会いに行けない恐怖 〜 コロナ入院患者の肉親として提案

松田 公太

昨日、岡江久美子さんの訃報に接し、一夜明けた今も悲しみに襲われ続けています。
本当に素敵な方でした。一生、あの元気な笑顔を忘れることはないでしょう。

しかし、一番切ないのは、親でも、配偶者でも、幼い子供でも…
自分の愛する家族が生死をさまよって苦しんでいる時に、側にいたり、手を握ったりしてあげられないことです。

死にゆく最後の数日間、数時間、その瞬間。目に入るのが医療機器と防護服を着用した面識の無い医療従事者たちだけでは悲しすぎます(勿論、医療従事者の皆さんには心から感謝しております)。

どれだけ寂しく、恐ろしく、家族に会いたいと願うことでしょう。

私は若い頃に弟と母を亡くしていますが、一度も会いに行くことが許されなかったら…と考えるとゾッとします。

先日はコロナに罹患した肉親を入院のために病院まで送って行きましたが、防護服の医師に囲まれて心細そうに病院の中に入って行く姿を見て「悪化しても会いに来れない。その場合はこれが最後の別れになるかもしれない」という不安が頭を駆け巡り、胸が張り裂けそうになりました。

新型コロナウイルスは「指定感染症」として定められています。

そして、厚労省と日本環境感染学会を通じて配布されている「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド」を確認すると、面会については以下のように書かれてあります:

10) 面会制限
新型コロナウイルス感染症の患者には原則的に感染性がないと判断されるまで、家族などの面会は禁止します。入院患者で適切な予防策が実施されていない状況で新型コロナウイルス感染が判明した場合は、施設全体 での面会禁止を推奨します。

つまり、このガイドに基づいて、各医療機関が面会を禁止しているのです。しかし、あくまでもガイドです。法律で禁じているわけではありません。

家族が心配して、毎日のように来院されたら大変ですし、二次感染も防げなくなるでしょう。しかし、少なくとも重篤になってしまった患者の家族には、防護服(簡易性のものでも)を着用してもらって、週に一度でも会いに行けるような体制を作ってもらうことはできないのでしょうか。

勿論、ギリギリで闘ってくれている医療従事者の負担をこれ以上増やすことはできません。その場合は医大や看護大学の学生の中からボランティアを募って、ご家族を誘導する仕組み等は作れないのでしょうか。

訪問するご家族の方々には公共の交通機関の利用は避けて頂き、最後の訪問後も最低2週間は自宅待機を義務付けます。それでも皆さん、会いに行きたいと思うのではないでしょうか。

新型コロナは怖いですが、エボラや、(感染力が比較的低いとしても)中東呼吸器症候群よりは重症化や致死率が低いこともわかってきています。臨機応変な対応を可能にする方法をぜひ考えて頂きたい。

患者側に立ち過ぎている提案だと思われるかも知れませんが、肉親が苦しんでいる時に近くにいけない気持ちは経験してみないと分かりません。そして、感染を防げなかったことの自責の念と、最後に会えなかった悔しさは一生涯残るのです。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、元参議院議員の松田公太氏のオフィシャルブログ 2020年4月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。