“大底”を打った「コロナ暴落相場」

加藤 成一

「コロナ暴落相場」をどう見るか

今年2月以降の「新型コロナウイルス感染症」の世界的拡大により、ニューヨーク・ダウ平均株価や日経平均株価をはじめ世界の株式相場はいずれも暴落し、現在もなお乱高下を繰り返している。

筆者はかねてより日本株式投資研究所代表として、30年以上内外の株式相場を見てきたが、今回の「コロナ暴落相場」は2008 年の「リーマンショック」を凌駕する暴落と考えている。

先月に4日続落となった日経平均株価を示すボード=3月16日午後、東京都中央区(編集部撮影)

「株価暴落」の原因

今回の株価暴落の原因は、言うまでもなく「新型コロナウイルス感染症」の全世界的拡大の脅威である。しかも、不透明で終息の見通しが立っていないことである。

「リーマンショック」の場合は金融恐慌であったが、日本でも今回は「新型コロナウイルス感染症」拡大の脅威が、人々の命と暮らしを直撃し、医療崩壊・生産減少・消費縮少・外国人観光客激減・運輸・航空・観光業・飲食業・サービス業など、社会経済生活全般に及んでおり、「リーマンショック」よりもその影響は広範囲で甚大であると言えよう。

「株価暴落」の影響

「新型コロナウイルス感染症」拡大による株価暴落の影響も甚大である。

日本銀行はこれまで安倍政権の目玉政策である「アベノミクス」を推進するため、毎年数兆円規模の大量の上場投資信託(ETF)を購入し、株価の上昇と買い支えを行い、今年2月中旬には日経平均株価は2万3000円台を維持していた。これは民主党政権時代の8000円台の約3倍にも相当する株価である。株価の上昇は企業や個人の金融資産の拡大をもたらし、投資や消費の拡大など、日本経済にとって極めて有益である。のみならず、株式運用を行う年金運用基金を拡大し、年金財政の拡大強化をもたらし、年金生活者にとっても有益である。

ところが、2月下旬から始まった株価暴落により、日経平均株価は3月19日にはザラ場で1万6358円まで下落した。日銀の損益分岐点は1万9500円前後とされるから、日銀にとっても一時は2兆円~3兆円の赤字であった。株価暴落は日銀のみならず、年金運用基金にも影響を与え年金生活者にも無関係ではない。のみならず、企業や個人の金融資産を減少ないし消滅させ、投資や消費の減少をもたらし、日本経済に与える影響は甚大である。

「大底」を打った「コロナ暴落相場」

しかし、3月19日には1万6358円まで暴落していた日経平均株価は、4月24日には1万9262円まで回復した。同様に、3月23日には1万8231ドルまで暴落していたニューヨーク・ダウ平均株価も4月24日には2万3775ドルまで回復した。これは、「新型コロナウイルス感染症」拡大の脅威を日米両国の株価が相当程度織り込み始めたからである。それと共に、日米両国政府による大規模な追加経済対策の発表も寄与している。

したがって、筆者は、日経平均株価は1万6000円台が「大底」であり、ニューヨーク・ダウ平均株価は1万8000ドル台が「大底」であると見ている。これは日米両国の株価水準のPER(株価収益率)やPBR(株価資産倍率)からも言えることである。

よって、今後は、日経平均株価は上昇と下落を繰り返しなお不安定ではあるが、徐々に上昇基調に向かうと予想する。個人投資家としては、暴落した優良株の中長期投資が選択肢の一つになるであろうと考えている。ただし、投資はあくまでも自己責任であり常に慎重な対応が求められることは言うまでもない。