緊急!直ちに「雇用調整助成金」の条件を緩和すべし!

2020年04月25日 06:01

4月7日、史上初となる7都府県に対する緊急事態宣言が発出されたが、新型コロナ禍はいっこうに沈静化せず、16日にはその対象が全国に拡大される事態となった。

この悪夢が胎動し始めた年初には想像も出来なかったが、いまや全世界を巻き込みつつ、その勢力を拡大し続けている。先月中頃までは「このまま行くと飲食業やサービス業は全滅するね」などと冗談まじりに話されていた飲食店オーナーは、本当に閉店するか否かの岐路に立たされている。

当初、減収世帯に30万円を支給するとしていた政府案は、世論のみならず与党内からも突き上げをくらい、国民一人あたり一律10万円支給に差し替えられ、安倍総理自身が謝罪するという顛末となった。『過ちては改むるに憚ること勿れ』ということかも知れないが、そうであるならば、事業者と労働者を救うため追加の改めを是非ともお願いしたい制度がある。

雇用を守るセーフティーネット「雇用調整助成金」

2008年のリーマン・ショック時、非常に多く活用された制度の一つが厚生労働省所管の「雇用調整助成金」だった。この助成金は、景気変動や産業構造変化などに伴う経済上の理由によって事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的に休業等を行って労働者の雇用の維持を図ろうとする際に、休業手当や賃金などの一部を国が助成するという内容である。

先月下旬からポツポツと弊社にも問い合わせが増えてきていたが、その後、日を追うごとに増えて行き、栃木県足利市という地方都市にある総勢6名の小さな社会保険労務士法人でさえも、30社を超える企業から支援要請を受けている状況となっている。

なお、通常時は事前に休むスケジュールを決めてから休業計画を提出すべきところ、4月から6月までの期間(4/22現在)は実際に休業をした後での事後申請が認められたり、事業主の都合(今回のコロナ禍も事業主都合)で労働者を休業させた場合に支払った休業手当(平均賃金の6割以上)に対する助成率が2/3から最大で9/10にまで引き上げられたり(但し、1日あたりの支給上限額は8,330円が天井)するなど、特例措置が様々に講じられている。

しかし、人件費の全額が賄われる訳ではないため、栃木県では雇用調整助成金で賄えきれない残りの1/10の給付を決めるなど、雇用維持のための地方独自の施策が台頭しつつある。

栃木県が「雇用調整助成金」の上乗せ支援へ(下野新聞)

つい先日、顧問先であるブティックの社員集会に参加してきた。6名の社員を前にした社長は「会社の余剰資金は少ないが、何としても皆さんの雇用を守りたい。このコロナ禍が過ぎ去った後は誰一人欠けることなく、また一緒に働いてもらえるように今は休業するという判断をした」と苦しい胸の内を吐露された。

同社は法人組織であるため社会保険料の負担も大きい。当然、雇用調整助成金は活用する予定だが、それでも持ち出しはかなり出る。実際、社員に語った約束は守りたいが、コロナ禍の収束の道程が見えない状況では、焦りと恐怖が拭えない…と、経営者としての本音を漏らされていた。

こうまる/写真AC

飲食業や小売業などは店舗を賃借しているケースが多いため、人件費と並ぶ主要な固定費である家賃の支払いも大きな負担となっている。経営者団体が政府に訴え、国民民主党や維新の会などの野党も家賃モラトリアル法について連携しているようだが、事は一刻を争う状況になりつつある。是非、与党もこれら事情を斟酌して、スピーディーな対応をして欲しいと切に願う。

自民党内からも助成金引き上げの声

過日、自民党の世耕参院幹事長が「雇用調整助成金」の助成額の引き上げを政府に要請するという報道を目にした(参照:時事通信)。是非とも実現してもらいたいが、それに加えて緩和して欲しい条件がある。それは生産指標要件の撤廃だ。

通常時は、生産指標たる販売量や売上高等が休業等の届出前の3か月間について対前年比で10%以上減少したら助成対象とされていたものが、1ケ月で5%減少に緩和された。しかし、単に販売量や売上高ベースでの比較となると、実態を反映しないケースが出てくる。

これも弊社顧問先の実例を紹介すると、近年の人手不足の折、求人を出し続けるまったく応募が来なかった社員3名のデザイン会社は、昨年夏にようやく2名を採用することが出来た。その後、同社の売上は順調に伸び毎月の売り上げはそれまでの約1.4倍となった。

ところが今年に入って、コロナ禍の煽りで受注が急減。それでも売上高ベースで見れば、対前年同月比では若干のプラス圏にとどまっている。次々に決まっていた契約がキャンセルとなっているのだが、現状では雇用調整助成金の活用は出来ない。5%減少の条件に合致していないためだ。これがリアルな現実だ。

従来は「雇用調整助成金」の対象とならなかった雇用保険に加入できない方(週20時間未満で働く人など)も今回は「緊急雇用安定助成金」の対象者として救済されるようになってる。

しかし、実際に雇用保険の被保険者と短時間労働者を雇用する事業主は「雇用調整助成金」と「緊急特定地域特別雇用安定助成金」の申請書を2本立てで作成・申請しなくてはならなくなるため、結局、作業量としては同じになってしまう。特例措置が講じられて以降、申請書類の記載事項が半減されるなど色々な対策が取られてきているのは承知しているが、まだまだ不十分だと思っている。

スピーディーに助成金を活用するためにも

厚生労働省の所管する助成金の申請に際しては、唯一の専門家として我々のような社会保険労務士がお手伝いするケースが多いと思われるが、とにかく該当する事業所数が多いため、対応すべき期間内にすべての依頼が滞りなく処理出来るのか…と、本音を言えば少々心配になることもある。それでも出来うる限りのご支援を行い、1社でも多くの事業所の雇用が維持されるように力を尽くしたいと考えている。

利用進まぬ雇用調整助成金 中小の書類不備、悩む社労士(日本経済新聞)

いまだ先の見えない状況下、休業手当の全額負担、生産指標の要件の撤廃、雇用保険被保険者とそれ以外の者の一括申請は、是非、可能となるように改定して欲しい。

あわせて就業規則の作成や労使協定の締結など、中小企業ではすべてを法律通りに遵守出来ていないところも多々あるのが現実なので、それを当然に是認する訳ではないが、こと今回に限っては、助成を受けた後でしっかりと法令遵守することを確約させた上、申請に際してはこれら書類の作成・提出は不要という英断があっても良いのではないだろうか? 最前線で対応している身としてはこれらの実現を切に願っている。

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源田 裕久
社会保険労務士/産業心理カウンセラー アゴラ出版道場3期生

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