新型コロナ:モチベーションの方程式で医療従事者を心の疲弊から救おう

2020年04月27日 06:00

新型コロナウィルスの影響で私たちの暮らしも仕事も不自由になっています。

その中で、過去に例を見ないほど仕事に追われている人たちもいます。たとえば、想定外の事態への施策に追われる組織のマネージャークラスや行政のみなさまも苦しい状況かと思います。

医療従事者の疲弊が心配です

医療関係者のみなさまの奮闘も察して余りあります。国民を怖がらせる可能性を考慮してでしょうか、医療現場の生々しい状況は比較的報じられていないようです。

ただ、医療従事者の心理支援を行う合同会社メンタルヘルスケア・ネットワーク代表の山蔦氏によると、現場では異例の事態の中で追い込まれている状況があるようです。

患者さまが増えて忙しいのはもとより、苦しむ患者さまやご家族のお気持ちと向き合うのも大きな感情労働です。「なかなか検査が受けられない」など医療体制への不満の矢面に立つ場合もあります。

また、医療従事者を感染から守るはずのマスクを何日も使い回さざるを得ない現場もあると言われています。身の危険を感じながら、私たちのために戦ってくれているのです。

まさに日々が「戦場」となっていることでしょう。長引く非常事態で、医療関係者のみなさまが疲弊していることを大変心苦しく思います。心身が限界に来ていないか心配です。

疲弊を軽くする手立てを!

これまでに、行政は経済対策、国民の暮らしの対策、不安の軽減を狙ってのマスクの配布…など、さまざまな施策を考案しています。

しかし、その一方で疲弊した医療関係者を労う施策が相対的に少ないように感じるのは私だけでしょうか?医療従事者の疲弊から医療崩壊が起こる前に、何らかの手立てが必要です。

筆者はせめて「心の疲弊」だけでも軽くできる施策はないか…と探しています。その中で、モチベーションを手がかりに考えてみました。モチベーションは心理的な充実度や満足感を高める大事な要素です。心身はつながっているので、心理的に充実すれば身体的な疲労もある程度は緩和できると言えます。

モチベーションの方程式から考えましょう

実は心理学には古くから考察されて確立されたモチベーションの方程式(期待価値理論:Atkinson, J. W.ら)があります。

この方程式は

モチベーション=欲求×誘因(報酬)×達成期待(出来ることへの理解)

で表されます。

なぜ、掛け算かと言うと3項が相互に影響しあっているので、1項でも「0」になるとモチベーションそのものが「0」になるからです。

医療従事者の多くは「人の命を救う」という欲求が豊かです。大学・専門学校における厳しいトレーニングを経て達成期待もすでに備えています。そのため、ここで注目するべきは誘因でしょう。

誘因はお金だけではありません。心理的な報酬も重要です。感謝される、仲間同士で労い合う、など社会的存在としての人の喜びも大きな報酬となるのです。

医療従事者への感謝と労いを!

ただ、今の事態の中では医療従事者同士がお互いに労い合う余裕もなくなっているかもしれません。救えない命もあるので、現場では感謝されるばかりでもないでしょう。今は私たち国民からの感謝や労いがもっと必要ではないでしょうか。

単純に報酬としてのお金を増やせばモチベーションが上がるわけではないと思います。ですが、国民を代表するみなさまには、ぜひ形が伴った感謝や労いを医療従事者のみなさまに届けていただければと思います。

医療は、今のところ、検査や受診など、国民の不安に応えきれずに不満が寄せられやすい状況にあるようです。どこかに不満を生みやすいシステムの不備があるのかもしれませんが、それは医療従事者のみなさま個人に帰属することではありません。

あまり報道されていませんが、みなさま、懸命に身を削っています。医療崩壊を防ぐには患者の数を減らすことも重要ですが、あふれる感謝と労いで心の疲弊を減らすことも重要だと言えるでしょう。

杉山 崇

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杉山 崇
神奈川大学人間科学部教授

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