安倍首相は欧州レベルの強硬措置が可能な法整備を

2020年04月27日 06:00

Tracy Hunter/flickr

大阪におけるパチンコ屋が営業継続を強行するなど、接触機会80%減の目標は、強制力を伴わない措置では実現しそうもない。連休明けに緊急事態を全面解除することは、難しそうだ。

また、感染経路の解明のためにも、マスクに象徴される物資の公平な配布のためにも、現在のなまぬるいマイナンバー制度の運用では対応できないことも明らかになっている。

いまのところ、このペースで行けば、連休明けの全面解除は無理でも、爆発的に増えることは避けられるかもしれないが、まだ予断を許さない。自粛疲れも心配だし、経済の疲弊も拡大していくだろう。

また、いったん収まったとしても、第二波、第三波が秋以降、さらに来年やそれよりのちにも警戒すべきだ。特に、来年の東京五輪を開催するためには、状況が悪化したら短時間で押さえ込むことも必要になってくる。

安倍首相は今こそ抜本的な制度改革を

官邸サイトより

そうしたことを考えると、これまでの安倍内閣は、極度に反発が強まることを避けるために、抜本的な制度改正は控えてきたが、もう、それをやめることを決断すべき時だ。難しいのは分かっているが、いまや、それを少なくとも提案するくらいはすべきだ。「野党やマスコミ、関係業界、自治体などの抵抗が強くて」という弁解は、これまでは許されたが、いまや許されない。

  1. 欧州並みの制度が必要な場合があることに理解を求める」声明をすぐにすべきだ。
  2. 法案の準備をして場合によっては連休明けには緊急立法を国会に提案できるように準備する。
  3. マイナンバー・カードの所持義務化や紐付けなど時間がかかることも夏休み前に国会に提案する。

といった、ことをしないなら、抵抗勢力の了解が取れないからと言うのは言い訳にならない。提案してもダメだったときにやっと弁解と言えるくらいだ。

もし、状況が悪化した場合には、ただちに、欧州並みのロックアウトが可能でなければおかしい。あらかじめ、与野党で協議して即日、立法するくらい考えておくのは、まず、政府の責任であり、その準備をしなければ批判されるべきだし、その提案に応じなければ今度は野党が国民の信を失うまでだ。

韓国を誉めるならマイナンバー義務化だ

2020年から新しくなった韓国の住民登録証(聯合ニュースTVより)

今回、台湾や韓国の対応が誉められているが、その鍵は、日本のマイナンバーに相当する身分証の所持が義務づけられ、さらに韓国の場合で言えば、位置情報やクレジット・カードの使用履歴などと紐付けされていることだ。そのお陰で、感染者に誰が近づいたかすべて明らかになったし、感染者がどこでどういう行動したかすべて公開された。氏名は非公開だが、家族や同僚には容易にわかるので、いろいろ悲喜劇もあったようだ。

そもそも、私が1980年にフランスに留学したときにも、フランス人は国民証明書、外国人は滞在許可証を持たないで外出することはありえなかった。フランス人の場合は完全な義務ではなかったが、持たないと買い物もできなかったし、警察は持たない人を不審者として勾留もできた。

私はそのときから40年間、欧州並みにすることは人権上もなんの問題もないはずで、それをしないのは裏社会を喜ばしているだけだと主張し続けてきた。

フランスなどは緩やかな方で、北欧などもっと厳格だ。さらに国によっては、税務の申告書類が一般に公開されたりしている。

台湾や韓国の対応を誉めるなら、中国からの入国を止めたとか、PCR検査のことなど押さえ込めた理由の一部に過ぎない。こちらを真似しないと話にならないのである。韓国ではマスクを週に1人2枚という販売制限をして、マイナンバーカードで管理したからこそドラッグストアで普通に売れた。

韓国を誉めながら同じようにするといえば、下記の金子勝氏の5年前のツイートが典型だが、安倍政権ではダメだという非論理的な抵抗はあるだろう。

しかし、これとて提案もせずに日本ではマイナンバーカード制度が十分に機能してないから同等の対応はできぬで済ませておくのはおかしい。

私は、年内のカード取得の義務化と、韓国並みとまでは言わなくっても欧州並みの運用を急速に整えることを政府は提案すべきだと思う。

ついでながら、実は先日、私もカードの交付申請に行ったのだが(これまでメリットがなかったし義務でもなかったから取得しなかっただけだ)、これまでよりさらに延びて2か月ほど待ってくれと言われた。せめて、2週間程度で交付できるように緊急措置くらいしたらどうか。

バラマキするなら「米百俵の精神」で

次に、安倍首相がすべきなのは、財政措置は思い切ってするが、それはいずれ、増税や制度見直しによる福祉の厳格化などで、国民が負担するしかないものであることを国民にはっきり言うことだ。

現在の状況は、それが近い将来において、負担増になることを意識しないまま、国民が「金くれ、くれないなら、協力しない」病にかかってしまっている。あきれ果てたものというしかない。

返さなくていいなら、誰でもバラマキして欲しい。さらに、財政支出を増やすなら、その場しのぎでなく、将来の発展の種になるようなものにして欲しい。

「米百俵の群像」の小林像(2005年、Wikipedia)

あらためて、飢えに苦しみながらも隣藩からもらった米を学校建設に金を使った長岡藩藩士、小林虎三郎の「米百俵の精神」に立つべきだと思う。

それから、いろんな意味でネックになっているのが、資格制度だと思う。 PCR検査拡大については、拡大しろという人のほとんどすべてが、過去にどうすべきだったというばかりで、いますぐに拡大する具体案を示さない。

そのネックになるのは、結局、医師でなければできないとかいうことが多い各種の資格制度だ。ここは、こうした緊急事態にあっては、政府の命令で資格制度を柔軟に緩和できる包括法が必要だと思う。

ニューヨークでは薬局でPCR検査をするそうだが、数日間の研修を看護師さんから受けたら可能だという薬剤師さんがかなりいる(自信ない人はしなければいい)。

追記:パチンコ屋が閉店しないのは、「自粛と補償はワンセット」と囃し立てた日本共産党などの煽動にのったというべきだ。自分たちのためでもある自粛に協力するのに「補償がいる」などという憲法解釈が最高裁で通るとは思えない。

ただ、自治体の首長は自分たちへの損害賠償訴訟が怖いからかもしれないが、そこを議会や政府が訴訟リスクを保証したほうがいいかもしれない。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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