追加支援も小出し…雇用調整助成金、今のままなら間に合わない!

2020年04月28日 06:01

K.T.K.N/写真AC

過日、拙稿にて「雇用調整助成金」の活用におけるリアルな現場の声をお伝えして、更なる改善を願ったところ、すぐさま「雇用調整助成金を拡充する」との速報が流れた。

勿論、関係各方面から強い要望が出されていたと推察されるが、とりあえずアゴラにて提言させて頂いた内容に沿った「休業手当100%国が補助」という見出しが確認できた時は、小さくホッと安堵のため息をついた。

休業手当100%国が補助、小規模企業向け雇用調整助成金(日本経済新聞 4月24日)

しかし、文面をよく見てみると、あくまでも100%の補助は小規模企業が対象となっており、中小企業には休業手当として支払った60%を超える部分を全額補助するという内容になっていた。一抹の不安を抱えながら、翌日の4/25、厚生労働省HPで「同助成金の特例措置の更なる拡大について」を確認してみたところ、その不安は当たってしまった。概要は次のとおり。

拡充される対象は中小企業となっていた。しかし、そのベースは①休業手当の支払率60%超の部分の助成率を特例的に10/10とするということであり、更に特例的に②.①のうち一定要件を満たす場合には、休業手当全体の助成率を10/10とするという内容であった。

この一定要件とは、都道府県対策本部長が行う休業要請に応じて休業した事業所であって、Ⓐ100%の休業手当を支払っている、又はⒷ上限額(8,330円)以上の休業手当を支払っていること(但し、支払率60%以上であること)である。

結局、都道府県対策本部長が行う休業要請に応じて休業した一部の事業所だけが一定要件のもと100%助成を受けられるが、それ以外の多くの事業所は、100%の休業手当を支払ったとしても、そのうちの94%の補助しかなく、残りの6%部分の持ち出しは必ず出るということだ!!

なお、ここでいう補助率をかけるベースとなる賃金とは、正確には前年度1年間における雇用保険料の算定基礎となる賃金総額における1人あたりの平均賃金のことであり、実際に従業員に支払った賃金に対するものではない。

更なる雇用調整助成金の拡充:厚生労働省HP

残念ながら追加の拡充策はこれだけであり、生産指標の要件の撤廃、雇用保険被保険者とそれ以外の者の一括申請などは盛り込まれていない。なお、日額の上限は8,330円のままであり、自民党内からの引き上げの要望もかき消されてしまったようだ。

拡充のせいで手続きが遅くなるなら本末転倒

多くの経営者は、従業員への休業手当は可能な限り100%支給したいと考えているはずだ。しかし、体力勝負となりつつある現状では、少しでもキャッシュを温存する必要があろう。そのなかでギリギリの判断をしつつ、雇用維持のための苦渋の選択を迫られている。

本来の雇用調整助成金からは拡充されているものの、何故、100%に出来ないのか本当に不思議だ。予算が無尽蔵にあるわけでないことは承知しているが、期間限定として残りの6%を補填しても良いのではないか?こんなことでは申請書類の計算式も更に複雑になるし、チェックのための一手間も余計にかかる。しかも、この特例の詳報は5月上旬になるらしい。あまりに遅すぎる。これではセーフティーネットの役目を果たせない!

制度の拡充が小出しに続いているので、更に拡充されるのでは?というクライアントからの相談が急激に増加している。もうすでに今月分の給与を支払っている企業もあるが、また内容が変わる可能性もあるため、申請書類の作成をためらっているケースもあるはずだ。それが本助成金の活用が低調なままになっている本当の理由ではないか。

もはや批判を回避するために小手先でなんとか出来る段階ではない。安倍政権として政治決断すべきだ。小出しになるため厚生労働省の対応がバタバタして後手後手になっているとしたら、こんなに悲しいことはない。

Yu Morita/flickr

現在、顧問先以外の事業所からの相談も受けているが、その経営者さんから聞いたところでは、今、地元のハローワークに相談を申し込んでも相談できるのは1週間後となっているそうだ。ハローワークの相談体制もパンク寸前になりつつあるのではないのか?

一方、身近な相談相手であり、助成金申請の専門家である我々のような社会保険労務士については、当然のことながら真正な申請をする義務を負っている。仮に事業所から提出された書類が虚偽や不正のモノであって、結果として不正受給になってしまった場合には、その連帯責任が問われ、社労士自身がペナルティを負うことになるからだ。

だから顧問先として日頃から内情を良く理解していない事業所の助成金申請には躊躇したり、慎重になってしまうことがあるのは事実として知っていて欲しい。これも申請件数が伸びない要因の一つだではないだろうか。

もう一度、提言したい!

特例を謳うのならば、4-6月の期間限定でも良いので休業手当の助成率を100%に引き上げた上で、就業規則や労使協定については後出しも可能とする、生産指標要件は撤廃する、雇用保険被保険者とそれ以外の者も一つの書類で申請が可能などに変えるべきだ。

とにかく作成・提出する書類を極力、簡素化しないと、書類が多ければ多いほど労働局などチェックする側の負担も増えるので支給時期が遅くなる。不正受給への懸念も理解できるが、今は平時ではない。スピード重視として欲しい。でないと本当に未曾有の危機を乗り越えられなくなる企業が続出するように思えてならない。

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源田 裕久
社会保険労務士/産業心理カウンセラー アゴラ出版道場3期生

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