か、効果がでそうか。手段が適切か。お金がかかりすぎないか。専門家やその政策に詳しい官僚が必死に考えた方がよいです。少しでも正解に近づくために。

② できるだけ多くの人の意見を聞く。
でも、どんなに頭のいい人や専門家でも、世の中の隅々まで分かっているわけではないので、必ず間違えます。今のように多様で流動化した社会なら余計に難しいです。

だから、一生懸命考えて「おそらく正解だろう」という答えにたどり着いたら、できるだけ多くの人の意見を謙虚に聞かないといけません。

③ 決めた後の実施のことをちゃんと考える。
政策というのは決定して終わりではありません。生活者に届くまでが大事です。よいルールを作っても、現場の準備が間に合わなければ、社会は変わりません。絵に描いた餅になってしまいます。

本当に政策で、人の生活を良くしようとずっと思っているので、真面目にこう考えたいんです。

3.ここ最近の政策プロセス

実際は、どうでしょう。

国民の関心事であればあるほど、上記の①から③は重視されないのがここ数年の意思決定プロセスです。
例えば、消費税を10%に引き上げた時に幼児教育無償化もそうですね。
突然、2017年9月25日の総理の記者会見で発表され、その年の衆議院選挙の与党の公約となりました。

何を重視しているのかというと、国民の人気です。

このこと自体は、とってもよいことです。

ただ、この国民にとってよいかどうかを、国民の意見を事前に聞かずに先回りして「これ、きっと喜ばれるだろう。」と考えて、先に発表しちゃうんです。

これが、ここ数年続いている国民の関心事となっている重要政策の意思決定プロセスです。

3月に、小学校に休校要請が出たのは記憶に新しいですね。

あの時は、専門家会議の意見も聞かなかったし、事前に各省との調整もしていませんね。これ、まさにここ数年とってきた手法なんです。

4.政策のプロセスが変わった

それと比べると、今回の意思決定はずいぶん違います。

国民の意見を聞いて変えたんですね。

与党の声とか、野党の声とかもありますが、結局のところ国民の声が大きいから方針転換したわけです。

実は、時々こういうことが、ここ数年政策の現場では起っていました。保育所落ちた日本死ねブログによる待機児童対策とか、小泉進次郎さんが厚生労働部会長の時に主導した医療保険の妊婦加算凍結とか、人生会議の小薮さんのポスター炎上による発送取りやめとか。

でも、これは政権の目玉政策をひっくり返した訳ではありません。どっちかというと、国民のニーズの読み間違いで炎上したから直した(ストップした)という話です。

今回のは、重要な目玉政策について、国民の声を聞いて方針変更した。

これが、とっても珍しいことなんです。

このことはすごくよかったと思っています。
※一律10万円給付でよかったかは疑問を持っています。

とにもかくにも、国民の声を聞いたんです。もちろんコロナ下でないとこういうことは起らなかったでしょう。

5.なぜ、変わった?

難しい分析は色々できるのですが、端的に言います。

正解が分からないからです

感染症対策そのものもそうですが、経済への影響もリーマンショック以上の影響が世界的にあると言われていますし、長期化する中で人の生活も仕事も大きく変わっていくでしょう。

経験したことのないようなことが起っています。

それは、政策を作っている人たちにとっても同じことです。今までのように自信を持って答えを出しにくいのです。

今ほど、政権が国民の意見を聞いてから、ものを決める時代は聞いたことがないと思います。

そして、この状況はしばらく続くと思います。

ウィズコロナも、アフターコロナも、政策を作っている人たちにとっても、初めての経験ですから。

6.僕らは何をすべきか

このような危機の時は、次々と方針を決めて対策を打っていく必要があります。

そうです。

強いリーダーシップが必要になりますよね。

でも、強いリーダーも、答えに100%自信が持てません。

間違える不安と常に隣り合わせでしょう。

間違えたら、誤れば済む問題ではありません。

辞めて責任をとればいいというものでもありません。
感染症対策を間違えて失われた命はかえってきません。
経済政策を失敗して破産した人の生活は中々元には戻りません。
家族の人生も壊してしまうかもしれません。

だから、強いリーダーシップを望みながらも、意思決定する人を孤立化させてはいけません。

孤立化させないというのは、無条件で支持しろということでしょうか。

がんばっているリーダーに文句を言うなということでしょうか。

いえ、決してそうではありません。

それだと、リーダーは不安になります。
誰も一緒に考えてくれないのですから、不安で仕方ありません。

だから、僕らに出来ることは、

一緒に考えること

です。

7.連帯と対話で乗り切るために

危機を乗り越えるためには、連帯が必要です。

強いリーダーシップと思慮深い国民と専門家と政策をつくる人の対話が大事です。

■ 意思決定権者は過去にないほど謙虚に
平時以上に与えられる強い権限は、人気の向上のためではありません。
国民の命と健康を守るために託されたものです。
説明をしっかりとしてほしいです。
後で検証できるように記録もしっかり残して欲しいです。

■ 野党は過去にないほど建設的に
批判のための批判では、国民の不安にこたえられないでしょう。
政権に取り入れられることを目指して対案を。

■ 国民は過去にないほど社会と未来の検討を
まずは、自分にできることを。
短期的には感染拡大しないように外出自粛を。
自分と家族を守りましょう。
感染しないことが医療を守り、本当に必要な時に医療を受けられることにつながります。

長期戦にそなえて人の接触を減らない状況が続いた時に、自分が何をすべきかを考えたいです。(家族として、仕事として、健康の維持も大事)

同じように、長期戦にそなえて、これから次々と政策が打ち出されていきます。余裕があれば、政策についても素朴な感想でも大丈夫なので考えてもらえたらと思います。

僕も一生懸命考え続けます。

お読みいただき、ありがとうございました。

一緒に考えてくれる方は、こちらを覗いてみてください(↓)

千正道場

政策のプロである千正が、みんなと一緒に政策や身の回りの困りごとの解決法などを考えていくサークルです。 千正親方は、毎日20-30分くらいはここに登場します。 普段会わない色んな立場の人が、安心して話し合ったり、交流できる場所にしていきます。


編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2020年4月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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千正 康裕
株式会社千正組代表取締役、元厚生労働省

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